妹に悪役令嬢にされて隣国の聖女になりました

りんりん

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40、ライアンローズ

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「アイリーン。
 今日はフランとの初デートでしょ。
 いい加減ベッドからでできたらどうよさ」

 ミーナの声が頭からふってきた。

「え!今日だったかしら」

 ガバッと布団をはねのけて身体をおこし頭をひねる。

「あれ、ここはどこなの」

 少しシミのついた天井や、地味なカーテンがつりさがった窓にキョロキョロと視線を走らせた。  

「リトルドリームの天井裏じゃん。
 レストランSから帰ってきてからのアイリーンって、すごーくへん。
 まるで夢遊病者みたいに、1日中ボーとしちゃてさ。
 そりゃあ、あんな素敵な王子様の恋人になったんだもん。
 わからなくもないけど」

「こらミーナ。
 私がいつ恋人になったなんて言ったのよ。
 ただの友達でしょ」

で、フラン様に友達でいられる自信がない、と言われてウジウジ悩んでいるのだ。

「へへーんだ。
 男と女の間には友情なんて存在しないんだって。
 友達っていうのはさ。
 ただの言い逃れでしょ」

「じゃあ、私とフランは例外なんだ」

「例外なんかじゃない」

「例外よ」

「ちがう、ミーナはそういうカンだけは鋭いんだからさ」

「はいはい。
 おませな魔道具さんね」

 ピーピとうるさいミーナを見下ろした時、ミーナの身体の変化に目を丸くする。

「ミーナは本当にリトルドリームの生活が、あっているみたいね。
 あっちの邸にいた時より、ずーと顔色がいいもん。身体だって丸々してきてるし」 

「アイリーン。
 ミーナの身体にはね。
 持ち主の精神状態が反映されるんだよ」

「え、そうなんだ。
 ずーと一緒にいるのに、今初めて知ったわ」

「カーラの所ではアイリーンの心はしおれっぱなしだから、ミーナが言わなかったんだ」

「そうだったの。
 私に心配かけまいとしてくれたのね。
 なのに私ったら、ミーナはいつもお気楽なお調子者だと誤解していたわけね。
 バカ、バカ」
とつくった拳で、自分の頭をポカポカと叩いた時だった。

 部屋の扉がバタンと大きな音をたてて開く。

「お嬢様、たいへんです。
 カーラ奥様とマリーン様が邸のお庭で、なんとライアンローズの栽培をしてるのですよ。
 邸の者はまだ誰もその事は知りません。
 昨夜、私がお庭の掃除中に偶然見つけてしまったんです。
『アイリーンが邸をでてから、邸の財政は悪化するばかり。だから、苦労してゴールデンローズの栽培にとりくんでいる』と奥様は言い張るのですが、あれはライアンローズに違いありません。
 一体どうしたらいいんんでしょう」  

「ライアンローズですって!」

 転がるように部屋に飛び込んできたリンダの言葉に、ワナワナと身体を震わせた。
 
 ライアンローズの栽培は法律で禁じられている。

 ライアンローズは一見ゴールデンローズにそっくりらしいが、その花の香りで一気に人を廃人におとしめていくという。

 そんな恐ろしい花を育てている事がばれれば、カーラもマリーンも即刻首をはねられるだろう。

 もちろんリーフ家は取り潰しになる。

「初代当主として、それは見逃すわけにはいかない。
 私の夢はリーフ伯爵家の永遠の繁栄だから」

 リンダのあとを追って部屋にやってきたブランチさんが、悲痛な声をだして顔を強ばらせた。

「わかったわ。
 1度邸へ戻って、カーラやマリーンとちゃんと話しあってみる」

 私はそう言うとキュツと唇をかんだ。

「けど、その前に立ち寄りたい所があるの」

「じゃあ、私はリンダと一緒にリーフ家へ先に行っているよ」   

 ブランチさんがリンダの肩を抱いて、部屋から出て行くと、私は魔法で質素なワンピーズに着替えた。

 そして、あわてて市場の中にある噴水目指してかけていく。

 友達に私のいまわしい生い立ちを伝えるために。
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