8 / 60
7、ギフトをもたない娘 カーラ視点
しおりを挟む
1つ年上のローラお姉様は、まるでカトレアの花のように華やかだった。
光の加減により銀色にも金色にも、ピンク色にも見える、もえるような若草を彷彿させる淡い緑の髪と瞳をもっていた人。
薔薇色の頬と、大理石のような白い肌をして、いつも朗らかに笑っていた。
リーフ伯爵家には男子がいない。
ほんの数年前まで、家の当主は男子と定められていた。
けれど、法律が改正され女でも当主になれるようになったのだ。
「やっと法律が女当主を認めてくれたのに、まだ女伯爵はあらわれないのね。
なら、私がその第1号になるわ」
お姉様は自信たっぷりにそう言った。
言葉どおりお姉様は、伯爵家の三男パイン様と結婚して、自分がリーフ家の当主となる。
「初めまして。カーラ。
これからよろしくね」
パインお義兄様が邸へやってきた時、玄関先で私の手を握りしめた。
灰色の髪に灰色の瞳。
お義兄様は少し気弱そうで、どことなく影の薄い感じがしたのだ。
「アナタは私と同類だわ。
これからきっとローラお姉様の引き立て役として生きるのね。
お可哀想に」
私はつい本音を口にして、お義兄様の手を握りかえした。
「あら。
初対面の人とは話せないカーラが、自分からパインに言葉をかけたわ。
珍しいこともあったもんね」
と、ローラお姉様は私の本音を冗談だと思い、笑いとばしていたわ。
激しい人見知り。
取り柄のない陰気な娘。
そんな評判の私は、どの縁談もうまくいかず、当時はすっかり結婚をあきらめていたのだ。
「美人でギフト持ちで、両親にも期待をかけられて育ったお姉さまになんか、私の気持ちなんかわかるもんですか」
ポツリと呟いて、唇をかみしめた時、やわらかな声が耳をかすめた。
「アナタにはローラにない魅力がある。
気にしないで」
と。
生まれて初めて男の人にささやかれた甘言に、頭は真っ白になった。
それからは、気がつけばいつもパインお義兄様を目でおっていたのだ。
「ローラは本当にやり手だね。
最近思うんだ。
アイリーンが生まれた今は、僕なんて必要ないんじゃないのかって」
モデル領地になって、お姉様がますます仕事に没頭した頃、パインお義兄様はこんな事を口走るようになった。
だから、私はカケにでたのだ。
お姉様の留守を見計らって、パインお義兄様にせまり凋落した。
つもりだったけど、お義兄様にとっては私との事は過ちだったようだ。
それがわかるから。
ローラお姉様そっくりのアイリーンを見ると、一瞬で頭に血がのぼった。
アイリーンはまるでローラお姉様の亡霊だ。
だから、アイリーンをとことん痛めつけないといけない。
どうしても、ローラお姉様だけには負けたくなかった。
光の加減により銀色にも金色にも、ピンク色にも見える、もえるような若草を彷彿させる淡い緑の髪と瞳をもっていた人。
薔薇色の頬と、大理石のような白い肌をして、いつも朗らかに笑っていた。
リーフ伯爵家には男子がいない。
ほんの数年前まで、家の当主は男子と定められていた。
けれど、法律が改正され女でも当主になれるようになったのだ。
「やっと法律が女当主を認めてくれたのに、まだ女伯爵はあらわれないのね。
なら、私がその第1号になるわ」
お姉様は自信たっぷりにそう言った。
言葉どおりお姉様は、伯爵家の三男パイン様と結婚して、自分がリーフ家の当主となる。
「初めまして。カーラ。
これからよろしくね」
パインお義兄様が邸へやってきた時、玄関先で私の手を握りしめた。
灰色の髪に灰色の瞳。
お義兄様は少し気弱そうで、どことなく影の薄い感じがしたのだ。
「アナタは私と同類だわ。
これからきっとローラお姉様の引き立て役として生きるのね。
お可哀想に」
私はつい本音を口にして、お義兄様の手を握りかえした。
「あら。
初対面の人とは話せないカーラが、自分からパインに言葉をかけたわ。
珍しいこともあったもんね」
と、ローラお姉様は私の本音を冗談だと思い、笑いとばしていたわ。
激しい人見知り。
取り柄のない陰気な娘。
そんな評判の私は、どの縁談もうまくいかず、当時はすっかり結婚をあきらめていたのだ。
「美人でギフト持ちで、両親にも期待をかけられて育ったお姉さまになんか、私の気持ちなんかわかるもんですか」
ポツリと呟いて、唇をかみしめた時、やわらかな声が耳をかすめた。
「アナタにはローラにない魅力がある。
気にしないで」
と。
生まれて初めて男の人にささやかれた甘言に、頭は真っ白になった。
それからは、気がつけばいつもパインお義兄様を目でおっていたのだ。
「ローラは本当にやり手だね。
最近思うんだ。
アイリーンが生まれた今は、僕なんて必要ないんじゃないのかって」
モデル領地になって、お姉様がますます仕事に没頭した頃、パインお義兄様はこんな事を口走るようになった。
だから、私はカケにでたのだ。
お姉様の留守を見計らって、パインお義兄様にせまり凋落した。
つもりだったけど、お義兄様にとっては私との事は過ちだったようだ。
それがわかるから。
ローラお姉様そっくりのアイリーンを見ると、一瞬で頭に血がのぼった。
アイリーンはまるでローラお姉様の亡霊だ。
だから、アイリーンをとことん痛めつけないといけない。
どうしても、ローラお姉様だけには負けたくなかった。
0
あなたにおすすめの小説
虐げられた聖女は精霊王国で溺愛される~追放されたら、剣聖と大魔導師がついてきた~
星名柚花
恋愛
聖女となって三年、リーリエは人々のために必死で頑張ってきた。
しかし、力の使い過ぎで《聖紋》を失うなり、用済みとばかりに婚約破棄され、国外追放を言い渡されてしまう。
これで私の人生も終わり…かと思いきや。
「ちょっと待った!!」
剣聖(剣の達人)と大魔導師(魔法の達人)が声を上げた。
え、二人とも国を捨ててついてきてくれるんですか?
国防の要である二人がいなくなったら大変だろうけれど、まあそんなこと追放される身としては知ったことではないわけで。
虐げられた日々はもう終わり!
私は二人と精霊たちとハッピーライフを目指します!
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】ブスと呼ばれるひっつめ髪の眼鏡令嬢は婚約破棄を望みます。
はゆりか
恋愛
幼き頃から決まった婚約者に言われた事を素直に従い、ひっつめ髪に顔が半分隠れた瓶底丸眼鏡を常に着けたアリーネ。
周りからは「ブス」と言われ、外見を笑われ、美しい婚約者とは並んで歩くのも忌わしいと言われていた。
婚約者のバロックはそれはもう見目の美しい青年。
ただ、美しいのはその見た目だけ。
心の汚い婚約者様にこの世の厳しさを教えてあげましょう。
本来の私の姿で……
前編、中編、後編の短編です。
捨てられた元聖女ですが、なぜか蘇生聖術【リザレクション】が使えます ~婚約破棄のち追放のち力を奪われ『愚醜王』に嫁がされましたが幸せです~
鏑木カヅキ
恋愛
十年ものあいだ人々を癒し続けていた聖女シリカは、ある日、婚約者のユリアン第一王子から婚約破棄を告げられる。さらには信頼していた枢機卿バルトルトに裏切られ、伯爵令嬢ドーリスに聖女の力と王子との婚約さえ奪われてしまう。
元聖女となったシリカは、バルトルトたちの謀略により、貧困国ロンダリアの『愚醜王ヴィルヘルム』のもとへと強制的に嫁ぐことになってしまう。無知蒙昧で不遜、それだけでなく容姿も醜いと噂の王である。
そんな不幸な境遇でありながらも彼女は前向きだった。
「陛下と国家に尽くします!」
シリカの行動により国民も国も、そして王ヴィルヘルムでさえも変わっていく。
そしてある事件を機に、シリカは奪われたはずの聖女の力に再び目覚める。失われたはずの蘇生聖術『リザレクション』を使ったことで、国情は一変。ロンダリアでは新たな聖女体制が敷かれ、国家再興の兆しを見せていた。
一方、聖女ドーリスの力がシリカに遠く及ばないことが判明する中、シリカの噂を聞きつけた枢機卿バルトルトは、シリカに帰還を要請してくる。しかし、すでに何もかもが手遅れだった。
婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。
だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。
もしかして、婚約破棄⁉
【完結】追放された大聖女は黒狼王子の『運命の番』だったようです
星名柚花
恋愛
聖女アンジェリカは平民ながら聖王国の王妃候補に選ばれた。
しかし他の王妃候補の妨害工作に遭い、冤罪で国外追放されてしまう。
契約精霊と共に向かった亜人の国で、過去に自分を助けてくれたシャノンと再会を果たすアンジェリカ。
亜人は人間に迫害されているためアンジェリカを快く思わない者もいたが、アンジェリカは少しずつ彼らの心を開いていく。
たとえ問題が起きても解決します!
だって私、四大精霊を従える大聖女なので!
気づけばアンジェリカは亜人たちに愛され始める。
そしてアンジェリカはシャノンの『運命の番』であることが発覚し――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる