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6.化かしあい
広い謁見室が貴族たちで埋まる。
見覚えのあるものたちばかりだが、人数が多い。
思った以上に王宮に集まっていたようだ。
「殿下、側妃を娶ったとは、どういうことですか!?」
「そうです。どういうことですか!
側妃を娶るおつもりがあるなら、側妃候補を集めて、
きちんと選んでからにしてくださらなければ…。」
「いや、もうすでに閨を共にしたのなら、
その伯爵令嬢を認めるしかないだろう。」
「でも、あの令嬢は…ちょっとなぁ。」
きりのない貴族たちの訴えにイラっとする。
手をすっとあげると、ざわめきが消えていく。
「質問はあとだ。まずは、ミリナ嬢とやらが、私の私室に入り込んだと聞いた。
純潔を散らされたと訴えているが、その相手を探そうと思う。」
また謁見室中がざわつく。
そんな、とか、誤魔化す気か、などと聞こえてくる。
「今、隣の部屋にミリナ嬢がいる。
ミリナ嬢に誰が相手だったのか、示してもらおう。
皆、指示があるまで私語を禁ずる。いいな?」
合図をすると、隣の部屋から一人の令嬢が入ってくる。
周りに護衛たちがいるが、気にしていないように見える。
茶髪の長身の令嬢…見たことがあるような。
遠くから一度見たことがあるだけだが…あの時の令嬢か。
今回のは、もしかしてリリーへの恨みか?
護衛がミリナ嬢に声をかける。
「ミリナ嬢、あなたは4日前の夜、どなたと過ごしたのですか?
この謁見室内にいるのなら、示してもらえますか?」
「はいっ。」
令嬢らしからぬ元気な声で答えると、こちらに向かって歩いてくる。
近づいて、近づいて、俺を通り過ぎる。
周りの貴族たちの息をのむ音が聞こえて、にやっとしてしまう。
「この人です!殿下ですよね?会いたかったですぅ。」
両手を胸の前で握りしめ、会いたかったと声をかけた相手は…
ジョンだ。
俺の身代わりを務めるくらいだから、髪色と体格が似ている。
ミリナ嬢は、きちんとジョンの顔を覚えていたようだ。
あの日、俺の影として代わりに私室にいたところ、媚薬を盛られたらしい。
そのまま見知らぬ女を抱いてしまって、
朝になって気が付き、慌てて俺のところに報告に来た。
俺の私室で女が寝ていて、純潔を散らした跡があるのはまずいと。
そんな話を聞かされて、俺の酔いも一瞬で醒めた。
だが、抱いたのがジョンだと説明しても証拠にはならない。
実際に俺の私室で裸の女が寝ているのだから。
側妃にするのが嫌で逃げたようにしか見えないだろう。
それでは、まずい。それに相手の身元もわからない。
とりあえず俺は王宮から離れ、証拠を集めることになった。
「というわけで、皆もわかったな。
ミリナ嬢のお相手は俺ではない。ただの恋愛のもつれだろう。」
呆然としていた貴族たちの中から、一人が飛び出してきた。
「いいえ、そんなことはありえません。
あの部屋は殿下の私室なのですぞ。
ミリナ、お前の相手はここにいる殿下だろう?」
ハッとしたミリナ嬢が、それに続く。
「ごめんなさいっ。あの時は暗かったから間違えちゃったの。
声を聞いたらわかったわ。私の相手はこの方よ!」
やはり簡単には認めないか。
「俺はあの日、自分の私室にいなかった。
代わりに何かあったら連絡をよこすようにジョンに言って、
俺の代わりに私室にいるよう命じた。
どうして俺の私室にミリナ嬢が入り込めたのかは知らんがな…。」
「ごまかされませんぞ!
こうなったら、ミリナを側妃として認めてもらいませんと!」
「側妃?」
「そうです!純潔を散らしたんだ。当然です!」
ため息が出る。どいつもこいつも…。俺を何だと思っているんだ。
見覚えのあるものたちばかりだが、人数が多い。
思った以上に王宮に集まっていたようだ。
「殿下、側妃を娶ったとは、どういうことですか!?」
「そうです。どういうことですか!
側妃を娶るおつもりがあるなら、側妃候補を集めて、
きちんと選んでからにしてくださらなければ…。」
「いや、もうすでに閨を共にしたのなら、
その伯爵令嬢を認めるしかないだろう。」
「でも、あの令嬢は…ちょっとなぁ。」
きりのない貴族たちの訴えにイラっとする。
手をすっとあげると、ざわめきが消えていく。
「質問はあとだ。まずは、ミリナ嬢とやらが、私の私室に入り込んだと聞いた。
純潔を散らされたと訴えているが、その相手を探そうと思う。」
また謁見室中がざわつく。
そんな、とか、誤魔化す気か、などと聞こえてくる。
「今、隣の部屋にミリナ嬢がいる。
ミリナ嬢に誰が相手だったのか、示してもらおう。
皆、指示があるまで私語を禁ずる。いいな?」
合図をすると、隣の部屋から一人の令嬢が入ってくる。
周りに護衛たちがいるが、気にしていないように見える。
茶髪の長身の令嬢…見たことがあるような。
遠くから一度見たことがあるだけだが…あの時の令嬢か。
今回のは、もしかしてリリーへの恨みか?
護衛がミリナ嬢に声をかける。
「ミリナ嬢、あなたは4日前の夜、どなたと過ごしたのですか?
この謁見室内にいるのなら、示してもらえますか?」
「はいっ。」
令嬢らしからぬ元気な声で答えると、こちらに向かって歩いてくる。
近づいて、近づいて、俺を通り過ぎる。
周りの貴族たちの息をのむ音が聞こえて、にやっとしてしまう。
「この人です!殿下ですよね?会いたかったですぅ。」
両手を胸の前で握りしめ、会いたかったと声をかけた相手は…
ジョンだ。
俺の身代わりを務めるくらいだから、髪色と体格が似ている。
ミリナ嬢は、きちんとジョンの顔を覚えていたようだ。
あの日、俺の影として代わりに私室にいたところ、媚薬を盛られたらしい。
そのまま見知らぬ女を抱いてしまって、
朝になって気が付き、慌てて俺のところに報告に来た。
俺の私室で女が寝ていて、純潔を散らした跡があるのはまずいと。
そんな話を聞かされて、俺の酔いも一瞬で醒めた。
だが、抱いたのがジョンだと説明しても証拠にはならない。
実際に俺の私室で裸の女が寝ているのだから。
側妃にするのが嫌で逃げたようにしか見えないだろう。
それでは、まずい。それに相手の身元もわからない。
とりあえず俺は王宮から離れ、証拠を集めることになった。
「というわけで、皆もわかったな。
ミリナ嬢のお相手は俺ではない。ただの恋愛のもつれだろう。」
呆然としていた貴族たちの中から、一人が飛び出してきた。
「いいえ、そんなことはありえません。
あの部屋は殿下の私室なのですぞ。
ミリナ、お前の相手はここにいる殿下だろう?」
ハッとしたミリナ嬢が、それに続く。
「ごめんなさいっ。あの時は暗かったから間違えちゃったの。
声を聞いたらわかったわ。私の相手はこの方よ!」
やはり簡単には認めないか。
「俺はあの日、自分の私室にいなかった。
代わりに何かあったら連絡をよこすようにジョンに言って、
俺の代わりに私室にいるよう命じた。
どうして俺の私室にミリナ嬢が入り込めたのかは知らんがな…。」
「ごまかされませんぞ!
こうなったら、ミリナを側妃として認めてもらいませんと!」
「側妃?」
「そうです!純潔を散らしたんだ。当然です!」
ため息が出る。どいつもこいつも…。俺を何だと思っているんだ。
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