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第4章 勇者の剣と剣の巫女

第200話 迷子の子猫ちゃん

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「おっ!来た、来た。」


 宿の予約に向かっていたタニシがやってきた。剣の丘神殿のあたりで合流する手筈になっていたのだ。でも、なにかおかしい。小さな猫人と一緒にいる。誰?


「おまたせヤンス!」

「まあ!かわいらしい!」


 エルちゃんは目を輝かせながら小さい猫人を見つめている。それを見た子猫はタニシの後ろに隠れてしまった。


「誰だよ、その子猫は?」

「こ、この子はそのぉ~、色々あったでヤンス。要するに迷子の子猫ちゃんでヤンス。」

「何?迷子じゃと?……さては宿の予約が取れなかったから、可愛い子猫で誤魔化そうとしているわけではあるまいな?」

「ぎ、ギクゥ~!?」


 わかりやすいヤツだ。心の声が表に漏れ出てどうする。まあ、迷子を保護したんなら、別にいいけど……。


「宿を取れなかった暁には、どういう目にあうか忘れたわけではあるまいな?……どうやら、そなたの存在を100%OFFしなければならぬとはのう。この処刑は楽しみに取っておきたかったんじゃがのう?」

「ひ、ひいぃぃぃ~!?どうかお許し下さい、女王様!せめて、80%にして下さいまし~!」

「おぢちゃん、なんかヘンなことしてる!おもしろーい!にゃははは!」


 サヨちゃんにビビりまくりのタニシは滑稽でしかない。子供なら笑ってしまうだろう。商人よりコメディアンのほうが向いてるんじゃないの?


「しかし女王様って……?」


 いや間違いではないんだけどな。竜の女帝なのは間違いないし。でも、女王様呼びはなんかちがう。そんな言い方をするとサヨちゃんが悪の女王みたいに見えてくる。今のドS発言を聞くと特に。


「この子を連れてくる代わりにミャーコちゃんに宿を探して貰ってるでヤンス!」

「ミャーコちゃん?」

「あの、ほら、この前会った、遊び人の女の子ですよ、勇者様。」

「アイツか?なんでこの町にいるんだ?……まあいいや、予約は出来そうなんだな?」

「たぶん大丈夫でヤンス。あっしより宿選びには自身がありそうだったでヤンス。」


 ……?あんなテキトー女にまかせるのは正直、不安しかない。妙なセンスの宿に案内されそうでちょっと恐い。


「……で、その子はどうするんだ?」

「そうでヤンス!この子はアニキの知り合いの子供かもしれないんでヤンス!」


 なんだと?知り合いってことは……まさか?


「ジェイさんのお子さんなんじゃないですか?」

「ま、まさか?猫人ってところくらいしか、共通点ないよ?」

「ねえ、子猫ちゃん?お名前をお姉ちゃんに教えてくれないかな?」

「あ~るのなまえはあ~る・わいるどわんっていうんだよ。」

「ワイルドワン!ビンゴだ!間違いない!」


 そういえば、別れ際に俺を子供に会わせたいって言ってたような……。図らずしも実現してしまったというわけだ。本人はいないけどな。


「ジェイさんが来てるんでしょうか?出来ればお会いしたですけど、どこにいるんでしょう?」

「うーむ?どこにいるんだろう?検討がつかんけど、アイツもこの子のことは探しているはず……。」


 剣の巫女を探す前にジェイの居所を探さなければならないとは。子供のためだから仕方ないか……。
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