お飾り王妃のはずなのに、黒い魔法を使ったら溺愛されてます

りんりん

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七十、バーレン解呪師

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召喚魔法の封印をとく。

そんなことが簡単にできるのだろうか。

それにだ。

その魔法の使い手には、成仏できない邪悪な霊が常にまとわりついてくると、かねてから聞きおよんでいる。

「やっぱり怖いわ」

想像しただけで、身体にゾクリと冷たいものが走った。

カバッとベットから身をおこすと、自分の両手を背中にまわし、お昼の決意を後悔するのだ。

「あわてることないわ。
あの大解呪師が失敗するわけないわよ」

自分で自分を慰めてみる。

今回王様が招聘したバーレン解呪師のことを、魔法辞典で調べてみたのだけど、その輝かしい経歴に思わず声を上げたほどだ。

「ニャーン。
そうだとは限らないわ。
だって今ではあのバーレン解呪師もすっかり老いて、術がおちていると囁かれているのよ。
魔女達の間ではもうおわった人なの」

足元で丸くなって眠っていたブーニャンが、目をさますと金色の瞳を静かに輝かせる。

「そういえば辞典に載っていた功績も、ずいぶん昔の物ばかりだったわ」

しょんぼりと肩を落とすと、枕元でチューちゃんが眠たそうな声をだす。

「なにをブツブツ言っているんだ。
うるさくて目がさめたじゃないか。
おい、ブーニャン。
その年で女子トークもないだろう」

「あら、失礼ね。
私だってローズにおこされたのよ。
ねえ。ローズ。
夜中に一人でブツブツ言ったりして、一体どうしたのよ」

「明日が不安なのよ。
王様の解呪がうまくいかなかったら、どうしようって。
最初はね。
なんとしてでも、召喚魔法を復活させるつもりだったの。
カデナ王妃と話しあって、ケリをつけるためにね。
でも、だんだんと怖ろしくなってきて。
色々と考えているうちに、目がさえて眠れなくなったのよ」

「なるほどね。
その程度の気持なら、召喚魔法を使おうなんて思わない方がいいわよ」

「召喚魔法の使い手になると、しょっちゅう色々な悪霊が見えてしまうっていうのは、本当なのかしら」

「本当よ。
気の弱い使い手だと、気がふれてしまうケースも多いわ」

毛繕いをしながらブーニャンが素っ気なく返事をかえす。

「そーなんだ。
やっぱり私には無理かも」

とまどいながら言うと、ブーニャンもチューちゃんも、ハアとため息をついて先に眠ってしまった。

負けじとあわてて頭から布団をかぶり、目を閉じると今度はすぐに眠ってしまったようだ。

「ローズ様。
起きてください。
もうすぐ王様との約束の時間ですよ」

目覚めた時には、いらついたグラスの声が頭からふってきた。

「もう。
もっと早く起こしてくれたらよかったのに。 グラスは意地悪なんだから」

「意地悪なもんですか。
声をからして、何回起こしたことか」

そう言うとグラスは、腰に手をあてて眉をひそめる。

「ごめんなさいね」

グラスに両手をあわせると、すぐに支度をはじめ、どうにか王様との約束の時間に書斎についた。

「遅くなってすいません」

書斎の扉をあけると、王様、ナール宰相、ユリア騎士、オニキス女官の視線が一斉にそそがれる。

「ローズ。こちらがバーレン解呪師だ」

王様に紹介されて一人の痩せこけた老人が、こちらへ深々と頭を下げる。

「王妃様。
王様は私がお救いします。
どうぞご安心を」

バーレン解呪師は、かすれた声をしぼりだす。

白髪頭のバーレン解呪師は、杖をついて立つのもやっとのようだ。

ブーニャンの言ってたことはどうやら、正解だったみたいね。

がっかりしていると、王様が机の後にある壁をドンと手で押す。

すると壁はクルリと回転し、奥にもう一つの部屋が現れたのだ。
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