【第1部完結】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~

Bonzaebon

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第5章 完成!究極の超次元殺法!!

第247話 恐怖、そのもの

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「相変わらずの腑抜けよな。そのような醜態を晒しておるから、破門の憂き目に遭うのだ!」


 聞いた瞬間、背筋が凍った。俺がこの世で一番恐れている人物の声。拳法着姿に長い白髪を三つ編みに束ねた初老の東洋人。間違いなくあの男だ。


「何者だ!」


 エドが声を張り上げる。彼もただならぬ気配を感じたのだろう。漂う緊張感が戦闘中のそれそのものだ。


「私はジン・パイロンと申す者。そこの腑抜けに破門の処分を言い渡した者だ。あとは言わずともわかるな?」

「貴公がかの流派の頭目なのか!」

「左様。其奴を処刑するためにこの国へやってきた。」

「そのような事をさせるわけにはいかん!」


 エドが俺を庇うように宗家の前に立ちはだかった。それを見た宗家はニヤリと笑った。


「貴様が私を止めるというのか?ならば、やってみるが良かろう。」


 宗家がエドを挑発する。ダメだ誘いに乗ってはいけない!下手すりゃ殺される!


「かくなる上はッ!」


 エドは挑発に乗り戦闘態勢に入り、宗家に殴りかかろうと前傾姿勢になった。今にも飛びかかりそう……だが、そのまま動かなかった。


(ピタッ!)

「ピタ……?」

「どうした?私を止めるのではなかったか?」


 驚くべき事にエドは指一本で動きを止められていた。兜の額の部分に人差し指を突きつけている。たったそれだけでエドの動きは止められていた。


「止めるつもりで自らが止められるとは、一生の笑いものになるであろう!」


 一瞬だった。宗家が動いたと思った瞬間、エドは宙を舞っていた。そのまま宗家の後ろ側へと投げ落とされた。


「イグレス様!?」

「エドぉッ!!」


 思わず吹き飛ばされたエドの元に駆け寄る。クロエさんも同時にやってきた。

 
「あっけない。実にあっけない。出場予定の者がこの体たらくとは!なんと幅の狭いことか!」

「な、何をーっ!」


 その場のほとんどの者が宗家に向き合い身構えた。まずい一触即発の事態だ。


「まああせるな。これはちょっとした挨拶代わりだ。楽しみは本番までとっておくが良い!」

「本番?……ってことはまさか出場するのか!」

「そういうことだ。公衆の面前で処刑してやろう。そして、出場者全員をも処断する。この国の武術がどれほど幅が狭いか思い知らせてやろう。己らの未熟さ、虚弱さを知らしめて見せよう!」

「……!?」


 その場の緊張はさらに強まる。こんなことを言われたらどんなヤツでも黙ってはいられない。


「おおっと!そういえば、貴様にはともに出場する者がおらぬのであったな!自ら自刃して果てるのであれば、他の者どもの処断は取りやめてやってもよいぞ!」

「……!?」


 俺は耐えかねて、その場から駆け出した。こんな空気到底耐えられない。もう、無理だ!


「勇者様!」


 後ろからエルちゃんの悲痛な声が聞こえる。でも振り返れない。こんな情けない自分を彼女に見られたくない。


「フハハハハ!やはり腑抜けよ!その様な者は私自ら処刑するにも値せぬわ!!」


 俺は逃げ出した。勇者であることも忘れて……。
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