押しかけ家政夫ヤンデレさん

名乃坂

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「おかえりなさいませ」
いつも通り家に帰ると、知らない男が家にいる。そいつは私の下着を握っている。
どう考えても変質者だ。
「きゃーーー!出てってください!警察呼びますよ!」
思わず鞄で相手に殴りかかる。相手は困った顔で避けながら、必死に私に訴えかけてくる。
「落ち着いてください!私は家政夫です!あなたの妹さんからのご依頼で、ここに派遣されてきました!」
「妹…?家政夫…?」
私は相手に殴りかかる手を止める。
妹…?ああ…妹ならやりかねないかも…。あの子はサプライズが大好きだから。大方今流行りのドラマの影響だろう。
何だ、そういうことか。
「あー、何となく分かりました。じゃあ、家政夫さんなら名刺見せていただけませんか?一応判断材料が欲しいです」
「はい、かしこまりました。私はこういう者です」
相手の名刺を見て、書いてある会社名を検索する。どうやら実在する会社のようだ。
「実在する会社さんなんですね。あとは妹に確認させてください。疑ってるみたいですみませんが、私も一応不安なので」
妹に電話をかけるものの、繋がらない。
確認は取りたかったけど、普段からあんまりケータイを見てくれないタイプだ。こんなサプライズをしておいて電話に出ないのは困るけど、妹はかなりの自由人だから仕方ない。
落ち着いて部屋を見渡すと、私の部屋は見違えるほどに綺麗になっている。完全にプロの仕事だ。ここまで来たらわざわざ疑う必要もないだろう。
「はぁ…。妹に確認は取れませんでしたけど、仕事ぶり的にも本当に家政夫さんなんでしょうね」
私がそう言うと、彼は目を輝かせる。
「仕事ぶりで判断していただけるなんて、誠に光栄です…!あの、お夕飯も作らせていただきましたので、よろしければ召し上がってください!」
「あー…はい…。お願いします…」
とりあえず今日は帰ってもらって日を改めてもらおうかと思ったけど、相手があまりにも嬉しそうだから断りづらい。
思えば一人暮らしを始めてから、まともなご飯なんて食べてこなかったから、家政夫が作る料理とやらも気にはなる。
「こちらです」
食卓には大量の御馳走が並ぶ。今流行りのバタフライピーもあって、すごく映える食事だ。
「美味しそうですね…」
「お褒めいただき、大変光栄です」
とりあえず帰って欲しい気持ちはあったけど、料理の感想が聞きたいのか、彼は目をキラキラ輝かせてこちらを見つめてくるから、なかなか「帰って」とは言えない。
仕方なく、彼に見られたまま食事を始める。
「いかがですか?」
「すごく美味しいです」
味は本当に美味しい。バタフライピーも初めて飲んだけど、美味しい気がする。ハーブティーには疎いから、自分の味覚に自信はないけど。

あれ…?何だか眠くなってきた…。
視界がぼやける。身体がぐらつく私を、彼が心配そうに支えようとする。
そこで、私の意識は途絶えた。

再び目を覚ます。どうやら自分は知らない部屋にいるようだ。目の前には、先ほど家政夫を名乗っていた男がいる。
「ここ…どこ…?」
怯える私に対して、彼は嬉しそうに答える。
「ここはね、僕達の愛の巣だよ」
彼は先程とは打って変わってフランクな口調で話す。
「愛の巣…?何言ってるんですか…?」
彼は愛おしそうに私の頬を撫でる。
「知らない男が出した物、食べちゃダメでしょ?僕じゃなかったら危なかったよ?」
そのまま私を抱きしめる。跳ね除けようとするけど、どうやら手足が拘束されているらしく、逃げられない。
「名刺なんて簡単に偽装できるのに、何で信じちゃうかなぁ?それに、妹さんは今入院してるから、電話に出るわけないよ?妹さんともっと連絡取りなよ。大切な家族でしょ?そもそもさ、君は前に鍵を失くしたくせに、何で取り替えなかったの?僕以外に拾われたらどうするつもりだったの?前から思ってたけど、君って色々と抜けてるよね」
頭が混乱する。彼は何を言っているの?彼は一体何者なの?
「やっぱり僕のこと、覚えてないんだね…」
彼は悲しそうな顔で続ける。
「五年前にさ、教養の授業のグループワークのために、何度か一緒に集まって作業したよね?僕、あの時に君のこと好きになっちゃってさ、発表の後、君に毎日何百通もメッセを送って、何十回も電話をかけたのに、君はずっと無視してたよね?一年続けたのに一回も出てくれなかったけど、もしかしてブロックしてた?」
思い出した。こいつは大学時代に、私に何度もしつこく連絡をしてきた男だ。怖くてすぐにブロックしたから、そんなに長い期間執着されていたなんて思いもしなかった。
「君のSNSは特定してたから、簡単に君の情報が手に入って良かったよ。ちょっとネットリテラシーが低すぎるんじゃない?家の近くで撮った写真載せ過ぎ…。そういうの、危ないからダメだよ?」
まるで子供に言い聞かせるかのような口調だ。
「何で僕のこと忘れちゃったのかな…?君が授業を受けてる時とか、君が買い物をしてる時とか、いつも見守ってあげてたのに…。僕の顔を覚えてさえいれば、僕に騙されてここに連れてこられずに済んだかもしれないのにね…。君が悪いんだよ?ほら、ごめんなさいは?」
「ごめんなさい…っ…。反省してます…っ…。だから…っ…家に帰してください…」
彼の顔が怖くて、ここから逃げたくて、反射的に謝る。
「悪いと思ってるなら、ちゃんと僕の物になってよ。何帰ろうとしてるの?僕の気持ちを踏みにじっておきながら、自分はのうのうと僕のことを忘れて生きてたくせに…」
彼は私の服を脱がせて、私の全身にキスをする。
「僕が作ったご飯、美味しいって言ってくれたよね?これから毎日、快適な部屋で、美味しいご飯を食べさせてあげる。生活力が低い君にとっても、悪い話じゃないでしょ?」
「や…っ…。いや…っ…」
「君って危なっかしいからさ、僕がこの部屋で、ずっと君のこと、守ってあげる」
彼は優しい手つきで私の頭を撫でる。
「君は今まで、いくつも過ちを犯してきたけど、僕は優しいから全部許してあげる。やっばり、過去よりも未来が大切だよね?」
「やだ…っ…。だれか…たすけ…っ…」
私の叫び声は彼のキスで塞がれる。激しいキスをされて、少し酸欠気味になったところで、彼はやっとキスをやめてくれる。
「大好きだよ…。これからずーっと、ここで君のこと、いっぱい愛してあげるから、君も僕のことを愛してね…?一生離してあげないから…」
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