お飾り王妃のはずなのに、黒い魔法を使ったら溺愛されてます

りんりん

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三十三、オニキス女官

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「あなたとも、以前どこかでお会いしたことがあったかしら」

できるだけ優しい声をだし、ぎこちない笑顔をつくる。

初対面の人にこれだけ憎まれるなんて不思議だった。

ひょとしたら、過去になにかとんでもない失態をやらかしているのかもしれない。

勇気をだして話しかけてみた。

「いえ」

けれど、返ってきた言葉はたった一言だけだ。

それからは微妙な沈黙ができる。

「後ほど紹介するつもりでしたが、この者は王様の専属女官、オニキスでございます。
ごらんの通り口数は少ないですが、誠実な仕事ぶりで、王様の厚い信頼を得ております。
見ての通り、まだ若く至らないことも多いと思いますが、ローズウッド王女様からも可愛がっていただければ幸いです」

見かねたのね。

ナール宰相が私達の会話に入ってきてくれた。

「あなたがオニキス女官なのね。
噂はポプリ国にいた頃から、聞きおよんでおります。
王様が大変お世話になっているそうね」

薄々気がついてはいたけれど、やはり彼女だったのね。

レオ王の愛人。

かもしれない女。

年齢は私よりも、少し上ぐらいだろうか。 

ひょっとしたら同じ年かもしれない。

けれどオニキスの身体は、幼児体型の私とは比べものにならないほど成熟している。 

華奢そうなのに、服の上からでもはっきりとわかる豊満な胸、ひきしまったウエスト、はりだした腰。

ぬけるように白い肌、漆黒の黒髪、ふっくらした唇、唇の横には小さな黒子が一つ。

男好きする女。

本を読んでいると度々出くわした言葉だった。

そのつど脳内で様々な女性像をイメージしてきたが、オニキスほど蠱惑的ではない。 

「とんでもございません。
こんな若輩者を側におき可愛がっていただき、王様の深い愛に感謝しなければならないのは私の方です」

そう言うとオニキスは低く頭を下げる。

一見へりくだったような挨拶は、聞きようによっては嫌味たっぷりで挑戦的なのだ。

「そうですか」

「はい」

短い受け答えには、目には見えない火花が散っていた。

「王様。
領主会議がそろそろ始まる頃です。
いそぎましょう。
ではオニキス。
ローズウッド王女様を頼みますぞ」

ナール宰相はそう言うと、レオ王とオニキスの顔に交互に視線をはしらす。 

「はい。宰相。
婚礼がすむまでは、王女様には最高の客間を用意しております」

オニキスが言いおわると、レオ王は宰相とゆっくりと王宮の奥へ向かう。

「そうだ。ローズウッド王女」

歩き始めた時レオ王がこちらをふり向き、何か言おうと足を止めたが、結局そのまま進んでいった。

たいしたことじゃなかったから、言うのをやめたのだろう。

けど、何か気になってしかたがない。

早く二人きりになって、色々なことを聞いてみたいけど、今はしょうがないわね。

「では。王女様。
私達もまいりましょう」

王様達が真っ直ぐに伸びる廊下を右折し、その姿が見えなくなるとオニキスが低い声をだす。 

それに無言でうなずくと、王宮内の最奥にあるという部屋へむかう。
   
  





    
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