お飾り王妃のはずなのに、黒い魔法を使ったら溺愛されてます

りんりん

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六十、緑のパンケーキ オニキス女官視点

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王様は、初夜以来王妃様と寝室を共にしていないようだ。

『もし、王様が王妃様を愛したら、その瞬間王妃様は死ぬよ。
たった今、あたいが呪いをかけたんだ』

昔、あたいが口走った戯言のせいだろうか。 

まさかね。

王様だって、あたいにそんな力があるとは、信じてないだろうし。

なら、どうして。

ひょっとしたら、あたいのことを多少でも、気に掛けてくれているのだろうか。

かすかな希望をもつと、余計にローズウッド王妃様を苦しめたくなってきた。

人間とは欲深いものだね。

貧乏村から脱出して、王様のもとで働けるだけで満足しなければならないのに、毎日王様と顔をあわせているうちに、馬鹿な期待をかけるようになっていた。

王様の隣で、幸せそうにしている王妃様の姿なんか見たくない。 

それで嫌がらを始めたのだ。

まずはナール宰相に二つの提案をした。

公務の休業と側妃の件である。

『懐妊をしやすい環境づくりの為に、しばらく公務を休んでいただくのは、良いことだろう。
けれど、一年間で懐妊できなければ、王様に側妃というのは、ちと急すぎるのではないだろうかね。
レオ王様のお気持ちもあるし』

あたいの提案を最初聞いた時は、宰相はうかない顔をした。

『王様にとって結婚は仕事。
きっと王様も理解してくれるはずです。
ナール宰相。
側妃には、王妃様より、もっと強力な魔法を使える方を、迎えたらどうでしょうか。
もし、わが国が戦になった時、戦力になるような魔法が使える方を、捜してまいります。
実は、ポプリ国の他にも、魔法使いの国があったのですよ」

王様には、国の戦力になれる妃が欲しい。

ナール宰相は、ことあるごとにそう言っていた。

そこをうまくついたわけだ。

もちろん、ポプリ国以外の魔法使いの国なんて知らない。

「オニキス女官。
それは本当なのか。
さすがに側妃を、ポプリ国から迎えるわけにはいかんからな」

目を大きく見開き、驚きの声を上げるナール宰相に、あたいは首を縦にふった。

その瞬間、提案は受け入れられたのだ。

それを王妃様に告げる時は、胸がワクワクした。

打ちひしがれた顔をじっくりと、拝みたかったからね。

「なんですって」

決定を聞いた王妃様は、侍女とともに声をはり上げた。 

けれど、胸がスカッとしたのは、その時だけだったのだ。

その後、王妃様は嬉々として薬草園に通い始めた。

ショックで、部屋に引きこもると思っていたのに。

王妃様は、そこで育てた薬草を使ったお菓子を提案した。

『王妃様のパンケーキ』だ。

それは王宮内で、すぐに大人気となる。

あたいは、悔しかった。

だから、陥れるためにヘレン侍女長達に『王妃様のパンケーキ』を食べたら、体調をこわしたと、嘘をつくようにしむけたのだ。

大金をちらつかせてね。

けれど、それも失敗した。

王妃はヘレン侍女長の嘘を即座に許したばかりか、彼女の体調を心配して、新しいパンケーキまで考案したのだ。

感動したヘレン侍女長は、年甲斐もなく王妃様の目の前で嗚咽していたね。

もちろん残りの侍女達も、すっかり王妃様に懐柔されて嘘を告白した。

あれは王妃様の優しさなんかじゃない。

ただの人気取りの芝居だ。

悔しかった。

あたいが悔しがるほど、手首のサソリのアザがはっきりと形を露わにする。

そして、マグマのような黒い感情が、身体を駆け巡るのだ。


 
 
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