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無感情な女の子
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レミさんの部屋に着いたので、扉をノックする。紫色の扉だった。
「何?誰?」
ガチャリ、と扉が開き、端的な言葉を発する女の子が出てきた。
「あ、えっと、私はすみれ。今日からここに住むの。よろしくね。」
私が挨拶をすると、彼女は表情を変えず、
「で?」
と、聞き返してきた。
「えと、隣の部屋に住むから、挨拶に来たの。」
私が言うと、レミさんは少し怒ったようだった。
「なんで?なんであなたがあの部屋に!?」
私は驚きながら、ただ言われた場所に来ただけだと伝えた。すると、レミさんはまた無表情に戻った。何も話さない。沈黙が訪れる。私は居た堪れなくなり、自分の部屋に帰ることにした。
「じゃ、じゃあ私は戻るから。またね。」
「そう。さよなら。」
全く私には興味がない様子だ。レミさんが隠したのが気になって、私は机の上を覗き込んだ。そこには。大学の参考書があった。レミさんは、私と同い年、つまり中学一年生だと聞いている。レミさんは一体何者?え?見た目は子供、中身は大人、的な?思わずじっと見ていると、
「何してるの?」
レミさんに聞かれてしまった。
「い、いや、別に。じゃあね。」
私はレミさんの部屋を後にした。レミさん、なんか大変そうな子だな。しばらく私は自室で休むことにした。
「すみれちゃーん?」
私を呼ぶ声。はっとなって時計を見やる。もう7時になっていた。いつの間にか眠ってしまったようだった。
「はーい!」
返事をしてリビングに降りていく。私がリビングに着くと、由奈さんもルナちゃんも既にいた。レミさんは来ていないようだった。
「お姉ちゃんは一緒には食べないの。」
ルナちゃんが寂しそうに言った。なんで、と聞きたかったが、今日のレミさんの様子を思い出し、代わりに
「そっか。残念。」
と返した。実際、確かに残念だった。
「さあ、食べましょう。今日はオムライスよ。」
由奈さんが私たちに声をかけた。
「いただきます。」
みんなで挨拶をして食べ始め、私は思わず頬を緩めた。
「おいしい!」
ふわとろの卵によく合うチキンライス。それはもう美味しいとしか言いようがなかった。
「本当?よかったぁ。」
由奈さんがふんわりと、私に微笑んだ。私も笑い返す。ルナちゃんは、ニコニコと私たちを見ていた。ーーそして、私は思い出す。
「本当に、美味しいです。」
気付けば、ポロポロとな涙が溢れて、ほおを伝っていた。
「ど、どうしたの?」
由奈さんとルナちゃんが、心配そうに私を見つめた。家族がこの世をさってから枯れていたはずの涙がどんどん溢れて流れていく。この料理は、お母さんの料理にそっくりだった。特別な時しか作ってくれなかった、私が大好きなオムライス。思い出が蘇り、涙となって溢れ出した。このオムライスは、お母さんがレストランで働いていた時に教わったらしい。オムライスが出てきたら、お姉ちゃんも、お父さんも、みんな喜んだ。運動会やピアノの発表会の後は、必ずオムライスをねだった。一度、すっごく大きなオムライスを作ってくれたことがあった。4人で分け合ったっけ。思い出はたくさんあった。でも、もう増えないんだ。もっと、もっと欲しかった。いくらでも、欲しかった。息が苦しい。涙が止まらなかった。そんな時。暖かさを感じた。由奈さんが、私を包み込んでいた。
「うぅ…」
嗚咽を漏らし泣きじゃくる私を、由奈さんはずっと抱きしめ続けていたー
「何?誰?」
ガチャリ、と扉が開き、端的な言葉を発する女の子が出てきた。
「あ、えっと、私はすみれ。今日からここに住むの。よろしくね。」
私が挨拶をすると、彼女は表情を変えず、
「で?」
と、聞き返してきた。
「えと、隣の部屋に住むから、挨拶に来たの。」
私が言うと、レミさんは少し怒ったようだった。
「なんで?なんであなたがあの部屋に!?」
私は驚きながら、ただ言われた場所に来ただけだと伝えた。すると、レミさんはまた無表情に戻った。何も話さない。沈黙が訪れる。私は居た堪れなくなり、自分の部屋に帰ることにした。
「じゃ、じゃあ私は戻るから。またね。」
「そう。さよなら。」
全く私には興味がない様子だ。レミさんが隠したのが気になって、私は机の上を覗き込んだ。そこには。大学の参考書があった。レミさんは、私と同い年、つまり中学一年生だと聞いている。レミさんは一体何者?え?見た目は子供、中身は大人、的な?思わずじっと見ていると、
「何してるの?」
レミさんに聞かれてしまった。
「い、いや、別に。じゃあね。」
私はレミさんの部屋を後にした。レミさん、なんか大変そうな子だな。しばらく私は自室で休むことにした。
「すみれちゃーん?」
私を呼ぶ声。はっとなって時計を見やる。もう7時になっていた。いつの間にか眠ってしまったようだった。
「はーい!」
返事をしてリビングに降りていく。私がリビングに着くと、由奈さんもルナちゃんも既にいた。レミさんは来ていないようだった。
「お姉ちゃんは一緒には食べないの。」
ルナちゃんが寂しそうに言った。なんで、と聞きたかったが、今日のレミさんの様子を思い出し、代わりに
「そっか。残念。」
と返した。実際、確かに残念だった。
「さあ、食べましょう。今日はオムライスよ。」
由奈さんが私たちに声をかけた。
「いただきます。」
みんなで挨拶をして食べ始め、私は思わず頬を緩めた。
「おいしい!」
ふわとろの卵によく合うチキンライス。それはもう美味しいとしか言いようがなかった。
「本当?よかったぁ。」
由奈さんがふんわりと、私に微笑んだ。私も笑い返す。ルナちゃんは、ニコニコと私たちを見ていた。ーーそして、私は思い出す。
「本当に、美味しいです。」
気付けば、ポロポロとな涙が溢れて、ほおを伝っていた。
「ど、どうしたの?」
由奈さんとルナちゃんが、心配そうに私を見つめた。家族がこの世をさってから枯れていたはずの涙がどんどん溢れて流れていく。この料理は、お母さんの料理にそっくりだった。特別な時しか作ってくれなかった、私が大好きなオムライス。思い出が蘇り、涙となって溢れ出した。このオムライスは、お母さんがレストランで働いていた時に教わったらしい。オムライスが出てきたら、お姉ちゃんも、お父さんも、みんな喜んだ。運動会やピアノの発表会の後は、必ずオムライスをねだった。一度、すっごく大きなオムライスを作ってくれたことがあった。4人で分け合ったっけ。思い出はたくさんあった。でも、もう増えないんだ。もっと、もっと欲しかった。いくらでも、欲しかった。息が苦しい。涙が止まらなかった。そんな時。暖かさを感じた。由奈さんが、私を包み込んでいた。
「うぅ…」
嗚咽を漏らし泣きじゃくる私を、由奈さんはずっと抱きしめ続けていたー
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