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5.誰か助けて
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「嫌よ!ずっと一緒だって言ったじゃない。」
「…私はそんなこと、一度も約束していない。」
一花が大きな瞳に涙を浮かべているけれど、それをどうする気もない。
いつもなら、すぐにごめんって謝って泣き止まそうとしていたけれど。
ふんわりとしたセーターとロングスカート。
パステルカラーの組み合わせも小柄な一花によく似合っている。
誰が見たとしても、可愛くて弱くて守られているのは一花で、
どちらかといえば少年っぽい私は一花を慰める役だった。
今もきっと、私が約束を守ってくれないのが悪いと思っているんだろう。
だけど、律とも一花ともそんな約束はしていない。
していない約束を守る必要もない。
幼いころから、どこか大人びていた私は、
一花の言う「ずっと三人で一緒」は、ありえないと思っていた。
たしかに両親たち三組は大人なった今でも仲がいいが、
そんなことはめずらしいことで、めったにないことだと知っていた。
私たち三人が大人になれば、それぞれに家庭があって、
ずっと一緒になんていられないと知っていた。
だから、一花に言われるたびに、あいまいに笑って流していた。
きっと一花がそんな風に思うのも今だけなんだろうなって。
一度も約束なんてした覚えはなかった。
こんなことになったからには、一花のそんな思いに応えることはない。
もし泣いたとしても、それは律が慰めてあげれば済む話だ。
「三人でいる約束なんてしたことない。
もう、一緒に居たくないんだ。じゃあね。」
泣きそうな一花をそのままに、背を向けて違う方向へと歩き出す。
大声で争っているところを周りに見られていたようで、人が集まりかけていた。
人気のない場所に行って捕まるよりも、
むしろ人の多い場所にいたほうが安全かもしれない。
そう思って、人の多いカフェテリアへと向かって歩き出した。
「待てって。おい!」
「待って、悠里!待ってってば!」
後ろから聞こえてくる声に振り向くこともなく歩く。
これで二人があきらめてくれるとは過去の経験から思っていない。
何度も何度も仲直りしようとしてくるだろう。
そのうち私があきらめて、いいよと言うのを期待して。
だけど、もうそんな日は二度とこない。
今回ばかりは許せそうになかった。
というよりも、許す意味がわからない。
私なんてほっといて、二人で仲良くしていればいいじゃない。
どうして私を巻き込もうとするんだろう。
「ダメだ!俺たちから離れるなんて許さない!」
遠ざかったと思った声がすぐ近くで聞こえた。
と、同時に後ろから抱き着かれる。
嫌だ!と体が反応して振りほどくように暴れる。
めちゃくちゃに腕を振り回して、二人がこれ以上私に何もできないようにと。
だが、その両腕に抱き着かれ、泣きたくなるような思いで叫んだ。
「もう、嫌!
誰か助けて!!」
その声にまるで反応したかのように大きな白い光の輪が飛んでくる。
私を囲むようにくるくる回って、光の中に包み込んでいく。
あぁ、ここから助け出してくれるなら誰だっていい。
お願い…早く、どこかへ連れて行って。
光が強くなって、何も見えなくなって…
そのまま意識を失った。
遠くで叫んでいる声が聞こえる…。
何かを訴えているような女の人の声も…?
頬にふれているのは床?石の床?
え?私どうしたの?外で倒れちゃった?
起き上がったら、広い建物の中だった。
床が綺麗な石畳みになっていて、見上げたら天井が遠くに見える。
壁も柱も石でできていそうだけど、あちこちに細かな彫刻がされている。
西洋のお城の広間のような豪華なつくりの部屋のすみに倒れていたようだ。
ここ、どこ?教会とかお城とか、そんな感じだけど。
まったく知らない場所…。
窓が一つもないし、廊下の外も建物の中だということは、
ここは広い建物の中の一部屋ということだろうか。
周りを見ると、広い部屋の反対側に人が大勢いるのが見えた。
まるで古い城にいる騎士のような服を着ている人がたくさん…。
二人だけ服装が違う男女がいると思ったら、律と一花だった。
知らない人たちに向かって何か文句を言っているように見える。
「俺たちをどうする気だ!」
「そうよ、早くここから帰して!」
先ほどから聞こえていた声は律と一花の声だったようだ。
…二人とは離れたかったのに。
ここがどこかという問題よりも、あの二人と一緒なことが頭が痛かった。
もし連れ去られたとしても、一緒に居たいと思う気にはならない。
むしろ、めんどくさいことが増えそうな気しかしない。
思わずため息をついてしまいそうな時だった。
「あの…具合は大丈夫?」
「…私はそんなこと、一度も約束していない。」
一花が大きな瞳に涙を浮かべているけれど、それをどうする気もない。
いつもなら、すぐにごめんって謝って泣き止まそうとしていたけれど。
ふんわりとしたセーターとロングスカート。
パステルカラーの組み合わせも小柄な一花によく似合っている。
誰が見たとしても、可愛くて弱くて守られているのは一花で、
どちらかといえば少年っぽい私は一花を慰める役だった。
今もきっと、私が約束を守ってくれないのが悪いと思っているんだろう。
だけど、律とも一花ともそんな約束はしていない。
していない約束を守る必要もない。
幼いころから、どこか大人びていた私は、
一花の言う「ずっと三人で一緒」は、ありえないと思っていた。
たしかに両親たち三組は大人なった今でも仲がいいが、
そんなことはめずらしいことで、めったにないことだと知っていた。
私たち三人が大人になれば、それぞれに家庭があって、
ずっと一緒になんていられないと知っていた。
だから、一花に言われるたびに、あいまいに笑って流していた。
きっと一花がそんな風に思うのも今だけなんだろうなって。
一度も約束なんてした覚えはなかった。
こんなことになったからには、一花のそんな思いに応えることはない。
もし泣いたとしても、それは律が慰めてあげれば済む話だ。
「三人でいる約束なんてしたことない。
もう、一緒に居たくないんだ。じゃあね。」
泣きそうな一花をそのままに、背を向けて違う方向へと歩き出す。
大声で争っているところを周りに見られていたようで、人が集まりかけていた。
人気のない場所に行って捕まるよりも、
むしろ人の多い場所にいたほうが安全かもしれない。
そう思って、人の多いカフェテリアへと向かって歩き出した。
「待てって。おい!」
「待って、悠里!待ってってば!」
後ろから聞こえてくる声に振り向くこともなく歩く。
これで二人があきらめてくれるとは過去の経験から思っていない。
何度も何度も仲直りしようとしてくるだろう。
そのうち私があきらめて、いいよと言うのを期待して。
だけど、もうそんな日は二度とこない。
今回ばかりは許せそうになかった。
というよりも、許す意味がわからない。
私なんてほっといて、二人で仲良くしていればいいじゃない。
どうして私を巻き込もうとするんだろう。
「ダメだ!俺たちから離れるなんて許さない!」
遠ざかったと思った声がすぐ近くで聞こえた。
と、同時に後ろから抱き着かれる。
嫌だ!と体が反応して振りほどくように暴れる。
めちゃくちゃに腕を振り回して、二人がこれ以上私に何もできないようにと。
だが、その両腕に抱き着かれ、泣きたくなるような思いで叫んだ。
「もう、嫌!
誰か助けて!!」
その声にまるで反応したかのように大きな白い光の輪が飛んでくる。
私を囲むようにくるくる回って、光の中に包み込んでいく。
あぁ、ここから助け出してくれるなら誰だっていい。
お願い…早く、どこかへ連れて行って。
光が強くなって、何も見えなくなって…
そのまま意識を失った。
遠くで叫んでいる声が聞こえる…。
何かを訴えているような女の人の声も…?
頬にふれているのは床?石の床?
え?私どうしたの?外で倒れちゃった?
起き上がったら、広い建物の中だった。
床が綺麗な石畳みになっていて、見上げたら天井が遠くに見える。
壁も柱も石でできていそうだけど、あちこちに細かな彫刻がされている。
西洋のお城の広間のような豪華なつくりの部屋のすみに倒れていたようだ。
ここ、どこ?教会とかお城とか、そんな感じだけど。
まったく知らない場所…。
窓が一つもないし、廊下の外も建物の中だということは、
ここは広い建物の中の一部屋ということだろうか。
周りを見ると、広い部屋の反対側に人が大勢いるのが見えた。
まるで古い城にいる騎士のような服を着ている人がたくさん…。
二人だけ服装が違う男女がいると思ったら、律と一花だった。
知らない人たちに向かって何か文句を言っているように見える。
「俺たちをどうする気だ!」
「そうよ、早くここから帰して!」
先ほどから聞こえていた声は律と一花の声だったようだ。
…二人とは離れたかったのに。
ここがどこかという問題よりも、あの二人と一緒なことが頭が痛かった。
もし連れ去られたとしても、一緒に居たいと思う気にはならない。
むしろ、めんどくさいことが増えそうな気しかしない。
思わずため息をついてしまいそうな時だった。
「あの…具合は大丈夫?」
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