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第1章 英雄と竜帝
第30話 英雄、襲来!
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「ふむ。やはりここと、あの部分か。」
額冠と勇者の行方を捜索していたヴァル・ムングは違和感のある場所を見付け出していた。景色に違和感のある場所を発見してしまったのである。わずかに光の指し方に違和感があった。普通は見ただけでは分からない様な些細な違いであった。
「空間移送、幻術、結界陣、どれもこれも高度な魔術を駆使しているな?全く古代竜どもめ、厄介なものを作ってくれる。」
普通はただ結界陣を敷いただけでは、立ち入れない場所を作り出すだけで、結界陣の存在が目視で判別できてしまう。その上から幻術を施してカムフラージュを行う。その段階ではまだ、見えているのに到達できない場所を作り出すだけなので、違和感を残してしまう。それを補うため、空間移送の魔術を用い、似た景色の場所へ転送するのである。ここまで施せば、結界に胃の存在に気付かれることは、ほぼない。
「見つけるところまでは、私だけでも可能だった。だが……、」
ヴァルは懐から小杖を取り出した。
「あのはぐれ竜には感謝せねばなるまい。これがなくては解除できぬからな。」
その小杖は名を[ディスペル・キー]といった。まさに結界の錠を開ける鍵といったところか。この小杖ははぐれ竜レギンがヴァルに与えたものであった。レギンは竜の隠れ里には何らかの結界が張られていると予測していた。その解除は困難を極めるとも考えていた。そのため、絶大な解呪の力を持つことで名高いディスペル・キーをヴァルに持たせたのである。竜殺の魔剣グラム・ソードと並ぶ伝説の秘宝である。
「解呪せよ!そして、その真なる姿を暴きたまえ!」
その言葉と共に、彼の目の前の景色の形が歪んでゆく。次第に幻術が姿を消し、結界陣の光の格子と隠れ里の風景が露になる。結界陣の格子も次第に形が歪み始め、水晶が割れるような音を立てて崩れ去った。最早、ヴァルの侵入を阻むものは何もなくなってしまった。
「ついに見つけたぞ!これが竜の隠れ里か!」
ヴァルは歓喜した。数日間、ずっと周辺をしらみ潰しに捜索していたのである。ようやく辿り着いたのだ。このことはヴァルにとっては勇者の額冠を見つけたことにも等しかったのである。
「おのれ!よくも里の結界を!」
異常事態に気が付いた住人たちが次第に集まってきた。その表情は様々だが、怒りの感情を露にしているも者が多い。目の前の侵入者が里の守りを打ち砕いたのである。無理もない。
「ほう。なるほど、そういうことか。どおりで私の感知能力に引っ掛からなかったわけだ。」
里の竜族は皆、人の姿をしていた。人の姿をとることで、強大な力を抑え、感知されにくくしていたのである。結界に加えて感知されることも防いでいたのである。何千年も見つからないのは当然だった。
「手の込んだことをしよる。まあ、そのおかげでまた一つ、私の偉業が新たに加わった。」
ヴァルは高らかに笑った。そしてさらにもう一つ加わることを予感していた。
「勇者はどこにいる?必ずいるはずだ。差し出さねば、貴様ら全員、命がないと思え。」
その言葉とともに強烈な殺気を放った。これにはさすがに竜族といえども身震いせざるをえなようだ。相変わらず怒りの表情を崩さずにはいるものの、明らかに恐怖の表情も入り交じっている。
「ふはは、怯えろ!すくめ!我にひれ伏せるがよい。」
「おのれ!人間風情が図に乗るな!」
竜族のうち、何人かがヴァルの前に進み出た。そして、彼らは次第に竜の本来の姿をとって、ヴァルの前に立ちはだかった。圧巻の光景だった。端から見れば、追い詰められているのは明らかにヴァルのほうである。そんな状況にも関わらず、彼は余裕の笑みを浮かべていた。
「忘れたか?私は竜殺の魔剣グラム・ソードを持っている。それに貴様らが敬愛して止まない竜帝の力を我が手にしている。これが何を意味するか、わからぬわけではあるまいな?」
《ほざけ!》
ヴァルの脳内に、その声が響き渡る。だが、彼にとっては虚勢以外の何物でもなかった。
「後悔させてやろう。勇者を素直に差し出さなかったことをな。存分に我が魔剣の切れ味を味わうがいい。」
竜殺の魔剣を抜き放った。その刀身はいつにも増して不気味な輝きを放っていた。その姿はこれから竜の生き血を存分に吸うことを喜んでいるかのようだった。
額冠と勇者の行方を捜索していたヴァル・ムングは違和感のある場所を見付け出していた。景色に違和感のある場所を発見してしまったのである。わずかに光の指し方に違和感があった。普通は見ただけでは分からない様な些細な違いであった。
「空間移送、幻術、結界陣、どれもこれも高度な魔術を駆使しているな?全く古代竜どもめ、厄介なものを作ってくれる。」
普通はただ結界陣を敷いただけでは、立ち入れない場所を作り出すだけで、結界陣の存在が目視で判別できてしまう。その上から幻術を施してカムフラージュを行う。その段階ではまだ、見えているのに到達できない場所を作り出すだけなので、違和感を残してしまう。それを補うため、空間移送の魔術を用い、似た景色の場所へ転送するのである。ここまで施せば、結界に胃の存在に気付かれることは、ほぼない。
「見つけるところまでは、私だけでも可能だった。だが……、」
ヴァルは懐から小杖を取り出した。
「あのはぐれ竜には感謝せねばなるまい。これがなくては解除できぬからな。」
その小杖は名を[ディスペル・キー]といった。まさに結界の錠を開ける鍵といったところか。この小杖ははぐれ竜レギンがヴァルに与えたものであった。レギンは竜の隠れ里には何らかの結界が張られていると予測していた。その解除は困難を極めるとも考えていた。そのため、絶大な解呪の力を持つことで名高いディスペル・キーをヴァルに持たせたのである。竜殺の魔剣グラム・ソードと並ぶ伝説の秘宝である。
「解呪せよ!そして、その真なる姿を暴きたまえ!」
その言葉と共に、彼の目の前の景色の形が歪んでゆく。次第に幻術が姿を消し、結界陣の光の格子と隠れ里の風景が露になる。結界陣の格子も次第に形が歪み始め、水晶が割れるような音を立てて崩れ去った。最早、ヴァルの侵入を阻むものは何もなくなってしまった。
「ついに見つけたぞ!これが竜の隠れ里か!」
ヴァルは歓喜した。数日間、ずっと周辺をしらみ潰しに捜索していたのである。ようやく辿り着いたのだ。このことはヴァルにとっては勇者の額冠を見つけたことにも等しかったのである。
「おのれ!よくも里の結界を!」
異常事態に気が付いた住人たちが次第に集まってきた。その表情は様々だが、怒りの感情を露にしているも者が多い。目の前の侵入者が里の守りを打ち砕いたのである。無理もない。
「ほう。なるほど、そういうことか。どおりで私の感知能力に引っ掛からなかったわけだ。」
里の竜族は皆、人の姿をしていた。人の姿をとることで、強大な力を抑え、感知されにくくしていたのである。結界に加えて感知されることも防いでいたのである。何千年も見つからないのは当然だった。
「手の込んだことをしよる。まあ、そのおかげでまた一つ、私の偉業が新たに加わった。」
ヴァルは高らかに笑った。そしてさらにもう一つ加わることを予感していた。
「勇者はどこにいる?必ずいるはずだ。差し出さねば、貴様ら全員、命がないと思え。」
その言葉とともに強烈な殺気を放った。これにはさすがに竜族といえども身震いせざるをえなようだ。相変わらず怒りの表情を崩さずにはいるものの、明らかに恐怖の表情も入り交じっている。
「ふはは、怯えろ!すくめ!我にひれ伏せるがよい。」
「おのれ!人間風情が図に乗るな!」
竜族のうち、何人かがヴァルの前に進み出た。そして、彼らは次第に竜の本来の姿をとって、ヴァルの前に立ちはだかった。圧巻の光景だった。端から見れば、追い詰められているのは明らかにヴァルのほうである。そんな状況にも関わらず、彼は余裕の笑みを浮かべていた。
「忘れたか?私は竜殺の魔剣グラム・ソードを持っている。それに貴様らが敬愛して止まない竜帝の力を我が手にしている。これが何を意味するか、わからぬわけではあるまいな?」
《ほざけ!》
ヴァルの脳内に、その声が響き渡る。だが、彼にとっては虚勢以外の何物でもなかった。
「後悔させてやろう。勇者を素直に差し出さなかったことをな。存分に我が魔剣の切れ味を味わうがいい。」
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