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42、友達っていいね

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 市場へ続く道を息を切らして走っていると、背中からミーナの声がする。

「ねえ。ミーナも一緒に行ってもいい?」

「好きにすれば。
 もう勝手にここまでついてきてるんだし」

「へへへ」と笑うミーナの声がした時、待ち合わせの場所に到着した。

「ごめんなさい。
 実は急用ができちゃって、今日はゆっくりできなくなったの」  

 呼吸を整えながら、すでに噴水の前のベンチに腰をおろしていたフラン様に両手をあわせた。

 フラン様はただ座っているだけなのに、噴水の飾りとしてこしらえられた彫刻のように美しい。

「ええ、急用だって!
 アイリーン、一体なにがあったんだ!」

 噴水の水がザアーと大きな音をたてて噴き上がった瞬間、フラン様が大きく目を見開いて弾かれたように立ち上がった。

「まさかアイリーンが不治の病にかかったんじゃないだろうね。
 それともリトルドリームが火事で焼けてしまった?
 火事じゃないなら強盗に襲われたとか」

「どれも違うわ。
 私は健康だし火事にも強盗にもあってない」

 あれこれ想像して青ざめた顔をするフラン様にゆっくりと頭を左右にふる。

「さっき邸の使いの者から、継母様とマリーンが犯罪に手をそめてるかもしれないって知らせがあったの。
 もしそれが本当なら実家は取り潰される。
 なんとしても、それだけは避けたいの。
 亡くなったお母様に天国で会った時に、気まずいから。
 事実を確認するために、今から邸へ戻ろうと思うの」

「たしかマリーンってかなりキツメの子だったね」

「キツいだけじゃによ。
 大食いでバカでケチんぼなんだぞ」

 ミーナが好き放題言っているけど、それを注意する気は1ミリもおきなかった。

 マリーンだけじゃない。私だってけっこう意地悪なのかな。

「フラン、こんな私を心配してくれてありがとう」

「こんな私だなんて言わないでよ。
 アイリーンほど可愛い子はどこを探してもいないのに。
 とくに今日のワンピース姿はとびっきり可愛いね」

 フラン様はとろけるような眼差しで私を見つめる。

「これはごく平凡な青いワンピースなのに。
 フランって口がうまいのね」

「そうじゃなくって、アイリーンは何を着ても最高に可愛いってこと。
 僕はただの正直者なだけだ。
 なのにタラシみたいに言われて、ちょっと気分が悪いな」

 フラン様は形のいい眉をよせてムッとした。

「ごめんなさい。
 心配してくれたり、ほめてくれたり、言い合ったりできる友達っていいものね。
 でもフラン。
 これを聞いてもまだ友達でいてくれるかしら」

 そう言うと、ベンチに座るようにフラン様に目で合図をおくる。






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