浮気された聖女は幼馴染との切れない縁をなんとかしたい!

gacchi(がっち)

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神の力

11.美里vs一花

「悠里、やっと会えたのに…どうしてそんな悲しいこと言うの?
 やっぱりその男に変なこと吹き込まれているのね!
 すぐに助けだすから!
 ダニエル王子も手伝ってくれるって約束してくれたの。
 だから、勇気を出して、こちらに戻ってきて…。」

まるで悲劇の王女のように両手を組んで涙をこぼす一花に、
貴族たちが見惚れているのがわかる。
誰かが聖女だ…とつぶやいたのが聞こえた。

いつもそうだった。
一花が泣いてお願いすると、それを断る私が悪者のように言われた。
私自身のことなのにもかかわらず、一花のお願いが叶ってしまう。
自分を慕ってくれている幼馴染だからとそれを許してしまっていたのは…
きっと私自身だ。

でも、もう迷わない。
私は、私だけのためにここにいる。
一花のために犠牲になることは、もうしない。

「一花、あなたは私の力を奪い続けていた。
 ずっと、私の力に寄生していた。
 この世界での魔力を取り戻した今はそのことがよくわかる。

 …私は、もう二度と一花の隣に行くことは無いわ。
 もう二度と、私の邪魔をしないで!」

「悠里!!…あきらめないわ。
 あんなに三人で仲良かったじゃない。
 この世界に来て、急にそんな風に変わってしまうなんて。
 やっぱりその男が…」

「仲良し?それは違うでしょ?」

どうしてもキリルのせいにしようとする一花の言葉をさえぎったのは、美里だった。
振り向いたら、美里とカインさんが聖女の席に戻ってきていた。

「佐鳴一花さん、お久しぶりね。
 といっても、あなたは私を覚えていないでしょうけど。」

「……誰よ、あなたなんて知らないんだけど。」

「あなたは知らないかもしれないけど、私はあなたのことを知っている。
 悠里はあなたたち二人と一緒にいたこともあるけど、
 それは悠里が望んでそうなっていたわけじゃなかった。
 いつもあなたたちがわがままを言って、悠里があきらめていただけだった。」

「嘘よ!悠里は私たちと一緒にいたかったから一緒にいたのよ。
 知らないくせにどうしてそんなひどいこと言うの?」

「ちゃんと知っているからよ。
 同じ高校なのよ、私。
 ずっと悠里から相談されていたんだもの。
 一花と律と離れたい、違う大学に行きたいって。」

「そんなわけないでしょ!
 悠里に私たち以外の友達なんていなかった。
 相談されていたなんてあるわけない!嘘つき!」


一花は有名だったからか美里も知っているけれど、一花は美里を知らないようだ。
それを知ってか、美里は私の腕に抱き着いてきた。

「何してんの!悠里から離れなさい!」

「なぜ?私と悠里は高校にいた頃からの仲良しよ?
 あなたと違って悠里に嫌われていないし。」

にっこり笑って私を見てくる美里に企みがわかった。
わざと一花に見せつけているんだと。
そして、向こうにいた時から私が一花を拒絶していたことを、
同じ世界から来た美里が知っていると話すことで、
私が洗脳されていない、ただ一花が嫌いなのだと周りにわからせるために。

「そうだよ。美里とは高校の時からの仲良し。
 ずっと相談してたし、泊りに行くくらいの友達だから。」

にっこり笑って答えると、美里も同じようににっこりと笑う。
どこからどう見ても、仲の良い友人に見えているはず。
一花とこうして腕を組んで笑いあうことなんてなかった。
だから、今こうして私が美里の腕を振りほどかないことが信じられないだろう。

「そんなはずない!悠里は私のよ!」

「えぇ…?一花のものになんてなった覚えは一度もないよ。

 向こうの世界にいた時点で、もう一花とは会いたくないって言ったよね?
 一花も律も、もう幼馴染だとしても関わりたくないって。
 私には美里がいるし、もう一花なんて必要ないから。」
 
「嘘よ!嘘でしょう!?」

私と美里の言葉が受け入れられないのか、
一花は綺麗に結われている髪をかきむしりながら泣き叫ぶ。
興奮状態で一歩ずつこちらに向かって歩き始めたのを見て、
キリルとカインさんが前に出た。

キリルが神官隊員に指示を出すよりも早く一花を騎士たちが取り押さえた。
神官隊員かと思ったが、服の色が違う。
不思議に思ったら、ダニエル王子が慌てて止めに入っている。

「おい、お前ら!なぜ近衛騎士がイチカを取り押さえる!
 そのような指示は出していないぞ!」

「指示を出したのは私です、ダニエル兄上。」

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