2 / 142
2.やっぱり無理
しおりを挟む
「ご飯できたよ。たいしたものじゃないけど。」
「うわぁ、おいしそう。
悠里って料理できたんだね~。」
「失礼だな。両親が忙しくて、一人っ子だったし、
意外と何でもできるんだよ?」
「うん、わかるんだけど、イメージ?」
「あぁ、そう思われていても仕方ないかも。
さ、温かいうちに食べて?」
美里のリクエストがパスタだったから、トマトと細切りにした豚肉のパスタに、
コンソメスープに蒸し鶏とキュウリのサラダをつけている。
たいしたものではないけれど、
泊めてもらうお礼として料理は作らせてとお願いした。
食べ終わるとお腹がいっぱいと美里は満足そうにソファに転がった。
高校時代にはきっちり結んでいたストレートの髪は、
卒業してからショートカットにしたらしい。
さらさらと耳にかかるくらいの茶髪が、小顔な美里に良く似合っている。
「…美味しかった!!
ぜひ、嫁に来てほしい!」
「大げさだなぁ。美里だって料理はするでしょう?」
「いや、作ってもらったご飯って本当にいいよね。
半年も一人暮らしだとやっぱりさみしくなるんだよ。」
「そっか。」
片付けた後、食後のお茶を淹れて飲むとようやく落ち着いた気がした。
ここに着いた時は冷静だと思ったけれど、美里には落ち着けと言われていた。
今考えれば、冷静に焦っていたのだと思う。
取り乱したりはしなかったが、あきらかにおかしな行動をしていた。
「とりあえず今日と明日は泊っていきなよ。服も貸すし。」
「ありがとう。今日が金曜日だったことがせめてもの救いだよ。
二日間は帰らなくて済むから。」
あの後、家に帰る気にはならず、思い切って美里に連絡してみた。
高校の図書委員で一緒だった美里だが、それほど一緒にいたわけではない。
私の隣には必ず律と一花がいた。
他に友人と呼べるような人がいなかった私には、
図書委員で一緒だっただけの美里が、律と一花以外では一番仲が良かった。
友人というよりも知り合いと言っていいほど、一緒に居た時間は短い。
それでも美里に連絡したのは、私が唯一相談したことのある相手だったから。
私に友人が少ないのは、知り合ったとしてもすぐに律と一花に邪魔をされるからだ。
自分たち以外の友人はいらないだろうと律に圧をかけられ、
向こうには一花が何か言っていたようだ。
それに気が付くまでは私は人に嫌われるタイプなんだとばかり思っていた。
一花は長い黒髪と黒目がちな瞳で、その小柄な身体やたれ目なところも、
守ってあげたくなるタイプで男子からとても人気が高かった。
律のほうも長身で運動神経も良く、少し茶色い地毛と薄茶色の目がハーフっぽく、
まるでモデルみたいだってファンになる子たちがいたくらいだった。
一方の私は髪や肌の色素は薄いけど、身長も顔も成績も普通で。
どうして私のような何の取り柄もない地味な子と、
人気がある二人が一緒にいるのかとよく言われていた。
美里と知り合ったのは図書委員の仕事がきっかけだった。
週に一度の当番がある図書委員は人気があまりなかった。
クラスに一人だけということもあり、同じクラスの律と一花とは一緒じゃなかった。
週に一度、放課後に貸し出しの当番をするのは、本好きの私には楽しかった。
さぼる人も多い中、美里は休むことも遅れることもなく図書室に来ていた。
本好きという共通の話題もあったことで、美里と仲良くなるのは早かった。
…美里だけは邪魔されたくない。
そう思って、律と一花に仲良くなった人はいるかと聞かれても、
図書室では私語は禁止だから誰とも話していないと嘘をついていた。
本当は図書室の奥に小さな休憩室があって、美里とはよく話していた。
携帯番号も登録したら律に削除されてしまうからと、美里の番号は暗記していた。
もし何かあったらいつでも連絡して、そう言われていた。
あの頃も美里は真剣に話を聞いて心配してくれていた。
そんな関係はおかしい、律と一花からは離れたほうがいいと思うよと。
今日も連絡した時に簡単に事情を説明したら、すぐに泊まりにおいでと言ってくれた。
その言葉に素直に甘えさせてもらって、
一時間ほど電車に乗って隣の県に住む美里の家まで来ていた。
「うわぁ、おいしそう。
悠里って料理できたんだね~。」
「失礼だな。両親が忙しくて、一人っ子だったし、
意外と何でもできるんだよ?」
「うん、わかるんだけど、イメージ?」
「あぁ、そう思われていても仕方ないかも。
さ、温かいうちに食べて?」
美里のリクエストがパスタだったから、トマトと細切りにした豚肉のパスタに、
コンソメスープに蒸し鶏とキュウリのサラダをつけている。
たいしたものではないけれど、
泊めてもらうお礼として料理は作らせてとお願いした。
食べ終わるとお腹がいっぱいと美里は満足そうにソファに転がった。
高校時代にはきっちり結んでいたストレートの髪は、
卒業してからショートカットにしたらしい。
さらさらと耳にかかるくらいの茶髪が、小顔な美里に良く似合っている。
「…美味しかった!!
ぜひ、嫁に来てほしい!」
「大げさだなぁ。美里だって料理はするでしょう?」
「いや、作ってもらったご飯って本当にいいよね。
半年も一人暮らしだとやっぱりさみしくなるんだよ。」
「そっか。」
片付けた後、食後のお茶を淹れて飲むとようやく落ち着いた気がした。
ここに着いた時は冷静だと思ったけれど、美里には落ち着けと言われていた。
今考えれば、冷静に焦っていたのだと思う。
取り乱したりはしなかったが、あきらかにおかしな行動をしていた。
「とりあえず今日と明日は泊っていきなよ。服も貸すし。」
「ありがとう。今日が金曜日だったことがせめてもの救いだよ。
二日間は帰らなくて済むから。」
あの後、家に帰る気にはならず、思い切って美里に連絡してみた。
高校の図書委員で一緒だった美里だが、それほど一緒にいたわけではない。
私の隣には必ず律と一花がいた。
他に友人と呼べるような人がいなかった私には、
図書委員で一緒だっただけの美里が、律と一花以外では一番仲が良かった。
友人というよりも知り合いと言っていいほど、一緒に居た時間は短い。
それでも美里に連絡したのは、私が唯一相談したことのある相手だったから。
私に友人が少ないのは、知り合ったとしてもすぐに律と一花に邪魔をされるからだ。
自分たち以外の友人はいらないだろうと律に圧をかけられ、
向こうには一花が何か言っていたようだ。
それに気が付くまでは私は人に嫌われるタイプなんだとばかり思っていた。
一花は長い黒髪と黒目がちな瞳で、その小柄な身体やたれ目なところも、
守ってあげたくなるタイプで男子からとても人気が高かった。
律のほうも長身で運動神経も良く、少し茶色い地毛と薄茶色の目がハーフっぽく、
まるでモデルみたいだってファンになる子たちがいたくらいだった。
一方の私は髪や肌の色素は薄いけど、身長も顔も成績も普通で。
どうして私のような何の取り柄もない地味な子と、
人気がある二人が一緒にいるのかとよく言われていた。
美里と知り合ったのは図書委員の仕事がきっかけだった。
週に一度の当番がある図書委員は人気があまりなかった。
クラスに一人だけということもあり、同じクラスの律と一花とは一緒じゃなかった。
週に一度、放課後に貸し出しの当番をするのは、本好きの私には楽しかった。
さぼる人も多い中、美里は休むことも遅れることもなく図書室に来ていた。
本好きという共通の話題もあったことで、美里と仲良くなるのは早かった。
…美里だけは邪魔されたくない。
そう思って、律と一花に仲良くなった人はいるかと聞かれても、
図書室では私語は禁止だから誰とも話していないと嘘をついていた。
本当は図書室の奥に小さな休憩室があって、美里とはよく話していた。
携帯番号も登録したら律に削除されてしまうからと、美里の番号は暗記していた。
もし何かあったらいつでも連絡して、そう言われていた。
あの頃も美里は真剣に話を聞いて心配してくれていた。
そんな関係はおかしい、律と一花からは離れたほうがいいと思うよと。
今日も連絡した時に簡単に事情を説明したら、すぐに泊まりにおいでと言ってくれた。
その言葉に素直に甘えさせてもらって、
一時間ほど電車に乗って隣の県に住む美里の家まで来ていた。
101
あなたにおすすめの小説
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。
--注意--
こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。
一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。
二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪
※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて
奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】
※ヒロインがアンハッピーエンドです。
痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。
爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。
執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。
だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。
ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。
広場を埋め尽くす、人。
ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。
この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。
そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。
わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。
国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。
今日は、二人の婚姻の日だったはず。
婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。
王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。
『ごめんなさい』
歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。
無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
神託を聞けた姉が聖女に選ばれました。私、女神様自体を見ることが出来るんですけど… (21話完結 作成済み)
京月
恋愛
両親がいない私達姉妹。
生きていくために身を粉にして働く妹マリン。
家事を全て妹の私に押し付けて、村の男の子たちと遊ぶ姉シーナ。
ある日、ゼラス教の大司祭様が我が家を訪ねてきて神託が聞けるかと質問してきた。
姉「あ、私聞けた!これから雨が降るって!!」
司祭「雨が降ってきた……!間違いない!彼女こそが聖女だ!!」
妹「…(このふわふわ浮いている女性誰だろう?)」
※本日を持ちまして完結とさせていただきます。
更新が出来ない日があったり、時間が不定期など様々なご迷惑をおかけいたしましたが、この作品を読んでくださった皆様には感謝しかございません。
ありがとうございました。
冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています
放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。
希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。
元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。
──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。
「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」
かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着?
優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる