浮気された聖女は幼馴染との切れない縁をなんとかしたい!

gacchi(がっち)

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聖女の世界

9.キリルの過去

「その婚約者が、婚約して三年したくらいからおかしくなっていった。
 向こうが十五歳を超えたくらいからかな。
 夜会デビューしたっていうこともあるんだろうけど、
 エスコートして入場しても、途中でどこかに消えるようになったんだ。」

えっと…夜会デビュー?エスコート?
もしかしなくても、キリルって貴族とかなのかな。
名前に家名なかったけれど、婚約を令嬢の家からお願いされるくらいだし、
いいとこの息子なのは間違いなさそうだ。


「友人もいるだろうし、俺と一緒に居たくないならそれでいいと思ってたんだ。
 無理してまで一緒に居たいとも思えないし、
 正直、婚約者が隣にいなくても俺は何も困らなかったし。
 きっと、そういうところが婚約者には面白くなかったんだろうな。」

婚約者なのにそんな冷たい態度だなんて意外だった。
ここ数日の付き合いでしかない私でもわかるくらい、キリルは世話焼きだ。
年下の婚約者なんていたのなら、大事にしてそうだと思ったのに。

「…そんな目で責めないでよ。
 断り切れなくて仕方なく婚約したって言っただろう?
 誠実であろうとは思ってたけど、それほど仲は良くなかったよ。」

「そうなんだ。」

「で、ある日の夜会で、もう帰る時間なのに婚約者が広間にいなかった。
 夜会の間は放っておいてもいいんだけど、帰りは送らなきゃいけない。
 婚約者の父親と約束している門限もある。
 どこにいるのかと広間の外を探したんだ。
 婚約者がいたのは中庭の東屋だった。

 …そういうところは薄暗くなっていてね、恋人の逢瀬につかったりする。
 俺としてはなるべくそういうところを避けていたんだが…。
 そこ以外は見つからなくて、仕方なく中庭を探したら見つけた。

 ドレスの胸元がはだけた状態で、他の男とくちづけをしていたよ。
 くすくす楽しそうに笑いながら、抱きしめられているのが見えた。」


…それは…ご愁傷様としか言えない。
婚約者のそんなところ見たくなかっただろうなぁ。

「…見ちゃって、どうしたの?怒った?」

「そのまま帰った。」

「は?」

「いや、楽しそうにしているなら、もういいかって。
 そんな令嬢と婚約しているのが馬鹿らしくなって、置いて帰った。
 向こうの父親には簡単に事情を書いた手紙を送って、一人で帰ったよ。」

「あぁ、まぁ、気持ちはわかる。
 けど、婚約までしていたんでしょう?揉めなかったの?」

「たしかに揉めそうだった。
 どうやって穏便に婚約解消しようかと思っていたんだが、
 その時に神官隊長の指名を受けたんだ。」

「神官隊長の指名?」

「神官隊長候補の中から選ばれるんだ。一人だけ。
 異世界にいる聖女がこちらに帰ってきそうな状態になったら、
 その対になる魂を持つものが隊長に指名される。
 指名されたら目の色が緑に変わるんだ。
 隊長になったら、この神官宮に来て聖女を迎える準備をする。」

「そういうシステムなんだ…。」

対の魂に関しては不思議でしかないけれど、
私がこちらに帰ってきそうになったからキリルが隊長になったってことかな。
そんな風に待っていてくれたことが、ちょっとくすぐったく感じる。

「そう、俺が神官隊長に指名されたからちょうど良かった。
 …神官隊長でいる間は清らかでい続けなければいけない。
 だから、婚約を解消することができる。」

「あぁ、そういえばそう言ってたね。」

「普通なら婚約したままで神官隊長になって、
 一年待っても聖女が来なければ役目を終えて結婚するんだ。
 婚約者がいる場合はそうすることが多い。
 俺はユウリが来るまで待とうと思ってた。
 一年過ぎても、何年かかったとしても。
 だから、それを理由に婚約解消させてもらった。」

「それで納得してもらえたの?」

「いや、婚約者は納得してくれなかった。
 浮気していた理由は、俺に嫉妬してほしかったそうだ。
 侍女にそそのかされたらしい。
 俺が嫉妬すれば、仲が深まって俺ともそういうことができるはずだって。」

「…はぁ?」

「似ているだろう?
 俺のために、他の男とそういうことしてたって言うんだ。
 ありえないだろう?」

「…ありえない。無理無理。
 好きな男に見せるためだけに好きでもない男とキスしてたってこと?
 嫌われるに決まっているじゃない!馬鹿なの?」

「ユウリはそう思うよな。俺だってそう思う。
 でも、婚約者とその侍女はそう思わなかったらしい。
 婚約解消はしない。俺が役目を終えるのを待つ、そう言ってたよ。

 無事に婚約解消できたのは、
 醜聞をさけたかった婚約者の父親が解消に合意してくれたからだ。
 本人は今でも納得いってないそうだけど、そんなのは知らない。

 な?理解できないものを理解しようとしても無理なこともある。
 関わらないで生活するのが一番だと思うんだ。」

「…うん、本当だね。
 私もキリルはその元婚約者とは関わらないほうがいいと思う。」

「だよな。よし、今日はもうのんびりしよう。
 後のことは、ユウリがのんびりした後で考えよっか。」


私たち似たもの同士だったんだ。だから、こんなにも理解し合えるのかな。
とりあえず、今日はもう疲れてしまったし、一花と会う気力は残っていない。
元気になってから考えようと、キリルと一緒にのんびりと休むことにした。

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