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第4章 勇者の剣と剣の巫女
第240話 いい日旅立ち……、
しおりを挟む「ようやく万全になったから、今日こそ出発だ。」
あれから数日後、俺達は旅立つ準備をしていた。数日の間、傷の治療に当てていた。俺が一番傷が深かったし、タニシなんて想定以上に動き回ってしまった上に強化魔法で無理をしてしまったので、全身筋肉痛でしばらく動けなかったのだ。
「正直言うと、まだちょっと痛いでヤンス。あまり歩けない気がするでヤンス。」
「筋肉痛になったってことはかえって筋力が増えたんでねえの?筋トレってのはそういうのの繰り返しなんだぞ。」
「えぇ~!でも、そんなに強くなった気がしないでヤンス。」
「そんなもん、色々やってみたら自然とわかるもんなんだよ。実力試すために、お前も“大武会”に出場すればいいじゃないか?」
「しょええっ!?そんなん、すぐに殺されてしまうでヤンス!」
そう次の目的は大武会を見に行くことだ。ジェイが出場する予定なので一緒に付いていくことになった。俺?俺は出場はしない。だって勇者が出場するのは卑怯臭いし……。
「お待たせしたニャ。準備はOKニャ!」
「OKにゃあ!!」
ジェイ親子が出てきた。子猫はあんな大変な目にあったのに元気そうだった。後遺症とかがなくてホントに良かった。
「さてと、揃ったことじゃし、行くとするかのう!」
サヨちゃんの号令とともにみんなで歩き始めた。さあ、サウス・ダウンに出発だ!
「待って、待って!待ってってばあ!」
背後から呼び止める声が聞こえてきた。この生意気な感じの声は……、
「ウチも一緒に行く!」
「お前も?」
「人のこと、お前って言うなって言っただろ!このバカ勇者!」
「いてえーっ!?」
ミヤコは俺の足を思いっきり踏みつけた。何するんだコイツは!乱暴なヤツめ。
「何で?付いてくんの?」
「回復役が必要なんじゃない?一人もいないなんておかしいよ、このパーティー。」
「う、う~ん。言われてみればそうか!確かにいない。回復役は準レギュラーばっかりだった。他の団体所属だし。」
今まで共闘した人間で回復役はいたが、二人ともクルセイダーズだ。さそっても良かったが、勇者がヘッドハンティングしたとあっては、色々問題が出そうだから、あえてやらなかった。うーん、でも、メイちゃんはともかく、ジュリアはないかな。俺、アイツ苦手なんよね。すぐに人のこと茶化してくるし。
「それに、剣のメンテナンスも必要でしょ!」
「え?これの?」
俺は思わず剣を取り出して見た。これの手入れは必要なのか?この剣には刃に相当する部分がない。この剣はくさび状の板を二枚合わせて柄を付けたような外見をしている。鞘すら必要ない。だから刃こぼれもないだろうし、刃を研ぐ必要もないような気がする。
「刃がなくても、使えば使うほど消耗するもんなの!……アンタ、前の剣も乱暴に扱ってたんでしょ?折れるなんてあり得ないことなんだからね!ちょっとは反省しなさい!もっと剣を労れ!」
「くそう。そこまで言われるとぐうの音も出ないや……。」
色々怒られた。まさかコイツに怒られるなんて夢にも思ってなかった。まさか勇者が遊び人に怒られるなんて、世も末だ……。
「まあ、良かろう。メンバーに加えようではないか。阿呆のサポートは何人いても困ることはないからのう。」
「悪かったな、アホで!」
「これから一段と楽しい旅になりそうですね。」
「女の子が増えて嬉しいでヤンス!」
みんなミヤコがメンバーに加わることに賛成のようだ。やれやれ、承認せざるを得ないじゃないか……。
「楽しそうで何よりだが、悪い知らせを持ってきた。」
賑やかな雰囲気に水を差すような形で狐面が姿を現した。この数日間は姿を消していたのだが、急になんだというのか?
「悪いって何?」
「特に私やお前にとっては最悪の事態だ。」
「何があったというのじゃ?詳しく話してみよ。」
ここで急に空気が変わった。一同に緊張が走る。ただ事ではない、不吉な予感がした。
「我が流派の宗家が……ジン・パイロンがこの国にやってきた。」
恐ろしい知らせだった。背筋が凍り付いた。今までの楽しい雰囲気が全て消し飛んでしまうほどに、衝撃の事実だった。
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