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第5章 完成!究極の超次元殺法!!

第318話 例え、獣に成り果ててでも……、

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「ほう、これは……。」


 私は闇の力…アクセレイションを使うことにした。今は持てる限りの全力で使う。表立って闇の力を使えば、私は捕らえられてしまうかもしれない。そんなことはどうでもいい。この力を全力で使えば、試合に勝てたとしても、私の体は……崩壊してしまうかもしれない……。


「……アクセレイション!」


 体中の筋肉が強ばっていくのがわかる。感覚だけではなくて、実際の見た目にも影響すると思う、全力で使えば醜い姿になってしまうのはわかりきっていた。


「筋力増強か? その様な奥の手を持っていたのか。」

「……!!」


 ただシンプルに相手を攻撃する。多分、避けられる。凌がれる。でもそんなの関係ない。その技ごと力まかせに壊すから。


「一指空遷。」


 身体能力と一緒に感覚能力も倍にしたから、今は見える。避けて攻撃することも出来るけど、そのまま攻撃する。まだ、手加減を続けるつもりなら、遠慮なく壊す!さらに力を凝縮させ、攻撃の勢いを増加する。さらに力を増すことは想定してないはず!


「アアアアアァッ!!!!」

「むうぅぅ!?」

(ビキィィィッ!)


 相手の小指を破壊した感触が伝わってくる。このまま首を刈る。


「……景門搏擽!」


 折れた小指をそのままに手刀に切り替え、大鎌を円を描くように払いのけた。その影響で私の体勢も大きく崩された。そこへ反対側の手からの手刀が振り下ろされた。


「くああっ!?」


 無防備な脇腹に攻撃をもらった。アクセレイションで体を強化しているのに、物凄い衝撃だった。一瞬意識を失いそうになる。


「……さすがに私も無傷ではなかったが、武術を甘く見すぎたようだな。」


 起き上がって、相手と向き直る。激痛で苦しかったけど、倒れている暇なんてない。相手を倒すまで、自分が倒れるわけにはいかない。


「本来武術というものは、肉体的に強い者へ劣る弱者が対抗するために編み出した技術だ。同じ技術を有しているのならばともかく、膂力のみで対抗することなど無謀に等しい。」

「アアアアアアッ!!!」


 相手が言っている事は正しいのかもしれない。でも、そんなことは私には関係ない。もっと圧倒的な力で立ち向かう。それしか私には道がない。さらに加速する。私は風になる。突風になる。嵐にさえなってみせる!


「更に速くなった! どれだけ強めようと関け……、」


 相手の想定外を狙う。もっと速く、もっと強く。私がその技を叩き潰す!再び、同じ技で防御したところを更なる力で押し通す。


(ミシッッッッ!)


 相手を破壊する感触を感じる。これだけでは済まさない。相手を破壊し尽くして、動けなくなるまで止めない。


(ビキッ!)

(グキッ!)

(バキャッ!)

(メリッ!)


 これだけ続けても、どれだけ壊しても大鎌の刃は当たらなかった。悔しい。これだけ必死になっても、当たらない。届かない。相手の命が奪えない。


「もう、止めぬか。」


 どれだけ体を壊しても、涼しい顔をしている。そんな状態で冷静に私を制止しようととしている。


「……驚門打破!」

(メギィィィィッ!!!)


 彼は反撃に転じた。大鎌を狙い、その強烈な一撃でねじ曲げて見せた。そこから更に、攻撃を仕掛けてきた。


「これで地に伏せよ! 傷門擂折っっっ!!」


 一瞬で視界が歪み、右の頬に激痛を感じた。この瞬間、全身の何かが切れるような感触に襲われた。もう、体に力が入らなかった。


「まさか、貴様が悪鬼羅刹の所業を身に付けておったとは。」


 まだ意識がある以上は戦える。でも、体が言うことを聞いてくれない。力が入らない。耐えがたい激痛が走るだけだった。


「むやみに使いすぎたな。し損じれば自らを傷付ける邪法よ。まるで我が流派の仇敵のようだ。西方にもこの力を使う者がおったのだな。」


 何を言っているんだろう? 魔王、魔族以外に闇の力を使う存在がいるっていうの?


「それはともかく、貴様は過ちをしでかした。全身の筋肉が断裂し、下手をすれば一生、自らの意志で体を動かすことすらままならなくなるであろう。こうなるのであれば、ひと思いに貴様を倒してやるべきだった。」


 体に負荷がかかりすぎて、私の体は壊れてしまった。ここまでして戦ったのに、勝てなかった。悔しくて、悔しくて、涙が止めどなくあふれ出た。


「貴様がどうなろうと先程の話は取り消すつもりはない。廃人に成り果てても、貴様の面倒は見てやろう。……その上で、あの男を処断するつもりだ。」

「……だめ! お願い! 私から彼を奪わないで!」

「貴様をここまで追い詰めたのは、奴にも責任がある。貴様という才ある者を惑わせた罪は大きい。私はより一層、奴を処断する決意を固めた。この世から完全に滅してくれよう。」

「……ううっ……。」


 我が身の無力感に苛まれ彼を失う絶望感を感じながら、だんだんと意識は遠のいていった……。
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