43 / 60
42、友達っていいね
しおりを挟む
市場へ続く道を息を切らして走っていると、背中からミーナの声がする。
「ねえ。ミーナも一緒に行ってもいい?」
「好きにすれば。
もう勝手にここまでついてきてるんだし」
「へへへ」と笑うミーナの声がした時、待ち合わせの場所に到着した。
「ごめんなさい。
実は急用ができちゃって、今日はゆっくりできなくなったの」
呼吸を整えながら、すでに噴水の前のベンチに腰をおろしていたフラン様に両手をあわせた。
フラン様はただ座っているだけなのに、噴水の飾りとしてこしらえられた彫刻のように美しい。
「ええ、急用だって!
アイリーン、一体なにがあったんだ!」
噴水の水がザアーと大きな音をたてて噴き上がった瞬間、フラン様が大きく目を見開いて弾かれたように立ち上がった。
「まさかアイリーンが不治の病にかかったんじゃないだろうね。
それともリトルドリームが火事で焼けてしまった?
火事じゃないなら強盗に襲われたとか」
「どれも違うわ。
私は健康だし火事にも強盗にもあってない」
あれこれ想像して青ざめた顔をするフラン様にゆっくりと頭を左右にふる。
「さっき邸の使いの者から、継母様とマリーンが犯罪に手をそめてるかもしれないって知らせがあったの。
もしそれが本当なら実家は取り潰される。
なんとしても、それだけは避けたいの。
亡くなったお母様に天国で会った時に、気まずいから。
事実を確認するために、今から邸へ戻ろうと思うの」
「たしかマリーンってかなりキツメの子だったね」
「キツいだけじゃによ。
大食いでバカでケチんぼなんだぞ」
ミーナが好き放題言っているけど、それを注意する気は1ミリもおきなかった。
マリーンだけじゃない。私だってけっこう意地悪なのかな。
「フラン、こんな私を心配してくれてありがとう」
「こんな私だなんて言わないでよ。
アイリーンほど可愛い子はどこを探してもいないのに。
とくに今日のワンピース姿はとびっきり可愛いね」
フラン様はとろけるような眼差しで私を見つめる。
「これはごく平凡な青いワンピースなのに。
フランって口がうまいのね」
「そうじゃなくって、アイリーンは何を着ても最高に可愛いってこと。
僕はただの正直者なだけだ。
なのにタラシみたいに言われて、ちょっと気分が悪いな」
フラン様は形のいい眉をよせてムッとした。
「ごめんなさい。
心配してくれたり、ほめてくれたり、言い合ったりできる友達っていいものね。
でもフラン。
これを聞いてもまだ友達でいてくれるかしら」
そう言うと、ベンチに座るようにフラン様に目で合図をおくる。
「ねえ。ミーナも一緒に行ってもいい?」
「好きにすれば。
もう勝手にここまでついてきてるんだし」
「へへへ」と笑うミーナの声がした時、待ち合わせの場所に到着した。
「ごめんなさい。
実は急用ができちゃって、今日はゆっくりできなくなったの」
呼吸を整えながら、すでに噴水の前のベンチに腰をおろしていたフラン様に両手をあわせた。
フラン様はただ座っているだけなのに、噴水の飾りとしてこしらえられた彫刻のように美しい。
「ええ、急用だって!
アイリーン、一体なにがあったんだ!」
噴水の水がザアーと大きな音をたてて噴き上がった瞬間、フラン様が大きく目を見開いて弾かれたように立ち上がった。
「まさかアイリーンが不治の病にかかったんじゃないだろうね。
それともリトルドリームが火事で焼けてしまった?
火事じゃないなら強盗に襲われたとか」
「どれも違うわ。
私は健康だし火事にも強盗にもあってない」
あれこれ想像して青ざめた顔をするフラン様にゆっくりと頭を左右にふる。
「さっき邸の使いの者から、継母様とマリーンが犯罪に手をそめてるかもしれないって知らせがあったの。
もしそれが本当なら実家は取り潰される。
なんとしても、それだけは避けたいの。
亡くなったお母様に天国で会った時に、気まずいから。
事実を確認するために、今から邸へ戻ろうと思うの」
「たしかマリーンってかなりキツメの子だったね」
「キツいだけじゃによ。
大食いでバカでケチんぼなんだぞ」
ミーナが好き放題言っているけど、それを注意する気は1ミリもおきなかった。
マリーンだけじゃない。私だってけっこう意地悪なのかな。
「フラン、こんな私を心配してくれてありがとう」
「こんな私だなんて言わないでよ。
アイリーンほど可愛い子はどこを探してもいないのに。
とくに今日のワンピース姿はとびっきり可愛いね」
フラン様はとろけるような眼差しで私を見つめる。
「これはごく平凡な青いワンピースなのに。
フランって口がうまいのね」
「そうじゃなくって、アイリーンは何を着ても最高に可愛いってこと。
僕はただの正直者なだけだ。
なのにタラシみたいに言われて、ちょっと気分が悪いな」
フラン様は形のいい眉をよせてムッとした。
「ごめんなさい。
心配してくれたり、ほめてくれたり、言い合ったりできる友達っていいものね。
でもフラン。
これを聞いてもまだ友達でいてくれるかしら」
そう言うと、ベンチに座るようにフラン様に目で合図をおくる。
0
あなたにおすすめの小説
虐げられた聖女は精霊王国で溺愛される~追放されたら、剣聖と大魔導師がついてきた~
星名柚花
恋愛
聖女となって三年、リーリエは人々のために必死で頑張ってきた。
しかし、力の使い過ぎで《聖紋》を失うなり、用済みとばかりに婚約破棄され、国外追放を言い渡されてしまう。
これで私の人生も終わり…かと思いきや。
「ちょっと待った!!」
剣聖(剣の達人)と大魔導師(魔法の達人)が声を上げた。
え、二人とも国を捨ててついてきてくれるんですか?
国防の要である二人がいなくなったら大変だろうけれど、まあそんなこと追放される身としては知ったことではないわけで。
虐げられた日々はもう終わり!
私は二人と精霊たちとハッピーライフを目指します!
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】ブスと呼ばれるひっつめ髪の眼鏡令嬢は婚約破棄を望みます。
はゆりか
恋愛
幼き頃から決まった婚約者に言われた事を素直に従い、ひっつめ髪に顔が半分隠れた瓶底丸眼鏡を常に着けたアリーネ。
周りからは「ブス」と言われ、外見を笑われ、美しい婚約者とは並んで歩くのも忌わしいと言われていた。
婚約者のバロックはそれはもう見目の美しい青年。
ただ、美しいのはその見た目だけ。
心の汚い婚約者様にこの世の厳しさを教えてあげましょう。
本来の私の姿で……
前編、中編、後編の短編です。
捨てられた元聖女ですが、なぜか蘇生聖術【リザレクション】が使えます ~婚約破棄のち追放のち力を奪われ『愚醜王』に嫁がされましたが幸せです~
鏑木カヅキ
恋愛
十年ものあいだ人々を癒し続けていた聖女シリカは、ある日、婚約者のユリアン第一王子から婚約破棄を告げられる。さらには信頼していた枢機卿バルトルトに裏切られ、伯爵令嬢ドーリスに聖女の力と王子との婚約さえ奪われてしまう。
元聖女となったシリカは、バルトルトたちの謀略により、貧困国ロンダリアの『愚醜王ヴィルヘルム』のもとへと強制的に嫁ぐことになってしまう。無知蒙昧で不遜、それだけでなく容姿も醜いと噂の王である。
そんな不幸な境遇でありながらも彼女は前向きだった。
「陛下と国家に尽くします!」
シリカの行動により国民も国も、そして王ヴィルヘルムでさえも変わっていく。
そしてある事件を機に、シリカは奪われたはずの聖女の力に再び目覚める。失われたはずの蘇生聖術『リザレクション』を使ったことで、国情は一変。ロンダリアでは新たな聖女体制が敷かれ、国家再興の兆しを見せていた。
一方、聖女ドーリスの力がシリカに遠く及ばないことが判明する中、シリカの噂を聞きつけた枢機卿バルトルトは、シリカに帰還を要請してくる。しかし、すでに何もかもが手遅れだった。
婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。
だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。
もしかして、婚約破棄⁉
【完結】追放された大聖女は黒狼王子の『運命の番』だったようです
星名柚花
恋愛
聖女アンジェリカは平民ながら聖王国の王妃候補に選ばれた。
しかし他の王妃候補の妨害工作に遭い、冤罪で国外追放されてしまう。
契約精霊と共に向かった亜人の国で、過去に自分を助けてくれたシャノンと再会を果たすアンジェリカ。
亜人は人間に迫害されているためアンジェリカを快く思わない者もいたが、アンジェリカは少しずつ彼らの心を開いていく。
たとえ問題が起きても解決します!
だって私、四大精霊を従える大聖女なので!
気づけばアンジェリカは亜人たちに愛され始める。
そしてアンジェリカはシャノンの『運命の番』であることが発覚し――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる