お飾り王妃のはずなのに、黒い魔法を使ったら溺愛されてます

りんりん

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七十三、召還魔法

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「カデナ王妃様。
どうか姿を見せて下さい」

ギュッと目をとじて真摯に祈った。

するとオルゴールから金色の光があふれ、
まるで水が土へ吸いこまれていくように、ごく自然に光が身体の中へと流れてゆくのだ。

「ローズ。
ついに召喚魔法が戻ったのよ」

ピョンとブーニャンが跳ねる。 

「大変だ。
オイラのベストも、ローズの髪も金色に変わっているぞ」

「嘘でしょ」

チューちゃんの言ったことを確かめようと、肩にかかる髪を手でつかみ、視界にいれた。

「本当だわ」

掌にのる黄金色の髪に驚きの声をあげる。

「変わったのは髪だけじゃないわ。
ローズの瞳は、もうピンク色じゃない。
お母様と同じすんだ青い色よ」

「何もかもが、生まれた時の状態に戻ったのね」

「アーバン女王の封印がとけたのよ」

そう言うとブーニャンは、これまでにない高い声でないた。 

「カデナ王妃様。
こそこそと隠れるのはおやめ下さい。
ちゃんと話しあいましょう。
早くここへいらして下さいませ」 

両手をあわせて、もう一度祈った時だった。

全身に流れる血が一度に沸騰したかのように、身体があつくなる。

「『こそこそと』だなんて失礼だわ」

オニキス女官をとりまいていた黒い靄の中から、とうとうカデナ王妃が姿を現した。

「肖像画のお姿とはまったく違いますね」 

サソリがはう、真っ黒なドレスを纏ったカデナ王妃は骸骨と化していたのだ。 

「お黙りなさい。
誰でもいつかこうなるのよ」

「いえ。なりません。
そんな風に醜い姿になるのは、この世に間違った未練を残した者だけですから」 

「生前王宮で、私がうけた苦しみもわからないくせに生意気だわ」

「苦しんでいたのはカデナ王妃だけじゃありません。
エレーナ王妃様も、王子だったレオ王も同じです。
これ以上この世をさまよっても、どうしようもないわ。
これで終わりにしましょう」

しっかりと、眼球のないカデナ王妃の顔を見据えた。

「今ならまだ間に合います。
レイサ王子のいる天界へ戻れますから」

「そうだった。
私にはレイサ王子がいたのだ」

「ないものばかりに固執しすぎて、ご自分の持っている大事な物を見失っていましたね」

「なんと愚かなことを」

天をあおぎカデナ王妃が嘆いた時、ブーニャンが手に宝剣を渡してくれた。

「この剣の主は、ローズに間違いないわ」

ブーニュンはそう言うけれど、本当に剣をぬくことができるだろうか。

けれど心配にはおよばなかった。

「さようなら。カデナ王妃」

スルリと剣を抜くと剣先を、カデナ王妃の胸元に突きあたる。

するとあっけなくカデナ王妃の姿は、消えていったのだ。

「これでもう安心ね」

ホッとしたせいか、全身から急に力が抜けて、膝からくずれ落ちていく。

「ローズウッド。ローズウッド。
しっかりするんだ」

駆けつけてきた王様に、思いきり抱きしめられる。

「レオ王様が生きている。
よかったです」 

厚い胸の中でそれだけ告げると、意識がどんどんと遠ざかっていった。

 





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