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キリルside
6.ジェシカ
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お兄様との話を終えて神官隊の待機室に戻ると、一斉に視線がこちらへと向く。
神官宮にいるものの半分ほどはここに集まっているんじゃないだろうか。
あまりの視線の多さに少しだけ怯みそうになる。
「ジェシカ様、キリル様はなんと?」
「聖女様は無事に真名の儀式を終えたそうです。」
「「「おお!」」」
「ですので、ユウリ様とお呼びしてかまわないそうです。」
「あぁ、安心しました。
あの寄生しているものたちが何度も御名を呼ぶものですから…ハラハラしました。
神官宮ですから、虫が入り込んではいないとは思いますが。
油断はできませんからな…。」
「ええ。おそらくお兄様もそれを心配して先に真名の儀式を終えたのでしょう。
ユウリ様は取り乱すことなく儀式を終え、部屋に戻りました。
しばらくはお兄様とお過ごしになると思いますので、
何かあった時には私へと連絡が来ます。」
「わかっております。
隊のものは部屋へは近づかないように厳命されておりますので、
ジェシカ様に取り次いでいただけると助かります。」
キリル兄様の外面の良さというか、隊の中での信頼度の高さに驚かされる。
カイン兄様の時も似たようなものだったけれど、妄信的な隊員ばかりだ。
真名の儀式どころか、もうすでに神の住処へと共に行ったなんて言ったら…。
いや、それでも何かお考えがあって…とか言い出しそう。
真名の儀式は寄生するものがいたから仕方ないとは思えるが、
説明もなしに神の住処に共にするだなんて…。
ユウリ様がその意味に気が付いた時に怒り出さなきゃいいのだけど…。
キリル兄様もそのことはわかっていて、しょんぼりしていたのでしょうけど。
さすがにこれは反省してもらわなければ。
ため息をごまかして、喜んでいる隊員たちへ指示を続ける。
今は何よりもユウリ様の安全を優先して動かなければ。
「寄生していたものの扱いは、しばらくは保留ということです。
儀式を優先したためにユウリ様に確認ができていません。
ただ、関係性は明らかになっていませんが、
ユウリ様はあの二人とは一緒に居たくないと言ったそうです。
暴れていた男性のほうは貴族牢へ、女性のほうは客室で軟禁するように。
どちらも王宮へと身柄を預けて、神官宮からは離します。
万が一にでもユウリ様に会うようなことが無いようにお願いします。」
「わかりました!」
まだ聖女の間で拘束されたままだという男のほうの様子を見に行くと、
低く唸るような声が聞こえた。
聖女の間の扉から中をのぞくと、男が床に転がされ猿轡をはめられている。
唸るような声だったのはそのせいか。
暴れて取り押さえられたせいか、服がボロボロになっている。
それでも隊員たちを睨みつけているのを見ると、あきらめていないようだ。
近くにいた隊員たちが指示を受けて王宮へと運ぼうとする。
男を担ぎ上げようとすると身体をひねるようにして逃げ出し、
その度に床に落とされる。
かなりの高さから落ちるのだから痛いだろうに、それでも何度も逃げ出そうとする。
これではいつまでたっても運び出せそうにない。
しつこさに呆れ、隊員の一人に猿轡を外すように指示を出す。
私が話して説得できるかはわからないが、このままではらちが明かない。
猿轡を外すように指示したのが私だと気が付いたのか、
男は私へと睨みつけながら聞いてくる。
「誰だ、お前。お前が一番偉いのか?」
「うーん。えらい人間じゃないわ。
ここの関係者、としか答えられないわね。」
「指示できるのならえらいんだろう?俺を離せよ。
なんで俺たちがこんな目に合わなきゃいけないんだ。」
「それね、こんな目にあわせたいわけじゃないのよ。
ただ…縛らないと暴れちゃうでしょう?
隊員を殴ったって聞いたわ。
これ以上、そういうことをされると困っちゃうから拘束したの。
べつにあなたに危害を加えたくてしているわけじゃないから。」
「…暴れていたのは、悠里を連れて行かれたからだ。」
「あなたの名前は?ユウリ様とはどんな関係?」
「…平林、律。悠里の恋人だ。」
神官宮にいるものの半分ほどはここに集まっているんじゃないだろうか。
あまりの視線の多さに少しだけ怯みそうになる。
「ジェシカ様、キリル様はなんと?」
「聖女様は無事に真名の儀式を終えたそうです。」
「「「おお!」」」
「ですので、ユウリ様とお呼びしてかまわないそうです。」
「あぁ、安心しました。
あの寄生しているものたちが何度も御名を呼ぶものですから…ハラハラしました。
神官宮ですから、虫が入り込んではいないとは思いますが。
油断はできませんからな…。」
「ええ。おそらくお兄様もそれを心配して先に真名の儀式を終えたのでしょう。
ユウリ様は取り乱すことなく儀式を終え、部屋に戻りました。
しばらくはお兄様とお過ごしになると思いますので、
何かあった時には私へと連絡が来ます。」
「わかっております。
隊のものは部屋へは近づかないように厳命されておりますので、
ジェシカ様に取り次いでいただけると助かります。」
キリル兄様の外面の良さというか、隊の中での信頼度の高さに驚かされる。
カイン兄様の時も似たようなものだったけれど、妄信的な隊員ばかりだ。
真名の儀式どころか、もうすでに神の住処へと共に行ったなんて言ったら…。
いや、それでも何かお考えがあって…とか言い出しそう。
真名の儀式は寄生するものがいたから仕方ないとは思えるが、
説明もなしに神の住処に共にするだなんて…。
ユウリ様がその意味に気が付いた時に怒り出さなきゃいいのだけど…。
キリル兄様もそのことはわかっていて、しょんぼりしていたのでしょうけど。
さすがにこれは反省してもらわなければ。
ため息をごまかして、喜んでいる隊員たちへ指示を続ける。
今は何よりもユウリ様の安全を優先して動かなければ。
「寄生していたものの扱いは、しばらくは保留ということです。
儀式を優先したためにユウリ様に確認ができていません。
ただ、関係性は明らかになっていませんが、
ユウリ様はあの二人とは一緒に居たくないと言ったそうです。
暴れていた男性のほうは貴族牢へ、女性のほうは客室で軟禁するように。
どちらも王宮へと身柄を預けて、神官宮からは離します。
万が一にでもユウリ様に会うようなことが無いようにお願いします。」
「わかりました!」
まだ聖女の間で拘束されたままだという男のほうの様子を見に行くと、
低く唸るような声が聞こえた。
聖女の間の扉から中をのぞくと、男が床に転がされ猿轡をはめられている。
唸るような声だったのはそのせいか。
暴れて取り押さえられたせいか、服がボロボロになっている。
それでも隊員たちを睨みつけているのを見ると、あきらめていないようだ。
近くにいた隊員たちが指示を受けて王宮へと運ぼうとする。
男を担ぎ上げようとすると身体をひねるようにして逃げ出し、
その度に床に落とされる。
かなりの高さから落ちるのだから痛いだろうに、それでも何度も逃げ出そうとする。
これではいつまでたっても運び出せそうにない。
しつこさに呆れ、隊員の一人に猿轡を外すように指示を出す。
私が話して説得できるかはわからないが、このままではらちが明かない。
猿轡を外すように指示したのが私だと気が付いたのか、
男は私へと睨みつけながら聞いてくる。
「誰だ、お前。お前が一番偉いのか?」
「うーん。えらい人間じゃないわ。
ここの関係者、としか答えられないわね。」
「指示できるのならえらいんだろう?俺を離せよ。
なんで俺たちがこんな目に合わなきゃいけないんだ。」
「それね、こんな目にあわせたいわけじゃないのよ。
ただ…縛らないと暴れちゃうでしょう?
隊員を殴ったって聞いたわ。
これ以上、そういうことをされると困っちゃうから拘束したの。
べつにあなたに危害を加えたくてしているわけじゃないから。」
「…暴れていたのは、悠里を連れて行かれたからだ。」
「あなたの名前は?ユウリ様とはどんな関係?」
「…平林、律。悠里の恋人だ。」
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