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2章 旅の始まり

7.しつこい人

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「切り捨てていいか?」

リリーの前に出て、男の視線から隠す。
一瞬で出された氷の剣に、男も驚いて後ずさる。

「レオ、申し訳ない。これはすぐに引き上げさせる。」

「ジョエル様!?」

「エヴァン、レオルド王弟殿下に失礼だ。下がれ。」

「…これはこれは、王弟殿下でしたか。失礼しました。」

「エヴァンと言ったか、俺のリリーに近づくなら、次は容赦しない。
 切り捨てられる覚悟で来い。
 同じ魔術師なら、力の差くらい見極めているのだろう?」

「…ええ、それはもう。
 ですが、リリーアンヌ様は王妃になるのが相応しいお方。
 その意見を変える気はありません。」

「エヴァン!いいかげんにしろ。僕はリリーを王妃に迎える気はない。」

「どうしてですか!これほど素晴らしい方は他にいません。
 ロードンナ国に迎え入れるべきです!」

「無理だ。離縁する気が無いものをどうやって。」

「ですから、リリーアンヌ様にお願いすればいいでしょう。
 リリーアンヌ様だって、王弟妃より、王妃のほうが良いに決まってます。」

「「「「はぁ?」」」」

何だこの男は。確かにしつこい。そして、理解できない。
振り返ってリリーを見ると、あきらかに困った顔をしている。

「リリー、この男の話を聞くか?」

「嫌です。絶対に嫌です。
 私はジョエルと結婚する気はありません。
 ロードンナ国に行く気もありません。」

「なぜですか!?素晴らしい未来が待っているんですよ?」

「レオがいない未来など必要ありません。
 もしレオが亡くなったとしても、私もあとを追って死にます。
 他の人に嫁ぐことなんて、絶対にありえません!」

「そんな!」

崩れ落ちる男の首根っこを捕まえて、ジョエルが引きずっていく。

「ほらほら、帰るよ。
 なんで、僕にもその気がないって言ってんのに、
 振られたみたいになってるんだよ。
 ホントいいかげんにしてくれない?地味に傷つくんだけど。」

「あ、ごめんね、ジョエル。」

「いや、いいよ。リリーが悪いんじゃないから。
 僕がこいつらを制御できないのが悪い。レオにも悪かったな。
 もう帰るよ。何かあれば連絡するから~。」

ドアを開けて、帰ろうとする。
エヴァンがあきらめていないのか、「リリーアンヌ様ぁ~」と叫んでいたが、
バゴンと音をたててジョエルに後ろから頭を殴られていた。
そのまま引きずるように、帰って行ったのだが…。


「リリー、とりあえず、マジックハウスの設定はすぐに変えよう?」

「ええ、そうね。私たち以外は誰も入れないようにするわ。」

あぁ、もう、ものすごく疲れた気分だ。



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