お飾り王妃のはずなのに、黒い魔法を使ったら溺愛されてます

りんりん

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七十一、ポプリ国の宝剣

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一般的に万が一に備えて、どの国の王宮にもこんな風に隠し部屋が用意されている。

もちろんクーデタや、戦争とは無縁のようなポプリ国も例外ではない。

だから、隠し部屋の存在には驚きはしなかった。

けれど、その設えにはエッと声を上げてしまう。

「お母様の肖像画を、ここへ移したんですが」

立ち入り禁止区域の中にあった小屋の絵が、そのままそっくり移動したような感じだ。

「バーレン解呪師の提案でな」

部屋の中に進む王様は、さりげなく私の肩を抱く。

「皆がいるので恥ずかしいです」

俯いてモジモジとする。

「誤解するな。
これもバーレン解呪師の作戦なのだ。
彼の時前調査によると、カデナ王妃の魂は見つけにくいらしい。
それで母の肖像画を並べたり、私達の仲の良さを見せつけて、霊を刺激してあぶりだす方法をとることにした」

「わかりました。
そのつもりでいます」

「では、遠慮なくいくぞ」

そう言うと王様は私を、突然横抱きにする。

「喜べ王妃。
今から、私の呪いが解けるんだ。
これからはたっぷりと愛しあえるな」

「とても喜しいです」

大きな声をはりあげる王様のたくましい腕の中で、コクンとうなずく。

そして、つい気になってオニキス女官へ視線を走らせる。

「まさか私の呪いの話を本気にされていたなんて、思いもかけませんでした。
ひょっとして、どうしても王妃様を愛せないから、口実にしておられるのではないかしら。
だとしたら、呪いを解こうとしているのも、演技なのですよね」

抑えた声でそう言うオニキス女官は、不敵な笑みをたたえながら、用意された椅子の一つに腰をおろした。

相変わらず全身黒ずくめの装いだ。

チラリと見える手首のアザは発光し、身体からは強烈な死者の臭いを放っていた。

「たまらないわね」

思わず鼻をつまんだ時、王様の足がピタリと止まる。

「では、王妃様。
私の隣へお座り下さい」 

王様はそう言うと、バチンとウインクを投げてくる。

「はい」

演技だとわかっているのに、王様の色気にドギマギする自分が情けない。

もっとしっかりしないと。

自分をいさめながら、バーレン解呪師の正面に置かれた二つの椅子の一つに腰をおろす。

「ニャーン。
あの女から漂う死者の臭いが凄いわね。
バーレン解呪師は、まだ何も見えてないようだけど。
で、ローズの方はどうなの」

膝の上に飛び乗ったブーニャンが、首を傾げる。

「はっきりと姿は見えないわ。
けど、オニキス女官がすっぽりと黒い靄に包まれているのはわかる」

肩にのるチューちゃんを片手でなでながら、慎重に答えた時だった。

「では、今から始めますぞ。
皆さん、心の準備はよろしいか」

バーレン解呪師がそう言うと、私達を囲むように座るナール宰相、ユリア騎士、オニキス女官へゆっくりと視線を移してゆく。

「はい。もし王様になにかあれば、命にかけてもお守りするつもりです」

きっぱりとしたユリア騎士の言葉に、ナール宰相が深くうなづいた。

「王妃様も心の準備はよろしいですか」

次にバーレン解呪師は、私の目をのぞく。

「はい。
よろしく、お願いいたします」

コクンと首を縦にふった時、「その前に見せておきたい物がある」と王様が声を上げた。

「これは母からいただいた剣だ。
母によると、王族に代々伝わる剣で、どんな悪霊でも仕留められるらしい。
遠い昔、ポプリ国から献上された剣だそうだ」

そう言うと王様は、腰にさした一本の剣をとりだす。

「実に素晴らしい剣ですな」

鞘に色とりどりの宝石が散りばめた剣に、バーレン解呪師は目を丸くする。

「けれど問題が一つある。
誰もが扱える剣ではないからだ。
扱えるのは、この剣の本当の主だけという」

「なるほど。
しかし、心配は無用じゃ。 
私の術があれば十分ですから」

バーレン解呪師はそう言うと、鼻をヒクヒクさせて高笑いをした。

ポプリ国の宝剣。

それをストーン国へ授けたのは、ひいお婆さまかしら。

いえ、もっともっと古い話よね。 

思考が呪いからはずれた時だった。

「う、ううう」

オニキス女官が叫びながら立ち上がり、座っていた椅子をこちらへ投げつけてきたのは。

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