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第3章 迷宮道中膝栗毛!!

第118話 なぞのばしょ

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「あれ?ここどこ?」


 一瞬にして、見覚えのない場所に移動していた。さっきまでいた場所とは雰囲気さえ違っているように感じた。まさか、違うダンジョンとかじゃないよね?


「チッ!ろくでもないことに巻き込まれちまった。」

「ありゃ?ファルちゃんまで来ちゃったの?」


 そのとき、自分の方に何かが飛んでくるのを感じて、反射的に飛び退いた。


「ちゃん付けで呼ぶなと言ったはずだが?」


 風魔法を当てるつもりだったのか!避けて正解だった。


「ムキになるなよ!ただの呼び方だろ!」

「うるさい。次があったら、確実に当てるからな。」


 俺たちはこんなしょうもないことで仲間割れをしていていいんだろうか?何かとてもイヤな予感がしていた。ヤバイ場所へ転送されてしまったのではないだろうか?早くエルちゃんを救出しないといけないのに!


「ところでここはどこなんだ?」

「知るかよ!」


 そりゃそうか。いくら魔術師でもなんでも知ってるわけじゃないか。


「おかしい。」

「何が?」


 知らない、わからないとは言っているが、コイツは魔法で何か探っているようだった。ナニで何を探れるのかわからないので、近くで見ていてもさっぱりわからない。


「俺はお前たちが来る前から、ダンジョンの事前調査をしていた。」

「それが今、ここにいることと関係あるの?」


 ファルは俺の質問に答えず、そのまま話を続けた。


「魔王のダンジョンだけじゃない。この町のありとあらゆるダンジョンに足を踏み入れた。」


 俺は色々、質問をしたかったがさっきの態度を見てもわかるように、無視されるだろう。口を出したくなるのを必死にこらえつつ、続きを聞いた。


「地形探知の魔術を使ってみたが、そのどれとも一致する物はなかった。これがどういう意味かわかるか?」

「さすがにど忘れしただけでは?」

「お前ごときに聞いた俺がバカだった。」

「なんでだよ!なんでそうじゃないって言い切れるんだよ!」

「魔術師をなめるなよ。地形の暗記くらい大したことじゃない。魔道書を一冊暗記するのに比べれば大したことではない。」

「はいはい、そうですか。それはたいそう頭がよろしいようで。」

「フン。魔術師ならそれが最低ラインだ。」

「で、何が言いたいの?」

「お前のせいで話が脱線しちまったじゃねえか。要するにここは未知のダンジョンだってことだ。」


 知らないダンジョン?たまたま、隠しダンジョンがあったってだけでは?


「それで何が問題なの?」

「このダンジョンには入り口・出口に相当する物は存在しない。」

「……?何それ。どういうこと?」
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