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聖女の世界
6.会いに行く
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「本当に大丈夫なのか?
もう少し回復してからでもいいんじゃない?」
キリルのもう何度目かわからない確認に笑い返す。
「大丈夫。早いうちにちゃんと言っておきたいし。
キリルが一緒にいてくれるなら頑張れると思う。
だから、一緒にいてくれる?」
「そっか…わかった。一緒にいる。」
仕方ないかとため息つきそうなキリルの腕につかまりながら歩く。
まだ体力が回復しきれていないのか、ゆっくりとしか歩けない。
そのせいなのか、キリルが時折心配そうに私を確認している。
王宮と呼ばれる建物は私がいた場所の隣にあるらしい。
隣と言っても歩いて五分ほどの距離だそうだ。
二つの宮は中庭でつながっていると聞いたが、これは中庭とは言わない。
森の小道と言ったほうが納得する。
周りを木々に囲まれた道をゆっくりと歩く。
本当の森と違って、平坦な道なだけ良かったと思う。
私がいた場所は外から見ると真っ白な建物だった。
神官宮と言われる場所で、聖女と神官隊しか入れないそうだ。
聖女(私だけど)を迎えて、神官隊が活動するための宮で、
今後国中に瘴気が広がった時には消していくための作戦基地になるという。
神官隊は全国にたくさんいて、あの宮にいるのは五十人くらいだそうだ。
王宮よりも神官宮が上になるそうで、神官隊は王宮に勝手に入れるが、
王宮の者は神官宮に許可なく入ることはできない。
神官宮から王宮へと連れて行った二人を、
もう一度神官宮に連れてくるのは難しいらしい。
だから私がこっそりと王宮に行って二人に会うことになった。
王宮側には連絡がいっているそうで、
今日だけ律と一花の周りの警護は神官隊がしているという。
まだ私の力が安定していないので、あまり人に会えないらしい。
そのため、事情が分かっている神官隊以外は近寄らせないでくれている。
王族も住んでいるという王宮は薄黄色の建物で、
あちこちに彫刻が置いてあって、いたるところに薔薇が咲いている。
神官宮よりもお金がかかっていそうな造りに、
さすが王族が住むだけあって豪華という感想をもった。
人の気配のない長い廊下を進むと、
頑丈そうなドアがいくつか並んでいるエリアについた。
このドアのすべてが貴族牢らしい。
その一つのドアを開けると、部屋の中に頑丈そうな鉄格子があるのが見えた。
あぁ、一応は部屋だけど鉄格子があるのはちゃんと牢っぽい。
そんな間抜けなことを考えていたら、中にいた律が私を見つけて叫んだ。
「悠里!無事だったか!
おい、お前ら離せ!悠里!悠里!」
中にいる隊員に両側から身体を押さえつけられながら、
私を見て騒いでいる律に、あいかわらずだなぁなんて思ってしまう。
ただ…怪我をしているのかあざだらけだし腕に包帯を巻いていた。
着ている服もボロボロになっているように見える。
…暴れたって言っていたから、その影響だろうか。
今も必死に私のところへ来ようとしているのはわかるのだけど、
そんな風に私を守ろうとしないでほしい。
「律、心配しなくていいよ。
さらわれたわけじゃないし、変なこともされてないから。
私はもともと、この世界の人間なんだ。」
「は?」
「私がこの世界に戻ってくるのに、律と一花はついてきてしまったみたい。
でもね、律と一花はこの世界の人間じゃない。
…自由にできないのは悪いけど、おとなしくしててくれる?」
「お前、何言ってんだ?」
うん、何言ってんだ、だよねぇ。
律がそう言いたくなる気持ちもわかる。
だけど、いろいろと考えた結果、私が自分の意思でここに来たことにしないと、
律は納得しないだろうし、怒り出しそうな気がしたから。
私はすべてをわかったうえでここに来たことにした。
「この姿を見てわかるでしょう?
髪も目もこの世界に生まれるはずだった元の身体に戻ったんだよ。」
「は?それ、ウィッグとカラコンじゃないのか?」
「違うよ。これが本当の私なんだ。
律とは違う世界の人間。
…今までの私と違うの、見たらわかるでしょう?」
あくまで私はこの世界の人間で、
あの世界が嫌になったから帰ってきた、ということにした。
律と一花がそれで納得するかどうかはわからないけれど、
それが一番説得できるように思うから。
「この世界に戻ってきたからには、
もう二人とは一緒に居られないけど、元気でね?」
「嫌だ!俺はお前と離れない!
悠里は騙されているんだ!そいつか?
俺の悠里を騙したのは、お前なんだな?」
私の隣にいるキリルに向かって叫んでいるけれど、
聞き捨てならないことを聞いた…。
「律…いつから私が律のものになったのよ。」
「ずっとだ!生まれてからずっと俺のものだっただろう!」
「違う。私は誰かのものになったことなんて無い。」
「どうしてそんなこと言うんだ!恋人だろう!?」
「そんなの、友達だった時と何も変わらなかったじゃない。
形だけの恋人だったけど、それも無理だよ。
一花とあんなことしてた時点で、もう恋人でもないから。
ただの幼馴染よ。」
ホント腹立つ。なんで浮気男なんかに所有されなきゃいけないんだ。
律にはあんだけかわいい一花がいるんだから、一花だけにしとけばいいのに。
「あれは練習だ!誤解なんだ!」
「はぁ?」
もう少し回復してからでもいいんじゃない?」
キリルのもう何度目かわからない確認に笑い返す。
「大丈夫。早いうちにちゃんと言っておきたいし。
キリルが一緒にいてくれるなら頑張れると思う。
だから、一緒にいてくれる?」
「そっか…わかった。一緒にいる。」
仕方ないかとため息つきそうなキリルの腕につかまりながら歩く。
まだ体力が回復しきれていないのか、ゆっくりとしか歩けない。
そのせいなのか、キリルが時折心配そうに私を確認している。
王宮と呼ばれる建物は私がいた場所の隣にあるらしい。
隣と言っても歩いて五分ほどの距離だそうだ。
二つの宮は中庭でつながっていると聞いたが、これは中庭とは言わない。
森の小道と言ったほうが納得する。
周りを木々に囲まれた道をゆっくりと歩く。
本当の森と違って、平坦な道なだけ良かったと思う。
私がいた場所は外から見ると真っ白な建物だった。
神官宮と言われる場所で、聖女と神官隊しか入れないそうだ。
聖女(私だけど)を迎えて、神官隊が活動するための宮で、
今後国中に瘴気が広がった時には消していくための作戦基地になるという。
神官隊は全国にたくさんいて、あの宮にいるのは五十人くらいだそうだ。
王宮よりも神官宮が上になるそうで、神官隊は王宮に勝手に入れるが、
王宮の者は神官宮に許可なく入ることはできない。
神官宮から王宮へと連れて行った二人を、
もう一度神官宮に連れてくるのは難しいらしい。
だから私がこっそりと王宮に行って二人に会うことになった。
王宮側には連絡がいっているそうで、
今日だけ律と一花の周りの警護は神官隊がしているという。
まだ私の力が安定していないので、あまり人に会えないらしい。
そのため、事情が分かっている神官隊以外は近寄らせないでくれている。
王族も住んでいるという王宮は薄黄色の建物で、
あちこちに彫刻が置いてあって、いたるところに薔薇が咲いている。
神官宮よりもお金がかかっていそうな造りに、
さすが王族が住むだけあって豪華という感想をもった。
人の気配のない長い廊下を進むと、
頑丈そうなドアがいくつか並んでいるエリアについた。
このドアのすべてが貴族牢らしい。
その一つのドアを開けると、部屋の中に頑丈そうな鉄格子があるのが見えた。
あぁ、一応は部屋だけど鉄格子があるのはちゃんと牢っぽい。
そんな間抜けなことを考えていたら、中にいた律が私を見つけて叫んだ。
「悠里!無事だったか!
おい、お前ら離せ!悠里!悠里!」
中にいる隊員に両側から身体を押さえつけられながら、
私を見て騒いでいる律に、あいかわらずだなぁなんて思ってしまう。
ただ…怪我をしているのかあざだらけだし腕に包帯を巻いていた。
着ている服もボロボロになっているように見える。
…暴れたって言っていたから、その影響だろうか。
今も必死に私のところへ来ようとしているのはわかるのだけど、
そんな風に私を守ろうとしないでほしい。
「律、心配しなくていいよ。
さらわれたわけじゃないし、変なこともされてないから。
私はもともと、この世界の人間なんだ。」
「は?」
「私がこの世界に戻ってくるのに、律と一花はついてきてしまったみたい。
でもね、律と一花はこの世界の人間じゃない。
…自由にできないのは悪いけど、おとなしくしててくれる?」
「お前、何言ってんだ?」
うん、何言ってんだ、だよねぇ。
律がそう言いたくなる気持ちもわかる。
だけど、いろいろと考えた結果、私が自分の意思でここに来たことにしないと、
律は納得しないだろうし、怒り出しそうな気がしたから。
私はすべてをわかったうえでここに来たことにした。
「この姿を見てわかるでしょう?
髪も目もこの世界に生まれるはずだった元の身体に戻ったんだよ。」
「は?それ、ウィッグとカラコンじゃないのか?」
「違うよ。これが本当の私なんだ。
律とは違う世界の人間。
…今までの私と違うの、見たらわかるでしょう?」
あくまで私はこの世界の人間で、
あの世界が嫌になったから帰ってきた、ということにした。
律と一花がそれで納得するかどうかはわからないけれど、
それが一番説得できるように思うから。
「この世界に戻ってきたからには、
もう二人とは一緒に居られないけど、元気でね?」
「嫌だ!俺はお前と離れない!
悠里は騙されているんだ!そいつか?
俺の悠里を騙したのは、お前なんだな?」
私の隣にいるキリルに向かって叫んでいるけれど、
聞き捨てならないことを聞いた…。
「律…いつから私が律のものになったのよ。」
「ずっとだ!生まれてからずっと俺のものだっただろう!」
「違う。私は誰かのものになったことなんて無い。」
「どうしてそんなこと言うんだ!恋人だろう!?」
「そんなの、友達だった時と何も変わらなかったじゃない。
形だけの恋人だったけど、それも無理だよ。
一花とあんなことしてた時点で、もう恋人でもないから。
ただの幼馴染よ。」
ホント腹立つ。なんで浮気男なんかに所有されなきゃいけないんだ。
律にはあんだけかわいい一花がいるんだから、一花だけにしとけばいいのに。
「あれは練習だ!誤解なんだ!」
「はぁ?」
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