家族

葉月さん

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レミ

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「んー…」
朝になり、ベッドから起き上がる。もう熱はすっかり引いたようだ。のんびりとした時間が流れていく。今日は何をしよう。レミとおしゃべりしようかな。ルナちゃんと遊ぶのもありだな。そんな呑気なことを考えていたら。

「すみれちゃん!!!」
激しく鳴り響くノックの音。驚いてドアを開けると、そこには真っ青な顔のルナちゃんがいた。尋常じゃないほどの汗をかいている。普通じゃない状況だということは、すぐに理解できた。
「どうしたの!?」
私が聞くと、ルナちゃんは、無言でスマホを私の眼前に突きつけた。そこには、レミのメッセージが映し出されていた。

『ルナ、ごめんね。私、もう生きていたくない』
それは、遺書にしてはあまりにも短すぎる文章だった。でも、そこには明確な意思がこもっていて、私は息を忘れた。
「ど、どうしよう、どうすれば…」
ルナちゃんは完全にパニック状態だ。正常な思考ができているようには思えない。涙目の彼女を横目に、私はメッセージが送られてきた時間を見る。
「3分前…」
まだきっと、間に合う。私は部屋を飛び出した。隣のレミの部屋の扉を叩く。何も返事はなかった。最悪の事態を想定しながら、私は扉を開ける。鍵はかかっていなかった。…しかし。

「いない…!」
そこに、レミはいなかった。私は、レミの部屋から出て、必死に考えをめぐらせる。レミが、最後に選ぶ場所。心に引っかかった場所があった。それは、レミとよく喋った場所。彼女はそこがお気に入りだといっていた。…この家にある、小さな屋上。私はとにかく走った。息が切れる。疲れも気にせずただひたすらに走った。…そして。

「…レミ?」
そこに。彼女はいた。風が、彼女の髪を靡かせた。
「どうして…貴方が」
「ルナちゃんに教えてもらった」
私はレミに歩み寄る。
「近づかないで!!」
レミが大声で叫ぶ。どうしようもなく、私は立ち止まった。
「どうして?なんで死にたいの?」
「芹那に、会いたいの」
レミは遠くを見つめた。

「それにね、あの、手紙の中のメモ。どうして?どうして、咲夜は生きているの?咲夜のせいで、芹奈は死んだのに」
レミは、メモの存在を知っていたのだ。そこで咲夜さんに向けられた感情は怒り、そして恨みだった。
「もう生きていたくないの。こんな世界」
虚な目をしたレミが、笑みを浮かべた。あまりにも痛々しい、全てを諦め切ったような笑み。

…その時、背後から、人が現れた。ルナちゃん、そしてもう1人、咲夜さんだった
「…!」
レミの顔から笑みが消えた。驚いたような顔をして、徐々に怒りに満ちた顔になった。。そして、落ち着いて、冷静な顔になった。
「…咲夜」
「…」
咲夜さんは何も言わず、困ったように笑った。そして、首を横に振った。
「私は、咲夜ではありません」
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