お飾り王妃のはずなのに、黒い魔法を使ったら溺愛されてます

りんりん

文字の大きさ
2 / 76

一、魔女の国1

しおりを挟む

「ポプリ国は大陸の中心に位置する小国だ。
周囲を強国でぐるりと取り囲まれており、いつどの国から侵入されてもおかしくない。
そんなポプリ国は、資源に恵まれているわけでもないし、特産品があるわけでもないのだ。
それでも何千年もの間、平和が保たれている。
それはひとえに代々の女王による魔法の加護のおかげなのだ」

尖塔が銀色に輝く、王宮の奥深くにある女王の執務室で、早朝から歴史書を音読させられていた。

最近の私の日課だ。

毎日、毎日、読まされる。

私が、この歴史書を完璧に暗唱できるまで続けられるらしい。

「ふああああ」

つい欠伸をしてしまう。

昨夜遅くまで、チューちゃんとお喋りしていたので寝不足気味なのだ。

ちなみに、チューちゃんは、はつかねずみの姿をした使い魔である。

チューちゃんはいつもトレードマークの、深緑のベストを身につけていた。

-バシッ-

とたんにこの国の女王でもあるお母様から、勢いよく鞭がとんできたのだ。

「痛い!」

声をあげると、うたれて赤く腫れている左手の甲に視線をはしらせる。

「お母様。もっと手加減してくれない」

「手加減すれば、あなたは眠ってしまうじゃない。
それにここでは、お母様でなく女王様と呼ぶのよ。
いつも言っているでしょう」

執務机に座り、羽ペンで書類に何かを書き込みんでいるお母様は、こちらを見ようともしない。

それでも母親なわけ?

「女王様。私には、この本を暗唱するなんて無理です」

歴史書を閉じて、目の前の執務机に乱暴におく。

「無理じゃないわ。
他の王女にはできたのだから」

「それでも、私には無理です。
私は他の王女とは、色々と違っているのだから。
一緒にしないで下さい」

日頃不満に思っていたことを、たたみかけるように口にした。

さっきの歴史書にもあるように、ポプリ国の代々の女王は魔法がつかえたのだ。

不思議なことに魔法は、王族の女の子にしか引き継がれない。

なので王族の長女は、有力貴族から養子をむかえ、これまで血をつないできた。

「一番上のイリスお姉様は、誰よりも優秀だわ」

私は四人姉妹の三番目で、上に二人の姉、下には妹が一人いる。

イリスお姉様は、金髪碧眼のお母様そっくりの容姿をしていた。

姿だけでなく、男勝りの性質も、強い魔力も引き継いでいる。

現在は、大陸でもトップクラスの魔法大学へ留学中だ。

お母様自慢の娘で、国民期待の次期女王でもある。

「二番目のマーガレットお姉様の素直で優しい性格は、誰からも愛されているわ」

顎に手をあて視線を上にむけ、マーガレットお姉様の面影をなつかしむ。

マーガレットお姉様も、金髪碧眼だったけれど、印象はイリスお姉様とは真逆だ。

とても可憐ではかなげだった。

マーガレットお姉様は、同じ金髪碧眼でもお父様の方に似たのだろう。

そんなマーガレットお姉様が年頃になると、結婚話が殺到した。

そして、大陸でも屈指の豊かな国、ユーレック王国へ嫁いだ。

「マーガレットがローズの年には、もう子供がいたわ。
マーガレットの評判がいいので、ユーレック王国との交渉事もやりやすいのよ」

お母様は、せかせかと動かしていた手をとめて、喜しそうに微笑んだ。

魔法が使えるポプリの王女を、王妃に迎えたい国は多い。

長い歴史の中、ほとんどの有力国にはポプリの王女が嫁いでいる。

我が国の安定は、そういう所からもきていた。

大袈裟に言えば、魔女輸出ナンバーワン国なのだ。






















 











しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜

織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。 侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。 学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

[完結中編]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜

コマメコノカ@女性向け・児童文学・絵本
恋愛
 王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。 そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。

厄介払いされてしまいました

たくわん
恋愛
侯爵家の次女エリアーナは、美人の姉ロザリンドと比べられ続け、十八年間冷遇されてきた。 十八歳の誕生日、父から告げられたのは「辺境の老伯爵に嫁げ」という厄介払いの命令。 しかし、絶望しながらも辺境へ向かったエリアーナを待っていたのは――。

処理中です...