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三、魔女の国アンバー女王視点
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-鋼の女王-
わたくしは国民からそう呼ばれている。
大柄で勝ち気な強い女のイメージがあるからだろう。
-生まれながらの女王-
わたくしは国民からこうも呼ばれている。
恵まれた環境に生まれ、なんの悩みなく生きているイメージがあるからだろう。
それらは半分当たりで半分は間違いだ。
生まれながらに特権を持った者には、そうではない者にはわからない窮屈な義務や責任がある。
加えて、普通の母としての悩みもあった。
悩みの種の一つは、三女ローズウッドだ。
今日も、そのローズウッドを執務室によんでいる。
ローズウッドは、他の三人の娘とはずいぶん違う。
三人の娘は王家特有の金髪碧眼をしていたが、ローズウッドの髪と瞳は薄いピンク色をしている。
王家歴代の王女の中でも、それはローズウッドだけだった。
ローズウッドは魔力も、著しく乏しい。
すでに体格で負けている妹ダリアに、最近は魔力でも負けていると聞いていた。
それでもわたくしは、他の娘と同様にローズウッドを愛している。
だからこそ、毎朝執務室での歴史書の音読をかかさない。
歴史書の暗記は王女の義務の一つだった。
分厚い歴史書を一文字もたがわずに覚えるなんて、普通はできない。
けれど簡単な魔法を使えば、なんてことはなかった。
げんに四女のダリアでさえ、すでにできているのだから。
けれどそんな魔法でさえ、ローズウッドはいまだに使えない。
こんな王女に誰がついていくだろうか。
こんなことをしても、気休めでしかないのはわかっている。
けれど、じっとしてはいられなかった。
「それはひとえに代々の女王による魔法の加護のおかげなのだ」
眠たそうな目をしたローズウッドは、そこまで読むと『ふああああ』と大きな欠伸をしたのだ。
聞けば、昨夜は遅くまでチューちゃんとお喋りをしていたという。
チューちゃんとは、はつかねずみの姿をしたローズウッドの使い魔である。
なんて呑気なこと。
わたくしは、いらついた。
ーバシッー
鞭でローズウッドの左手を鞭でうつ。
「あ、痛い!」
ローズウッドは小さな声をあげると、うたれて赤く腫れている左手の甲に視線をはしらせていた。
「女王様。私にはこの本を暗唱するなんて無理です」
ローズウッドは、そう言うと閉じた歴史書を執務机の上に乱暴におく。
それからローズウッドは、わたくしへの不満を色々と口にし最後にこうつけ加えたのだ。
「わかりました。
私も、もっと努力をします。
だから、女王様、いえお母様も私をお姉様たちと比べて、余計な心配をしないで下さい。
私は私だから」
と。
ローズウッドがわたくしのことを、そんな風に思っていたのはショックだった。
「比べて憂慮しているわけでは、ありませんよ。
いつかわたくしの気持ちが、あなたに伝わる日がくるのを待っています」
目をふせて、両手をぎゅっと握っているローズウッドを静かな声でさとす。
そして、その日。
わたくしが犯した罪がわかるのですね。
ローズウッドが生まれてすぐに、わたくしはあの子にある魔法をかけた。
それはローズウッドの額に、黒い髑髏の形をした痣を見つけたからです。
それを知ったあなたは、わたくしを許してくれるのでしょうか。
それとも......。
わたくしは心の中で呟いた。
わたくしは国民からそう呼ばれている。
大柄で勝ち気な強い女のイメージがあるからだろう。
-生まれながらの女王-
わたくしは国民からこうも呼ばれている。
恵まれた環境に生まれ、なんの悩みなく生きているイメージがあるからだろう。
それらは半分当たりで半分は間違いだ。
生まれながらに特権を持った者には、そうではない者にはわからない窮屈な義務や責任がある。
加えて、普通の母としての悩みもあった。
悩みの種の一つは、三女ローズウッドだ。
今日も、そのローズウッドを執務室によんでいる。
ローズウッドは、他の三人の娘とはずいぶん違う。
三人の娘は王家特有の金髪碧眼をしていたが、ローズウッドの髪と瞳は薄いピンク色をしている。
王家歴代の王女の中でも、それはローズウッドだけだった。
ローズウッドは魔力も、著しく乏しい。
すでに体格で負けている妹ダリアに、最近は魔力でも負けていると聞いていた。
それでもわたくしは、他の娘と同様にローズウッドを愛している。
だからこそ、毎朝執務室での歴史書の音読をかかさない。
歴史書の暗記は王女の義務の一つだった。
分厚い歴史書を一文字もたがわずに覚えるなんて、普通はできない。
けれど簡単な魔法を使えば、なんてことはなかった。
げんに四女のダリアでさえ、すでにできているのだから。
けれどそんな魔法でさえ、ローズウッドはいまだに使えない。
こんな王女に誰がついていくだろうか。
こんなことをしても、気休めでしかないのはわかっている。
けれど、じっとしてはいられなかった。
「それはひとえに代々の女王による魔法の加護のおかげなのだ」
眠たそうな目をしたローズウッドは、そこまで読むと『ふああああ』と大きな欠伸をしたのだ。
聞けば、昨夜は遅くまでチューちゃんとお喋りをしていたという。
チューちゃんとは、はつかねずみの姿をしたローズウッドの使い魔である。
なんて呑気なこと。
わたくしは、いらついた。
ーバシッー
鞭でローズウッドの左手を鞭でうつ。
「あ、痛い!」
ローズウッドは小さな声をあげると、うたれて赤く腫れている左手の甲に視線をはしらせていた。
「女王様。私にはこの本を暗唱するなんて無理です」
ローズウッドは、そう言うと閉じた歴史書を執務机の上に乱暴におく。
それからローズウッドは、わたくしへの不満を色々と口にし最後にこうつけ加えたのだ。
「わかりました。
私も、もっと努力をします。
だから、女王様、いえお母様も私をお姉様たちと比べて、余計な心配をしないで下さい。
私は私だから」
と。
ローズウッドがわたくしのことを、そんな風に思っていたのはショックだった。
「比べて憂慮しているわけでは、ありませんよ。
いつかわたくしの気持ちが、あなたに伝わる日がくるのを待っています」
目をふせて、両手をぎゅっと握っているローズウッドを静かな声でさとす。
そして、その日。
わたくしが犯した罪がわかるのですね。
ローズウッドが生まれてすぐに、わたくしはあの子にある魔法をかけた。
それはローズウッドの額に、黒い髑髏の形をした痣を見つけたからです。
それを知ったあなたは、わたくしを許してくれるのでしょうか。
それとも......。
わたくしは心の中で呟いた。
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