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三十一、修行の始まり
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ポプリ国とストーン国は、大陸の正反対に位置する。
そのせいで気候が全く違う。
一年中穏やかなポプリ国に対して、
ストーン国は寒さの厳しい季節が長い。
あとポプリ国は資源が少ないが、ストーン国は資源大国である。
「これだけ違っているんだもの。
生活しているうちに、驚かされることも多いと思うわ。
よく考えるとかなり急な結婚だったし。
これから上手くいくかしら」
窓から見えていた景色が見慣れたものから、初めて見るものへと変わってきた時急に心細くなり弱音をはく。
「そうですよね」
馬車の中は王宮の小さな応接室のように豪華で、向かいに座っているグラスがコクンと首を縦にふる。
「氷の王子様が立派な王様になって現れ、ローズ様に求婚する。
まるで物語のようないきさつに酔ってしまい、あれよあれよという間にここまで来てしまいましたが、落ちついてくると腑に落ちないことがあります」
「それは何なの?」
「え。えええと」
グラスは言いよどんだ。
「さすがにグラスの口からは言いにくいわね。
なら私の感じていることを言うわね。
王様は結婚を急ぎすぎている。
あれだけの大国の王だもの。
結婚相手には不自由しないはずなのに、どうしてかしら。
今まではね。
それは王様の情熱だと浮かれていたけど、冷静に考えるとおかしいわ。
だって、私より素敵な姫は、はいて捨てるほどいるもの。
ひょっとしたら、何か事情があるのかしら」
馬車がストーン国に近づくにつれ、一度わいた疑惑は胸の中で膨らんでゆく。
今さら言ってもどうしようもないことだ。
わかっている。
けれどグラスになぐさめて欲しかったのだ。
「おっしゃる通りです。
けれどローズ様。
亡くなった母の口ぐせが『結婚は修行だ』でした。
たとえ何があっても、グラスはローズ様の一番の味方です」
グラスは身をのりだしてきて、膝においていた私の手をグイと握りしめる。
安定のグラスの温かさが、全身に伝わってくるのだ。
「ありがとうグラス。
やはりあなたがいて心強いわ」
グラスの優しい瞳をのぞきこんだとき、微かな揺れとともに馬車が止まる。
「いよいよ到着したのね」
姿勢を正し座っていると、馬車の扉が開かれた。
「ようこそ。
ローズウッド王女様」
レオ王から差し出された手に、自分の手をかるく添える。
赤い肩章、金ボタン、濃紺の軍服姿のレオ王は、さっきまでの不安をナシにしてしまうほど素晴らしかった。
「本当はお迎えにあがりたかったのですが、軍の方で急用ができてしまい申し訳ない」
「いえ。こちらこそお出迎え感謝いたします」
頬を染めてそう言った時、聞き慣れない女の声が耳をかすめる。
「けっしてあなたは幸せになれない。
残念ね。出来損ないの王女様」
「失礼ね。一体誰なの」
キョロキョロとあたりを見回すが、周囲に変わった様子はない。
「ねえ、グラス。
さっき女の人の声がしたわよね」
こっそりグラスに耳打ちをする。
「いえ。私には何も聞こえませんでした」
「そうなの。じゃあ空耳ね」
そう思いなおした時、レオ王の隣にピタリと寄り添う黒衣の女と視線がぶつかった。
その時直感じた。
あれはこの女の心の声だったと。
どうやら私の修行は始まったようだ。
そのせいで気候が全く違う。
一年中穏やかなポプリ国に対して、
ストーン国は寒さの厳しい季節が長い。
あとポプリ国は資源が少ないが、ストーン国は資源大国である。
「これだけ違っているんだもの。
生活しているうちに、驚かされることも多いと思うわ。
よく考えるとかなり急な結婚だったし。
これから上手くいくかしら」
窓から見えていた景色が見慣れたものから、初めて見るものへと変わってきた時急に心細くなり弱音をはく。
「そうですよね」
馬車の中は王宮の小さな応接室のように豪華で、向かいに座っているグラスがコクンと首を縦にふる。
「氷の王子様が立派な王様になって現れ、ローズ様に求婚する。
まるで物語のようないきさつに酔ってしまい、あれよあれよという間にここまで来てしまいましたが、落ちついてくると腑に落ちないことがあります」
「それは何なの?」
「え。えええと」
グラスは言いよどんだ。
「さすがにグラスの口からは言いにくいわね。
なら私の感じていることを言うわね。
王様は結婚を急ぎすぎている。
あれだけの大国の王だもの。
結婚相手には不自由しないはずなのに、どうしてかしら。
今まではね。
それは王様の情熱だと浮かれていたけど、冷静に考えるとおかしいわ。
だって、私より素敵な姫は、はいて捨てるほどいるもの。
ひょっとしたら、何か事情があるのかしら」
馬車がストーン国に近づくにつれ、一度わいた疑惑は胸の中で膨らんでゆく。
今さら言ってもどうしようもないことだ。
わかっている。
けれどグラスになぐさめて欲しかったのだ。
「おっしゃる通りです。
けれどローズ様。
亡くなった母の口ぐせが『結婚は修行だ』でした。
たとえ何があっても、グラスはローズ様の一番の味方です」
グラスは身をのりだしてきて、膝においていた私の手をグイと握りしめる。
安定のグラスの温かさが、全身に伝わってくるのだ。
「ありがとうグラス。
やはりあなたがいて心強いわ」
グラスの優しい瞳をのぞきこんだとき、微かな揺れとともに馬車が止まる。
「いよいよ到着したのね」
姿勢を正し座っていると、馬車の扉が開かれた。
「ようこそ。
ローズウッド王女様」
レオ王から差し出された手に、自分の手をかるく添える。
赤い肩章、金ボタン、濃紺の軍服姿のレオ王は、さっきまでの不安をナシにしてしまうほど素晴らしかった。
「本当はお迎えにあがりたかったのですが、軍の方で急用ができてしまい申し訳ない」
「いえ。こちらこそお出迎え感謝いたします」
頬を染めてそう言った時、聞き慣れない女の声が耳をかすめる。
「けっしてあなたは幸せになれない。
残念ね。出来損ないの王女様」
「失礼ね。一体誰なの」
キョロキョロとあたりを見回すが、周囲に変わった様子はない。
「ねえ、グラス。
さっき女の人の声がしたわよね」
こっそりグラスに耳打ちをする。
「いえ。私には何も聞こえませんでした」
「そうなの。じゃあ空耳ね」
そう思いなおした時、レオ王の隣にピタリと寄り添う黒衣の女と視線がぶつかった。
その時直感じた。
あれはこの女の心の声だったと。
どうやら私の修行は始まったようだ。
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