妹に悪役令嬢にされて隣国の聖女になりました

りんりん

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56、サクラダへ到着

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 王様が用意してくれた支援物資を積んで、帆船はゆっくりと東を進んでゆく。

「アイリーン。
 ここがサクラダなんだ」

 デッキに用意されたテーブルに、フラン様が地図を置いてヒョウタン型の島を指さした。

「シンシア国からだいぶ離れているのね。
 この調子じゃあ、到着するまでにかなりの日数がかかりそうね」

 テーブルの周りにフラン様と座って地図をのぞきこんだ私は、思わずため息をつく。

「そうなんだよね。
 こうしている間にも国民は疲弊してゆく。
 キキ、なんとかならないのか」

 フラン様が眉をひそめて、そばに立つキキを見上げた。

「そう言われても、船を急ピッチで走らせるには神風でも吹かすしかない。
 さすがにそれはこのオレでも無理な話しだ」

 キキが恨みがましそうに空を仰ぐ。

「神風は無理だけど、大風なら大丈夫よ。
 私にまかせて」

 キキの言葉に喜々として(あら。シャレになっちゃた)立ち上がり、
「風よ。
 もっと強く吹いて、私達を至急サクラダへ連れて行って欲しいの」
と言ってから、人差し指で空気をきった。 

 するとピカピカの晴天なのに、突然嵐のような強い風が吹きあれる。

「あんな凄い魔法を平然と使えるなんて、アイリーンってすごすぎるよ」

 フラン様は私を横抱きにすると、一瞬でサクラダの港に到着した船からおりる。 

 まるで大切な宝物のように扱われて、私の胸はキュンキュン鳴りっぱなしだ。

 ひょっとして、これはフラン様の私限定魔法だったりしてね。
 
 初めてサクラダに足をふみいれたが、この国は想像以上に荒れ果てていて気持が辛くなった。

 海は灰色によどんでいるし、停泊中の船はどれもマストが折れたり半壊れの状態だ。

「この荷物はA領へ。
 この荷物はB領へ」

 陸へ降りたフラン様はさっきの甘々の顔とはまるで別人ね。

 きびきびと救援物資を各領へわりふった後は、ククレ公爵と真剣な顔で深刻そうに話をしている。

 率先して、国民の救済の為に働いている姿はまぶしい。

フラン様を選んだ事を誇りに思う。

「なんだって。
 領民が流行病にかかって、S領が壊滅的なのか。
 ジョン。
 ゴールデンローズを持って、いそいでS領へ向かって欲しい」

 フラン様はゴールデンローズを保管していた箱を、ジョンに差し出した。

 最初にフラン様を助けた時は、ゴールデンローズはすぐに消滅してしまったけれど、今回は大丈夫だったのでこうやって利用できるのだ。

魔力が増したおかげで、私でも人助けに貢献できるのが素直に喜しい。

「了解。
 ミーナ、一緒に行くよな」

「あったりまえじゃん」

 短い航海だったのに、いつのまにか仲良くなって、今も手をつないでいるミーナとジョンに、私は軽く指をふる。

「S領へとんでいって」
と。

「助かるよ。アイリーン。
 それから君に来てほしい所があるんだ」

 ジョンとミーナが姿を消すと、私はフラン様に手をひかれて港をあとにする。

「サクラダの国民になるには、まずはここで魔力鑑定を受ける必要があるんだ。
 アイリーンの凄い魔力を見ると、きっと神父様は凍り付くぞ」

 そんな説明をうけながらたどり着いたのは、岬の上にたつ小さいが歴史を感じさせる教会だった。
  


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