妹に悪役令嬢にされて隣国の聖女になりました

りんりん

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41、ライアンローズ  フラン視点

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『でもアイリーン。
 これからも友達でいられる自信は僕にはないよ』

 こないだアイリーンに伝えた言葉を思い出して「うわああ」と大声をはりあげて髪をかきむしる。

「我ながら、よくあんなキザなセリフが言えたもんだよ」

 今さらながら恥ずかしい。

 もちろん気持に嘘はない。

 けれど僕に負けず劣らずアイリーンは恋愛経験が乏しそうだ。

 ちゃんと言葉の意味を理解してくれただろうか。

 あー。考えれば考えるほど苦しい。

「こんなことなら王妃の座目当てにせまってくる令嬢相手に、もっと恋の駆け引きの腕を磨いておくべきだった。
 ちくしょう」 

 つくった拳でステーキを焼く鉄板を軽く叩くと、ジョンとミセススパイスのあきれかえった声がする。

「またフラン様の独り言がはじまったぞ」

「アイリーンが帰ってから、ずーとあの調子なのですよね。
 サクラダの国が危ないというのに、なんという脳天気な事でございましょうか。
 ジョン。
 今度王子様がまた独り言をおっしゃたら、燃やしておしまいなさい」

「およよよ」

 ジョンが驚きの声をあげた時だ。

「ジョンその必要はないぜ。
 フランの気持ちはすっかり燃え上がっているじゃないか」

 青空をうつすレストランの大きな窓から、幻獣の姿のキキがストンと舞い降りてきた。

「なんだよ。キキ。
 それは名言のつもりか」 

 アイリーンへの気持ちを冷やかされた照れかくしで、わざと大げさに眉をよせる。

「悪いが、今はお坊ちゃまのご機嫌取りをしている暇はない」

「ブレーム公爵の動きに何かあったのか!」

 キキの緊張した面持ちに声をあらげた。

「そうじゃない。
 ゴールデンローズを持っている女を密偵が探し当てた。
 これがその女の似顔絵だ」
 
 勇ましい護衛騎士の姿に変わったキキは、手にある丸めた紙をひろげる。

「まあ、なんと喜ばしいことです」

「ざまあみろ。ブレーム公爵。けけけ」

 ミセススパイスとジョンの弾んだ声が僕の耳をとおりぬけてゆく。

「キキ、この女が本当にゴールデンローズの主なのか」 

 深いため息をついて脱力する。

「そうだか。ひょっとしてこの女を知っているのか」

「ああ、アイリーンの妹なんだが最悪な女だ。
 一国の王子として私情でうごくのはよくないとわかってはいるが、あの女にだけは頭を下げたくない」

 サクラダの国の安泰の為に、ゴールデンローズの主が女性ならば、なんとしてでも結婚するつもりでいたのだ。

 特殊な花を咲かせる遺伝子を子孫に残すために。

 でもそれはアイリーンに出会う前までの話だったし、ましてや相手があの女なのだ。

 話にもならない。

「これでサクラダ国が救えるんだぞ。とりあえす冷静になって、まずはその女に会いにいこうぜ」

 立ちすくむ僕の腕を、キキが強引にひっぱった。

「悪いが、アイリーンと会う約束があるんだ。キキは先に女の所へ向かってくれ」

 僕はキキの腕をふりはらうと、約束した市場の噴水へ全力で走り出したのだ。
 
 
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