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第2章 黒騎士と魔王
第43話 地獄の沙汰も運次第?
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「さーて、次は何だっけな?」
あれから数件の技能試験を回り、ようやく半数を終えたところであった。罠回避やら薬草判別といった専門知識が必要な試験を受けた。
サヨちゃんから教わった知識と自分自身の知識を総動員して臨んだものの、まるっきり手応えがなかった。何か教えてもらったのと違う。何か想像してたのと違う!教えてもらったとおりにすると即失格、終了!なんてパターンもあった。何ソレ。一体どうすりゃいいのさ。
それだけならいいが、また、力士である。俺が気絶させてしまったため、しばらくの間は見かけなかったが、ヤツはすんなり成功させているようだった。あいつどんだけ万能なんだよ!もう、あいつに勇者やらせた方が良くね?
力士も力士だが、地味に商人や遊び人も侮りがたい。あいつらもヤバい。普通に戦闘職とかやった方が良さそうなレベルである。もう、嫌になるわ。
「はい!では、“強運”技能試験を始めます!」
次の試験会場に入った途端、思わずズッコケそうになった。あのさ、“強運”て何?運も技能に入んの?運も実力のうち、って誰か偉い人が言ってたような気がするが、一体何をするんだよ。
「こちらはすぐに終わりますので、先着順で行います。では、この箱から紙を一枚ずつ引いて下さい。」
まさかのくじ引き!コレを試験と呼んでいいのだろうか?もう、なんだかわからなくなってきた。
「む……むむ!これだ!」
まず、一人目が引いた。その紙には何か記号のようなものが書かれているようだ。
「それは……惜しい。二等ですね!」
記号を確認した試験官が結果を告げる。「惜しい」とはなんだ。くじ引きに惜しいもクソもあるか。
「はい、次の方どうぞ!」
呼ばれて次々と順番通りにくじを引いていく。
「……三等か。」
「うわあ!六等だ!」
「やったあ!一等だ!」
方々から結果に一喜一憂する様が伝わってくる。そろそろ、俺の出番だ。さて……、
「……え~、ヨシ!コレだ!」
俺はくじを一枚つかみ、折りたたまれた紙を開いてみた。そこには……、
「あ、あれ?何も書いてないぞ?白紙?」
「何ですと?勇者殿、ちょっと見せてもらって良いですか?」
紙を受け取った試験官は紙を凝視した後、何度も裏表を確認し、しばらく考え込んだ。と思ったら口を開いた。
「あの、皆さん。少々お待ち頂けますか?」
そう言って試験官はバックヤードに消えていった。一体何事だ?何の緊急事態?その時、試験会場に緊張が走り、どよめき始めた。
「え?何?何があったの?」
「どういうこと?」
「勇者様がすごいことしたんじゃないの?」
方々から様々な声が上がる。あの~、また、オレ、何かやっちゃいました?今日何度目だよ?この展開。
「あの、勇者殿。ちょっと、ご同行願えますか?」
「え?は、はあ。」
なんか、お呼ばれしちゃったんですけど。渋々ながらバックヤードの方まで付いていった。すると試験官は何やら神妙な顔になり、小声で話し始めた。
「あまり大声で話せないことなので小声でお願いします。今から話す内容はくれぐれも内密にお願い致します。」
何だ?えらく改まって?そんな内容の話すんの?これから。
「ご恐縮で申し訳ありませんが、結果だけ先に申しますと、“はずれ”でございます。」
「は?今何と?」
“はずれ”って何よ?先に引いた人たち、全部、等級付いてたじゃん?等すら付かず、はずれるとは何なのか。
「この試験のタネ明かしをしますと、くじの紙自体に運の力を判定する能力がありまして、手に取った瞬間に判定され、記号が表示されるしくみとなっております。」
「ほうほう、なるほど。」
なんだ。ただのくじ引きに見せかけた“強運”判定試験だったわけだ。なるほど、よくできてんな、オイ。てっきり、適当にやってんのかと思った。
「勇者殿の場合は……正直に申しますと、“判定不能”という事になります。」
「は!?」
なにそれ?判定不能って何よ?ありえんの?それ?
「いやー、こちらとしても、前代未聞の事態でして、紙の製造元に問い合わせた後、我々ギルド内で協議した結果、“はずれ”とさせて頂きました。」
「ありえないんだぜ!?」
俺は卒倒しそうになった。信じられない。
「納得のいかない事とは存じ上げますが、ご了承下さい。」
俺は白目を剥きながら、バックヤードを出て、強運技能試験会場を後にした。
「オイは特等でゴワス!」
背後の会場から何か聞こえてきたが、聞かなかったことにしよう。
あれから数件の技能試験を回り、ようやく半数を終えたところであった。罠回避やら薬草判別といった専門知識が必要な試験を受けた。
サヨちゃんから教わった知識と自分自身の知識を総動員して臨んだものの、まるっきり手応えがなかった。何か教えてもらったのと違う。何か想像してたのと違う!教えてもらったとおりにすると即失格、終了!なんてパターンもあった。何ソレ。一体どうすりゃいいのさ。
それだけならいいが、また、力士である。俺が気絶させてしまったため、しばらくの間は見かけなかったが、ヤツはすんなり成功させているようだった。あいつどんだけ万能なんだよ!もう、あいつに勇者やらせた方が良くね?
力士も力士だが、地味に商人や遊び人も侮りがたい。あいつらもヤバい。普通に戦闘職とかやった方が良さそうなレベルである。もう、嫌になるわ。
「はい!では、“強運”技能試験を始めます!」
次の試験会場に入った途端、思わずズッコケそうになった。あのさ、“強運”て何?運も技能に入んの?運も実力のうち、って誰か偉い人が言ってたような気がするが、一体何をするんだよ。
「こちらはすぐに終わりますので、先着順で行います。では、この箱から紙を一枚ずつ引いて下さい。」
まさかのくじ引き!コレを試験と呼んでいいのだろうか?もう、なんだかわからなくなってきた。
「む……むむ!これだ!」
まず、一人目が引いた。その紙には何か記号のようなものが書かれているようだ。
「それは……惜しい。二等ですね!」
記号を確認した試験官が結果を告げる。「惜しい」とはなんだ。くじ引きに惜しいもクソもあるか。
「はい、次の方どうぞ!」
呼ばれて次々と順番通りにくじを引いていく。
「……三等か。」
「うわあ!六等だ!」
「やったあ!一等だ!」
方々から結果に一喜一憂する様が伝わってくる。そろそろ、俺の出番だ。さて……、
「……え~、ヨシ!コレだ!」
俺はくじを一枚つかみ、折りたたまれた紙を開いてみた。そこには……、
「あ、あれ?何も書いてないぞ?白紙?」
「何ですと?勇者殿、ちょっと見せてもらって良いですか?」
紙を受け取った試験官は紙を凝視した後、何度も裏表を確認し、しばらく考え込んだ。と思ったら口を開いた。
「あの、皆さん。少々お待ち頂けますか?」
そう言って試験官はバックヤードに消えていった。一体何事だ?何の緊急事態?その時、試験会場に緊張が走り、どよめき始めた。
「え?何?何があったの?」
「どういうこと?」
「勇者様がすごいことしたんじゃないの?」
方々から様々な声が上がる。あの~、また、オレ、何かやっちゃいました?今日何度目だよ?この展開。
「あの、勇者殿。ちょっと、ご同行願えますか?」
「え?は、はあ。」
なんか、お呼ばれしちゃったんですけど。渋々ながらバックヤードの方まで付いていった。すると試験官は何やら神妙な顔になり、小声で話し始めた。
「あまり大声で話せないことなので小声でお願いします。今から話す内容はくれぐれも内密にお願い致します。」
何だ?えらく改まって?そんな内容の話すんの?これから。
「ご恐縮で申し訳ありませんが、結果だけ先に申しますと、“はずれ”でございます。」
「は?今何と?」
“はずれ”って何よ?先に引いた人たち、全部、等級付いてたじゃん?等すら付かず、はずれるとは何なのか。
「この試験のタネ明かしをしますと、くじの紙自体に運の力を判定する能力がありまして、手に取った瞬間に判定され、記号が表示されるしくみとなっております。」
「ほうほう、なるほど。」
なんだ。ただのくじ引きに見せかけた“強運”判定試験だったわけだ。なるほど、よくできてんな、オイ。てっきり、適当にやってんのかと思った。
「勇者殿の場合は……正直に申しますと、“判定不能”という事になります。」
「は!?」
なにそれ?判定不能って何よ?ありえんの?それ?
「いやー、こちらとしても、前代未聞の事態でして、紙の製造元に問い合わせた後、我々ギルド内で協議した結果、“はずれ”とさせて頂きました。」
「ありえないんだぜ!?」
俺は卒倒しそうになった。信じられない。
「納得のいかない事とは存じ上げますが、ご了承下さい。」
俺は白目を剥きながら、バックヤードを出て、強運技能試験会場を後にした。
「オイは特等でゴワス!」
背後の会場から何か聞こえてきたが、聞かなかったことにしよう。
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