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96.クララの行方(ダニエル)
ぎぎぎぃと古びた門が開けられていく。
数台の馬車と十数頭の馬を止めると、
騎士たちが屋敷の中に駆け込んでいく。
使用人らしき者たちが慌てているが、帝国の騎士だとわかって座り込んだ。
真っ青な顔をしている。騎士が来ることに心当たりがあるんだろう。
「銀色の髪の娘を探せ!青い目だ!」
「「「「「はっ!」」」」」
訓練された帝国の騎士たちが各部屋を探し始める。
それほど広くない離宮だ。
隠されていても今日中に見つかるだろう。
だが、日が暮れてもクララが見つかったという報告はなかった。
「どこにも見当たりません。
隠し部屋があるのかもしれません。
あるいは地下にいく通路が隠されているかもしれません」
「隠し部屋か……ないとは言えないな」
さすがにエルドレドの離宮の設計図を把握してはいない。
知らない部屋があってもおかしくはない。
「仕方ないな。会うにしてもクララを保護してからと思っていたが。
ナタニエル様の部屋に案内しろ。三人は確保してあるな?」
「はい。私室だと思われる場所にいました。確保してあります」
「わかった。案内してくれ」
めんどうなことは避けたかったが仕方ない。
案内された部屋にはナタニエル様のほかに王女と帝国の元公爵令嬢だと思われる女性がいた。
いずれも騎士たちに腕を取られ、身動きできないようになっているが、
ナタニエル様の顔を見て驚いた。
「治癒術を使われているとは思ったが、ここまでとはな」
完全にとは言えないが、ほぼ地毒の痕がわからないまでに治っていた。
ナタニエル様は俺の顔を見て口を開いた。
「お前はダニエルか!なんなんだ!こいつらは!?」
「こいつらは……」
帝国の騎士団だと告げようと思ったが、それを甲高い声が邪魔した。
「ダニエル!私を迎えに来てくれたのね!!」
「……は?」
見れば、満面の笑みでこちらに向かって来ようとしているアンジェラ王女がいた。
騎士の腕を振りほどいてしまったらしい。
こんな離宮にいるというのに、ドレスを着てしっかり化粧している。
「もう!今まで何していたのよ!遅いわ!
ずっと待っていたんだから!
……でも、許してあげる。早くここから連れ出しなさい!」
「……そいつの口をふさいでおけ」
「何を言っているの?ダニエ……んん!?」
一応は女性だからか遠慮していたらしい騎士が、
今度は逃がさないという意思を感じるほど強く腕をひいて、口の周りに布を巻きつけている。
抵抗しようとしたが、縄で身体を縛られて動けなくされる。これで静かになるだろう。
本当にアンジェラ王女に会うと気が滅入る。
世間的には美しい王女だと言われていたが、
腐った性格がにじみ出ている表情を美しいとは思えなかった。
床の上で転げることもできず、目だけで怒りを伝えてくる王女に、
これを見れただけでもここにきて良かったかもしれないと思う。
そんなことに気を取られていたら、ナタニエル様が何度も俺を呼んでいたようだ。
「おい!いったい、どういうことなんだ、ダニエル!」
「ああ、こっちもうるさいな」
「なんだと!?」
「ナタニエル様、いや、ナタニエル。
今はもう王族ではないのを理解していないのか?」
「っ!」
悔しそうな顔をするが、すぐに気を取り直したようでにやりと笑う。
「俺は王太子に戻る!地毒が治れば王族を抜ける理由はない!」
「まだそんな馬鹿なことを言っているのか。
お前が王族を抜けたのは地毒にかかったからではない。
地毒にかかった前王を監禁し見殺しにしたせいだ」
「それは……結婚式を優先したのは仕方ないだろう。
俺だって父上が死ぬなんて思わなかったんだ!」
「そんなことはどうでもいい。
お前たち、ここにクララを連れてきただろう。
クララはどこにいるんだ」
「クララ?」
その時、部屋の奥から声がした。
「……助けて!私はここよ!」
「…………は?」
這い上がるようにして立ち上がった姿を見ても、すぐには理解できなかった。
「私を助けに来てくれたんでしょう!?」
「お前は誰だ」
「私よ!ユーリイスの娘クララ!」
「……本当にクララなのか?」
「そいつらのせいでこんな姿になったのよ!
一日に何度も何度も無理やり治癒術を使わせるから!!」
クララだというその者は女性なのかわからないほど老いていた。
かろうじて残っている髪も白髪交じりになっていて、銀髪には見えない。
騎士たちが探しても見つからないはずだ。
俺は銀色の髪の娘を探せと言った。
「そこまで治癒術を使った結果がこれか」
「ああ、よく治っているだろう」
誇らしげなナタニエルはわかっていない。
ただ治癒術を使える平民をさらってきたとでも思っている。
「ねぇ!こいつらを捕まえて処罰させてよ!」
「処罰?何の罪で?」
「こいつら、私を無理やりここに連れてきて、
治癒術を使わなかったら殺すって言ったのよ!!」
「そう、それがどんな罪になるんだ?」
数台の馬車と十数頭の馬を止めると、
騎士たちが屋敷の中に駆け込んでいく。
使用人らしき者たちが慌てているが、帝国の騎士だとわかって座り込んだ。
真っ青な顔をしている。騎士が来ることに心当たりがあるんだろう。
「銀色の髪の娘を探せ!青い目だ!」
「「「「「はっ!」」」」」
訓練された帝国の騎士たちが各部屋を探し始める。
それほど広くない離宮だ。
隠されていても今日中に見つかるだろう。
だが、日が暮れてもクララが見つかったという報告はなかった。
「どこにも見当たりません。
隠し部屋があるのかもしれません。
あるいは地下にいく通路が隠されているかもしれません」
「隠し部屋か……ないとは言えないな」
さすがにエルドレドの離宮の設計図を把握してはいない。
知らない部屋があってもおかしくはない。
「仕方ないな。会うにしてもクララを保護してからと思っていたが。
ナタニエル様の部屋に案内しろ。三人は確保してあるな?」
「はい。私室だと思われる場所にいました。確保してあります」
「わかった。案内してくれ」
めんどうなことは避けたかったが仕方ない。
案内された部屋にはナタニエル様のほかに王女と帝国の元公爵令嬢だと思われる女性がいた。
いずれも騎士たちに腕を取られ、身動きできないようになっているが、
ナタニエル様の顔を見て驚いた。
「治癒術を使われているとは思ったが、ここまでとはな」
完全にとは言えないが、ほぼ地毒の痕がわからないまでに治っていた。
ナタニエル様は俺の顔を見て口を開いた。
「お前はダニエルか!なんなんだ!こいつらは!?」
「こいつらは……」
帝国の騎士団だと告げようと思ったが、それを甲高い声が邪魔した。
「ダニエル!私を迎えに来てくれたのね!!」
「……は?」
見れば、満面の笑みでこちらに向かって来ようとしているアンジェラ王女がいた。
騎士の腕を振りほどいてしまったらしい。
こんな離宮にいるというのに、ドレスを着てしっかり化粧している。
「もう!今まで何していたのよ!遅いわ!
ずっと待っていたんだから!
……でも、許してあげる。早くここから連れ出しなさい!」
「……そいつの口をふさいでおけ」
「何を言っているの?ダニエ……んん!?」
一応は女性だからか遠慮していたらしい騎士が、
今度は逃がさないという意思を感じるほど強く腕をひいて、口の周りに布を巻きつけている。
抵抗しようとしたが、縄で身体を縛られて動けなくされる。これで静かになるだろう。
本当にアンジェラ王女に会うと気が滅入る。
世間的には美しい王女だと言われていたが、
腐った性格がにじみ出ている表情を美しいとは思えなかった。
床の上で転げることもできず、目だけで怒りを伝えてくる王女に、
これを見れただけでもここにきて良かったかもしれないと思う。
そんなことに気を取られていたら、ナタニエル様が何度も俺を呼んでいたようだ。
「おい!いったい、どういうことなんだ、ダニエル!」
「ああ、こっちもうるさいな」
「なんだと!?」
「ナタニエル様、いや、ナタニエル。
今はもう王族ではないのを理解していないのか?」
「っ!」
悔しそうな顔をするが、すぐに気を取り直したようでにやりと笑う。
「俺は王太子に戻る!地毒が治れば王族を抜ける理由はない!」
「まだそんな馬鹿なことを言っているのか。
お前が王族を抜けたのは地毒にかかったからではない。
地毒にかかった前王を監禁し見殺しにしたせいだ」
「それは……結婚式を優先したのは仕方ないだろう。
俺だって父上が死ぬなんて思わなかったんだ!」
「そんなことはどうでもいい。
お前たち、ここにクララを連れてきただろう。
クララはどこにいるんだ」
「クララ?」
その時、部屋の奥から声がした。
「……助けて!私はここよ!」
「…………は?」
這い上がるようにして立ち上がった姿を見ても、すぐには理解できなかった。
「私を助けに来てくれたんでしょう!?」
「お前は誰だ」
「私よ!ユーリイスの娘クララ!」
「……本当にクララなのか?」
「そいつらのせいでこんな姿になったのよ!
一日に何度も何度も無理やり治癒術を使わせるから!!」
クララだというその者は女性なのかわからないほど老いていた。
かろうじて残っている髪も白髪交じりになっていて、銀髪には見えない。
騎士たちが探しても見つからないはずだ。
俺は銀色の髪の娘を探せと言った。
「そこまで治癒術を使った結果がこれか」
「ああ、よく治っているだろう」
誇らしげなナタニエルはわかっていない。
ただ治癒術を使える平民をさらってきたとでも思っている。
「ねぇ!こいつらを捕まえて処罰させてよ!」
「処罰?何の罪で?」
「こいつら、私を無理やりここに連れてきて、
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「そう、それがどんな罪になるんだ?」
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