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57.晩餐会
カルラを呼んで湯あみをして晩餐用のドレスに着替え終えると、
もうすでにマティアス様は準備を終えていた。
私が終えるのを待っていたように使用人が呼びに来て、
マティアス様と晩餐室に向かう。
案内された場所はとても広い晩餐室だった。
大きな長テーブルに椅子がたくさん並べられている。
思ったよりも出席者が多いようだと思っていたら、
ユグドレアの国王が若い女性を八人引き連れて入ってきた。
「おや、お待たせしてしまいましたか。この子らに用意させていたら遅れたようです」
「かまわない」
「紹介させてください。私の娘たちです」
「そうか」
娘たち?この女性八人すべてがユグドレアの王女?
どの王女もとても可愛らしいけれど、少し胸を強調しすぎな気がする。
胸元が大きく開いたドレスが流行りなのかもしれないけれど、
見ているほうが恥ずかしくてたまらない。
マティアス様は気にならないのかと思ったけれど、
王女たちのほうは見ずにテーブルへと向かう。
「では、食事を始めよう」
「ああ、そうですな。では、どうぞ、こちらへ」
マティアス様の隣に座ると、向かい側に国王が座る。
だが、王女たちは私たち三人を囲むように座った。
晩餐会でこのような座り方をするのを見たことがない。
いったい国王は何を考えているのか。
食事が運ばれてきて、晩餐会が始まる。
どの皿も豪華なものでおいしいけれど、食欲がわかない。
ユグドレアの国王は酒が進んだようで、赤らんだ顔でご機嫌に笑った。
「いやぁ、帝国のおかげでわが国は助かりました!
本当に感謝しております!」
「……魔獣の大発生は放っておくわけにはいかないからな」
「ええ、ええ。皇太子殿下は素晴らしい活躍でした。
このように王宮も建て直すことができ、感謝しても足りないくらいです!」
「そうか……」
「そこで、お礼として、私の娘を好きなだけお持ち帰りいただけたらと」
「は?」
娘を持ち帰る?
見てみれば、王女たちが全員マティアス様に微笑んでいる。
何か期待しているように頬を赤らめて。
「いえね、皇帝陛下が側妃を娶らないというのは知っていますが、
こんな小さな属国の王である私ですら側妃は十五人おります。
皇太子殿下の婚約者様はお綺麗な方ではありますが、
一人では物足りない時もあるでしょう」
「そのようなことはない」
「何も娘たちを側妃にしろというわけではありません。
愛妾にしてもらっていいのです。
お好きなようにしてかまわないのですよ?」
「必要ないと言っている。側妃も愛妾もいらない。
皇太子の立場としてだけじゃなく、俺自身が求めていない」
「まぁ、そんなに固く考えずに。
皇太子殿下には本当に感謝しているのですよ。
何せ、一年半近くも王族を派遣してくださったのですから」
「王族を派遣?」
そんな話は聞いていないと思ったら、マティアス様も心当たりがないようだ。
「おや、王族の方が派遣されてきていたのを知らなかったのですか?
では、皇帝陛下が手配してくれたのでしょうか」
「……その者たちの名は?」
「ユーリイス様とクララ様です」
どちらも聞き覚えのない名だ。
だが、マティアス様はそれを聞いて考え込んでいる。
「二人は今、どこに?」
「晩餐にもお誘いしたのですが、堅苦しい席は苦手だと。
今は部屋で食事を取っているのではないですかな」
「……二人に食事が終わったら俺の部屋に来るように伝えてくれ」
「ああ、はい。わかりました。お伝えしましょう。
それで、うちの娘たちのことですけれどね」
「その件はもういい。連れて帰ることはない」
「そうですか……気が変わったらいつでも言ってください」
あきらめる気がないのか、ユグドレアの国王はにやりと笑う。
もしかして、この場には私がいるから言えないと思っているのかも。
王女たちもあきらめていないようで、マティアス様に酒を注ごうとする。
「酒もいらない。かまわないでくれ」
「そんなことおっしゃらないでください。さぁ、どうぞ」
断られても気にしないのか、王女たちはうれしそうに笑う。
マティアス様はこれ以上食事をする気がなくなったのか手を止めた。
「リンネア、もう十分食べたか?」
「はい」
「では、行くか」
まだ食事は続くと引き留められたけれど、食欲はなくなってしまっている。
マティアス様がもういいと断り、ようやく部屋を出る。
部屋の位置は覚えていたので、使用人の案内も断って部屋に戻る。
あたりに騎士がいないことを確認して小声で確認する。
「マティアス様……王族の派遣とは」
「心当たりがある。部屋に行ったら話そう」
「わかりました」
もうすでにマティアス様は準備を終えていた。
私が終えるのを待っていたように使用人が呼びに来て、
マティアス様と晩餐室に向かう。
案内された場所はとても広い晩餐室だった。
大きな長テーブルに椅子がたくさん並べられている。
思ったよりも出席者が多いようだと思っていたら、
ユグドレアの国王が若い女性を八人引き連れて入ってきた。
「おや、お待たせしてしまいましたか。この子らに用意させていたら遅れたようです」
「かまわない」
「紹介させてください。私の娘たちです」
「そうか」
娘たち?この女性八人すべてがユグドレアの王女?
どの王女もとても可愛らしいけれど、少し胸を強調しすぎな気がする。
胸元が大きく開いたドレスが流行りなのかもしれないけれど、
見ているほうが恥ずかしくてたまらない。
マティアス様は気にならないのかと思ったけれど、
王女たちのほうは見ずにテーブルへと向かう。
「では、食事を始めよう」
「ああ、そうですな。では、どうぞ、こちらへ」
マティアス様の隣に座ると、向かい側に国王が座る。
だが、王女たちは私たち三人を囲むように座った。
晩餐会でこのような座り方をするのを見たことがない。
いったい国王は何を考えているのか。
食事が運ばれてきて、晩餐会が始まる。
どの皿も豪華なものでおいしいけれど、食欲がわかない。
ユグドレアの国王は酒が進んだようで、赤らんだ顔でご機嫌に笑った。
「いやぁ、帝国のおかげでわが国は助かりました!
本当に感謝しております!」
「……魔獣の大発生は放っておくわけにはいかないからな」
「ええ、ええ。皇太子殿下は素晴らしい活躍でした。
このように王宮も建て直すことができ、感謝しても足りないくらいです!」
「そうか……」
「そこで、お礼として、私の娘を好きなだけお持ち帰りいただけたらと」
「は?」
娘を持ち帰る?
見てみれば、王女たちが全員マティアス様に微笑んでいる。
何か期待しているように頬を赤らめて。
「いえね、皇帝陛下が側妃を娶らないというのは知っていますが、
こんな小さな属国の王である私ですら側妃は十五人おります。
皇太子殿下の婚約者様はお綺麗な方ではありますが、
一人では物足りない時もあるでしょう」
「そのようなことはない」
「何も娘たちを側妃にしろというわけではありません。
愛妾にしてもらっていいのです。
お好きなようにしてかまわないのですよ?」
「必要ないと言っている。側妃も愛妾もいらない。
皇太子の立場としてだけじゃなく、俺自身が求めていない」
「まぁ、そんなに固く考えずに。
皇太子殿下には本当に感謝しているのですよ。
何せ、一年半近くも王族を派遣してくださったのですから」
「王族を派遣?」
そんな話は聞いていないと思ったら、マティアス様も心当たりがないようだ。
「おや、王族の方が派遣されてきていたのを知らなかったのですか?
では、皇帝陛下が手配してくれたのでしょうか」
「……その者たちの名は?」
「ユーリイス様とクララ様です」
どちらも聞き覚えのない名だ。
だが、マティアス様はそれを聞いて考え込んでいる。
「二人は今、どこに?」
「晩餐にもお誘いしたのですが、堅苦しい席は苦手だと。
今は部屋で食事を取っているのではないですかな」
「……二人に食事が終わったら俺の部屋に来るように伝えてくれ」
「ああ、はい。わかりました。お伝えしましょう。
それで、うちの娘たちのことですけれどね」
「その件はもういい。連れて帰ることはない」
「そうですか……気が変わったらいつでも言ってください」
あきらめる気がないのか、ユグドレアの国王はにやりと笑う。
もしかして、この場には私がいるから言えないと思っているのかも。
王女たちもあきらめていないようで、マティアス様に酒を注ごうとする。
「酒もいらない。かまわないでくれ」
「そんなことおっしゃらないでください。さぁ、どうぞ」
断られても気にしないのか、王女たちはうれしそうに笑う。
マティアス様はこれ以上食事をする気がなくなったのか手を止めた。
「リンネア、もう十分食べたか?」
「はい」
「では、行くか」
まだ食事は続くと引き留められたけれど、食欲はなくなってしまっている。
マティアス様がもういいと断り、ようやく部屋を出る。
部屋の位置は覚えていたので、使用人の案内も断って部屋に戻る。
あたりに騎士がいないことを確認して小声で確認する。
「マティアス様……王族の派遣とは」
「心当たりがある。部屋に行ったら話そう」
「わかりました」
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