もう二度と助けを求めないでください

gacchi(がっち)

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66.エルドレドの王宮

二日後、予定通りにエルドレドの王宮に車列が着くと、
迎え入れてくれたのは三公爵だった。

「よくお越しくださいました、皇太子殿下、リンネア様」

「ああ、出迎えありがとう」

バランド公爵とペルララ公爵に会うのは久しぶりだし、
オードラン公爵を継いだ叔父様がにこにこと出迎えてくれている。

そのことはうれしいけれど、
エルドレド国王やナタニエル様の姿がないのが気にかかる。

「どうしてお三方がここに?」

「実は陛下が体調を崩しているようなのです」

「まぁ、病気なのですか?」

「それが詳しいことは知らされていないのです。
 その上、ナタニエル様は結婚式の準備が終わっていないようです。
 本来なら陛下とナタニエル様がお出迎えするべきなのはわかっております。
 まことに申し訳ありません」

「いや、そういう事情ならかまわない。
 結婚式に来たのに、開けないのでは困るからな」

「寛大なお言葉ありがとうございます」

三公爵は申し訳なさそうに頭を下げるけれど、
責められるべきはナタニエル様だ。

国王が病気だというのなら、なおさらナタニエル様が出迎えるべきだった。

「部屋を案内してくれ」

「はい」

相変わらず倒れそうなほど顔色が悪い女官長に案内をしてもらうと、
そこは一番広い特別室だった。
式典などで帝国の王族を招待する時にだけ使われる客室だ。

「リンネア様の部屋はお隣にご用意いたしました」

「いや、リンネアもここでいい」

「え、ですが」

「マティアス様の言うとおりにしてちょうだい」

「わ、わかりました」

せっかく用意してもらったのに申し訳ないなとは思うけれど、
私が一人で部屋を使うのは危険すぎる。

女官長は私に用でもあるのか、ちらちらと視線を送ってくる。
私を部屋に案内する時に話そうとしていたのかもしれない。

女官長は侍女たちを部屋に置いていこうとしたけれど、
それもマティアス様に止められる。

「侍女は連れてきている。下げていい。
 俺とリンネアの世話は必要ない」

「かしこまりました」

なぜかほっとしたような女官長に、
侍女たちには聞こえないように小声で話しかける。

「この侍女たちはどこの所属なの?」

「実は……この者たちはアンジェラ様付きの侍女なのです。
 優秀な者たちをつけたいと言われて断れなかったのですが、
 おそらく何か企んでいるのだと思います」

「またアンジェラ様……」

「帝国から戻ってきて、陛下に部屋での謹慎を命じられていました。
 しばらくは部屋にこもっていましたが、最近は謹慎が解かれたようで……。
 あまり反省されていないと思います」

「やっぱり……謹慎くらいじゃ変わらないのね」

「侍女は連れて下がりますが、お気をつけください」

「ええ、わかったわ。ありがとう」

女官長は深々と礼をすると侍女たちを引き連れて出て行った。
侍女たちはあからさまに不満そうな顔をしている。
アンジェラ様に何を命じられていたのか、想像するだけで頭が痛い。

「アンジェラ様が何か企んでいたそうです」

「だろうな。だからマリアを連れてきたんだ」

「本当に連れてきて良かったですね」

エルドレドの使用人は信頼できそうになかったので、
マリアと数名の侍女を連れてきている。

マリアは侍女たちに的確な指示を出し、荷物を整理している。

王宮に着いたことで晩餐に呼ばれるかと思っていたが、
食事は特別室に届けられた。

ナタニエル様とアンジェラ様と会うのに身構えていたので、
呼ばれなかったことに肩透かしされた気になる。

「国王の病気といい、晩餐にも呼ばれないだなんて……。
 本当に結婚式ができるのでしょうか?」

「国王が指揮できない分、時間がかかっているのかもしれないな。
 結婚式が延期されるようなら、先にオードラン公爵領の視察に行ってもいいが」

「そうですね。延期されるでしょうか」

予定では三日後になっている。
今のところ延期という話はされていないが、
準備が遅れているのなら明日にでも連絡が来るかもしれない。

だが、延期の話がないまま二日が過ぎた。

結婚式は明日。こんな直前になるまで連絡がこないとは思えない。
どうやら予定通り結婚式は開かれるらしい。

その時、ドアの外で護衛していたクルスが部屋に入ってきた。

「どうした?」

「女官長がリンネア様にお願いがあると言っています。
 どういたしますか?」

「来たのは女官長だけか?」

「はい」

「どうする?話を聞くか?」

こんな時に女官長だけ来るなんて嫌な予感しかしない。
それでも女官長を拒絶すれば、困るのは女官長だろう。

「話を聞こうと思います。クルス、女官長を入れてくれる?」

「わかりました」

少しして、やつれた顔の女官長が部屋に入ってくる。

「どうかしたの?」

「あの……本当に申し訳なく」

「誰かに言われて来たのでしょう?困っているのね?」

「……はい。実は結婚式の準備が終わっておらず、
 リンネア様にナタニエル様を手伝ってほしいと……アンジェラ様が」

その言葉に思わずため息をついてしまう。
だが、言ったのはナタニエル様ではなくアンジェラ様?

「もしかして結婚式の準備が終わらないと、
 明日の結婚式は延期になるのかしら?」

「おそらく……」

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