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神様。靴でもなんでも舐めます。だからもう一度人生をやり直させて下さい!!
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私は暗い空間の中にいた。
そして、私の前には機械を弄っている男がいた。
「あの……」
私が尋ねる。
彼はビールを片手に飲み、ちらっ、と私の方を向く。
「…………………あぁ、いたの」
「いたの、って!?私、王女なのよ!なんで気がつかないの!?」
その男は目の下にクマを濃くし、艶の悪い黒髪はボサボサ。ボロボロの白Tシャツに、黒のズボン。髭を生やし、おしゃれでもなんでもない丸メガネ。
「……ま、こっち来なよ」
「……な、そんな口の利き方ないでしょ!」
初対面でもそんな態度は無いだろう。
私は王女というのに。
「……全く変わったもんだ。奴隷の道を辿らせといて正解だったな」
「な……!まさかあなたって……」
背筋が凍る。
姿に似合わない彼の正体。
「自己紹介が送れた。僕は神。それ以上の名前はない」
やはり、と言うべきか。
私はあの日、リューに殺されて死んだ。
死んでもなお、こうして生きてるコト自体オカシイことである。
「ま、初見じゃ分からないか。世の中で言う神様っていったら背が高くて、カッコよくて、とにかく男の理想のような像を持った男のコトを表すからな。誰も僕を見たことがないクセに」
彼は私を睨む。
寒くもないのに手や足が震え、歯が悴む。
「僕にも下僕はいるけど、それでも世界にいる一人一人の全世界の人間をこの『パソコン』っていう機械で管理せねばいけないからな。とにかく超ブラックなワケ。だからこんなに見た目が汚い」
神は目を瞑り、頭をかいて、こう問いただす。
「……で、なんだっけ?あ、そうそう。本当なら僕の下僕がここでお前の魂をちぎってサヨナラするんだけど。今日は機嫌が良いからな。特別に『異世界転移』させてやろう」
背中をポリポリと掻き、目をそっと開ける。
「で。僕が管理してる世界は全部で8個あるんだけど。どれがいい?って聞いても、答えれるワケないから。僕が決めるね」
ただ、神が一方的に喋るだけで私に話の主導権は渡さない。
「君がいたビサルテ王国とお金の通貨と言語が一緒の国があるんだけど。そこ、僕のお気に入りでもあってね。例えばこのビール。これはこの世界の今から君がいく国で作られたんだけど、まぁ、とにかく美味しくて。味も濃厚で、素晴らしいんだ」
ビールを語り始めた彼の口は先程よりも一オクターブほど声の高さが上がった。
よほど好きなのだろうか。
「…………おっと、本題からズレてしまったね。で、興味ある?」
私は口をパクパクと動かして、喋ることができない。だから、私は顔を縦にブンブン、と『Yes』の意味を込めて振る。
「……じゃあ、決まり、と言いたいところだが。僕は確かに奴隷の運命を辿らせたのは事実だ。だがしかし、浮気グセの性格は僕が辿らせたワケでは無い。つまりお前の本能のまま、不倫をしたワケだ。僕はその部分がどうも気に入らなくてね。こういう運命に辿らせたんだ」
『こういう運命』とはリューによる殺人のコトを指しているのだろう。
「あの世界に転移したキミも見てみたい。だけど、これは個人の感想なのだが、僕はキミが嫌いだ。だから、その世界で自由に生きてもらって構わないが、僕が不快だと思った行動をとった瞬間、お前を死ぬ運命へと辿らせる」
そこには嘘偽りない強い想いが込められているようで。だから私は息を飲み、一つ大きく頷く。
「……しかし、まだ君を転移させようなんて、申し込んですらいない。というか、むしろそっちの思いの方が強い。別にこれから下僕に頼んで魂をちぎってもらっても良いんだけど」
私は目を大きくし、重い足をへばりつかせながら、膝をつく。
「……ど、どうか、神様……わ、わわ私を転移させてく……ださ……い。……靴……でも……なんでも……舐め……ますか……ら。だ……から、も……う一度……人生……をやり……直さ……せて……下さい!!」
すると、神は初めて口角を上げ、にやり、と笑う。
「……ククッ。『靴でもなんでも舐める』って、奴隷の血はちゃんと通ってるんだな!」
今にも吹き出しそうな表情で笑い声を堪えながら、鼻穴を大きくあける。
「いいだろう、お前を転移させてやる。場所は地球という星にある日本という国だ。西暦2015年1月1日首都東京のとあるアパートに飛ばす。……ただなぁ、この国で暮らすにはたくさんのルールがあってな、今からそれを教えてやる」
こうして、流されるまま、神が私に説明を開始した。
お金のこと。料理のこと。文化のこと。汽車いえ、電車の乗り方。日本以外の国について などなど。
後は神様の存在についてや前にいた世界のことを日本にいる人間に話さないこと。これを破った瞬間、存在が抹消されるらしい。
「……以上だ。ま、超重要事項はペラッペラの紙に書いておく。アパートの床に転がってると思うから、また見とけ」
余談だが、ビサルテ王国の建国者は日本からの転生者で、言語はその人が伝えたらしい。
で、その人のポケットに入っていた財布に500円玉、100円玉、50円玉、10円玉、5円玉、1円玉の全ての小銭が入っていて、それを参考にしながら、我が国のお金ができたらしい。
あと、日本に行けば『紙幣』?というものが手に入るらしく、1000円、2000円、5000円、10000円が紙になって、お金として使えるそうだ。ビサルテ王国民の金持ちは皆500円玉を大量に持ち歩いてたことを思い出し、何故誰もそのようなモノを作ろうと提案しなかったのか、不思議で仕方がない。
我々は相当な馬鹿の集まりだったのかもしれない、とたった今気付かされた。
「あの、神様。あり、がとうございます」
「いいってことよ、じゃ、転移開始」
すると、ウエスタンは一瞬にしてこの場から消えた。
また、あの果てもない静かな時間が流れ始める。
「まったく、人間とはどうして権力を持った瞬間、どいつもこいつも、オカしくなるんだろうねぇ」
そして、私の前には機械を弄っている男がいた。
「あの……」
私が尋ねる。
彼はビールを片手に飲み、ちらっ、と私の方を向く。
「…………………あぁ、いたの」
「いたの、って!?私、王女なのよ!なんで気がつかないの!?」
その男は目の下にクマを濃くし、艶の悪い黒髪はボサボサ。ボロボロの白Tシャツに、黒のズボン。髭を生やし、おしゃれでもなんでもない丸メガネ。
「……ま、こっち来なよ」
「……な、そんな口の利き方ないでしょ!」
初対面でもそんな態度は無いだろう。
私は王女というのに。
「……全く変わったもんだ。奴隷の道を辿らせといて正解だったな」
「な……!まさかあなたって……」
背筋が凍る。
姿に似合わない彼の正体。
「自己紹介が送れた。僕は神。それ以上の名前はない」
やはり、と言うべきか。
私はあの日、リューに殺されて死んだ。
死んでもなお、こうして生きてるコト自体オカシイことである。
「ま、初見じゃ分からないか。世の中で言う神様っていったら背が高くて、カッコよくて、とにかく男の理想のような像を持った男のコトを表すからな。誰も僕を見たことがないクセに」
彼は私を睨む。
寒くもないのに手や足が震え、歯が悴む。
「僕にも下僕はいるけど、それでも世界にいる一人一人の全世界の人間をこの『パソコン』っていう機械で管理せねばいけないからな。とにかく超ブラックなワケ。だからこんなに見た目が汚い」
神は目を瞑り、頭をかいて、こう問いただす。
「……で、なんだっけ?あ、そうそう。本当なら僕の下僕がここでお前の魂をちぎってサヨナラするんだけど。今日は機嫌が良いからな。特別に『異世界転移』させてやろう」
背中をポリポリと掻き、目をそっと開ける。
「で。僕が管理してる世界は全部で8個あるんだけど。どれがいい?って聞いても、答えれるワケないから。僕が決めるね」
ただ、神が一方的に喋るだけで私に話の主導権は渡さない。
「君がいたビサルテ王国とお金の通貨と言語が一緒の国があるんだけど。そこ、僕のお気に入りでもあってね。例えばこのビール。これはこの世界の今から君がいく国で作られたんだけど、まぁ、とにかく美味しくて。味も濃厚で、素晴らしいんだ」
ビールを語り始めた彼の口は先程よりも一オクターブほど声の高さが上がった。
よほど好きなのだろうか。
「…………おっと、本題からズレてしまったね。で、興味ある?」
私は口をパクパクと動かして、喋ることができない。だから、私は顔を縦にブンブン、と『Yes』の意味を込めて振る。
「……じゃあ、決まり、と言いたいところだが。僕は確かに奴隷の運命を辿らせたのは事実だ。だがしかし、浮気グセの性格は僕が辿らせたワケでは無い。つまりお前の本能のまま、不倫をしたワケだ。僕はその部分がどうも気に入らなくてね。こういう運命に辿らせたんだ」
『こういう運命』とはリューによる殺人のコトを指しているのだろう。
「あの世界に転移したキミも見てみたい。だけど、これは個人の感想なのだが、僕はキミが嫌いだ。だから、その世界で自由に生きてもらって構わないが、僕が不快だと思った行動をとった瞬間、お前を死ぬ運命へと辿らせる」
そこには嘘偽りない強い想いが込められているようで。だから私は息を飲み、一つ大きく頷く。
「……しかし、まだ君を転移させようなんて、申し込んですらいない。というか、むしろそっちの思いの方が強い。別にこれから下僕に頼んで魂をちぎってもらっても良いんだけど」
私は目を大きくし、重い足をへばりつかせながら、膝をつく。
「……ど、どうか、神様……わ、わわ私を転移させてく……ださ……い。……靴……でも……なんでも……舐め……ますか……ら。だ……から、も……う一度……人生……をやり……直さ……せて……下さい!!」
すると、神は初めて口角を上げ、にやり、と笑う。
「……ククッ。『靴でもなんでも舐める』って、奴隷の血はちゃんと通ってるんだな!」
今にも吹き出しそうな表情で笑い声を堪えながら、鼻穴を大きくあける。
「いいだろう、お前を転移させてやる。場所は地球という星にある日本という国だ。西暦2015年1月1日首都東京のとあるアパートに飛ばす。……ただなぁ、この国で暮らすにはたくさんのルールがあってな、今からそれを教えてやる」
こうして、流されるまま、神が私に説明を開始した。
お金のこと。料理のこと。文化のこと。汽車いえ、電車の乗り方。日本以外の国について などなど。
後は神様の存在についてや前にいた世界のことを日本にいる人間に話さないこと。これを破った瞬間、存在が抹消されるらしい。
「……以上だ。ま、超重要事項はペラッペラの紙に書いておく。アパートの床に転がってると思うから、また見とけ」
余談だが、ビサルテ王国の建国者は日本からの転生者で、言語はその人が伝えたらしい。
で、その人のポケットに入っていた財布に500円玉、100円玉、50円玉、10円玉、5円玉、1円玉の全ての小銭が入っていて、それを参考にしながら、我が国のお金ができたらしい。
あと、日本に行けば『紙幣』?というものが手に入るらしく、1000円、2000円、5000円、10000円が紙になって、お金として使えるそうだ。ビサルテ王国民の金持ちは皆500円玉を大量に持ち歩いてたことを思い出し、何故誰もそのようなモノを作ろうと提案しなかったのか、不思議で仕方がない。
我々は相当な馬鹿の集まりだったのかもしれない、とたった今気付かされた。
「あの、神様。あり、がとうございます」
「いいってことよ、じゃ、転移開始」
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