別れのさしすせそ

名乃坂

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本編

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「さよなら」
「幸せを楽して得たくて今まで貴方と一緒にいたけど…」
「好きな人ができたの」
「セフレがいるままなんてあの人に不誠実だから、この関係を清算させてほしい」
「その方がお互いにとっても良いと思うんだ」
彼女は俺にそう告げた。その言葉を聞いた瞬間、俺は目の前が真っ暗になるような気がした。

彼女とは、セフレの関係を続けて数年だ。お互いに酔った勢いでセックスしてしまったことがきっかけだったけど、一緒にいて心地が良かったから、そのまま関係を続けていたのだ。
彼女は俺と一緒にいると、一時的に寂しさを忘れて、幸せを感じられるらしい。そういう風に言われるのは、俺も気分が良かった。
俺は彼女と接していくうちに、だんだん彼女を一人の女性として、一人の人間として好ましく思うようになっていった。身体の繋がりだけじゃなくて、心の繋がりも欲しくなって、お互いの身の上話とか、好きなものの話もするようになった。
お互い恋人ができる気配もなかったから、「30になってもどっちも恋人ができなかったら結婚しようね」なんて冗談も言い合ってた。
だから、彼女と別れる日が来るなんて今まで考えたこともなかった。

彼女に別れを告げられたその場では何とか平静を保った。だが、家に帰ると、負の感情で胸がいっぱいになった。

あんなに一緒にいたのに。
俺は彼女のことを何でも知っているのに。
ぽっと出の奴に彼女を奪われた。
どうして彼女に、「好きだ。セフレじゃなくて恋人になってほしい」と素直に言えなかったのか。

やるせなさと後悔が一度に押し寄せてきて、吐きそうになった。言葉にしない感情は、存在しないものと一緒だ。彼女には俺の本当の気持ちなんて1mmも伝わっていなかったのだ。

彼女に気持ちを伝えなきゃ。
そう思って俺は彼女にLINEを送った。直接会って話がしたかったから、「俺の部屋にある私物を持ち帰ってほしい」と。

彼女は大きなカバンを持って俺の家にやってきた。
そうだよな。俺の家には彼女の物がいっぱいあるから、それくらい大きなカバンじゃないと入りっこないよな。

荷物をカバンに詰める彼女を見ていると、胸がいっぱいになった。

今日も彼女は綺麗だな。
この部屋から彼女の痕跡が全てなくなってしまうのか。
今動かなきゃ、彼女とはこれで永遠の別れになるんだよな。
俺の本当の気持ちを伝えなきゃ。

今まで胸に秘めていた感情は、思いの外すらすらと出た。そっか、気持ちを言葉にするのってこんなに簡単なことだったのか。

「さよならって言われたけどさ、その言葉、取り消してくれない?」
「幸せだったでしょ、今までも十分。なら別にこのままでもいいじゃん」
「好きだよ。本気で好き」
「セフレなんてって思ってるかもしれないけど、ずっと一緒にいたことに変わりないだろ?全てなかったことにするなんて許さない」
「そばにいてよずっと」
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