331 / 401
第5章 完成!究極の超次元殺法!!
第331話 幻の奥義
しおりを挟む「あと二つ! もはや貴様は死んでいるも同然! 遠慮無く勝利させてもらう! これで九十九本目だ。」
相手は倒れた。これであと一回、それが終わればやっと処刑が完了する。我ながら酷な処刑を考えたものだ。せいぜい二、三十回で終了することを想定していた。九所封じを使用した時点で大抵のものは心が折れる。だが、この男は終わらなかった。骨の折れる仕事だ。歳だけは取りたくないものだな。
「ロア、起きて! 立ち上がらないとあなたが負けてしまうわ!」
槍覇は懸命に呼びかけている。この試合の合間に、この女は私の行いを非難したりしているが、私は意に介していない。私は意識的に遮断していた。所詮、雑音に過ぎないからだ。戦いに於いて、他者の非難を気にしていては迷いや隙をつくる事となる。どう言われようと、冷静に冷徹に冷酷であることを心掛けている。
「起きろ相棒! テメエはこのまま負けていいのか! 俺は認めねえぞ!」
「ロア! 私の知る君はここで終わるような男ではない! 立って君の信念の強さを見せてくれ!」
「勇者よ! お主はこのまま敗者となるのか! ここで死ぬるは、拙者を侮辱したも同然の行為だ! 死して恥をさらすは武人として失格だ!」
「だから逃げろって言ったのに! 逃げないからこんなことになったんじゃん! だったら責任とってさっさと起きて、勝ちなさいよ、このバカぁ!!」
数多くの声が聞こえてくる。何故だ? 何故、此奴ごときの男を慕うのだ? 何も成し遂げられぬ様な男を支援したところで何の得にもならぬというのに。所詮は弱き者どもの戯言だ。その様な愚かな幻想を今日限りで終わらせる。叩き潰す。所詮は力が全てを制し、強者こそが法となるのだ。そこに弱者が付け入る余地など微塵にも存在しない。
「起きて!! 負けないで、ロアーっ!!!」
この声はまさか! まだ、動けるはずがない! 私は恐る恐る振り返り、声の主を探った。あの娘がいた! 地面に這いつくばっている。しかも手助けしている者などいない。病室から一人で出てきたというのか?怪我で禄に動けない体でどうやって一人でここまで来たというのだ! この男の為に何故そこまで出来るのだ!恐ろしい。何故ここまで多くの者を狂気的な行動に駆り立てるのだ! 確実に処断せねば! この世から抹消してみせる!
「……。」
背後から無言の気配を感じた。声も発さず、音を立てることもなく、あの男は立ち上がっていた。目には光がない。おそらく意識はない。だが異様な気配を感じる。私の感が脅威と見なしている。どうあろうと、あと一回倒すだけだ。ただそれだけで済むはずのことが、途方もない困難な事の様に思える。
「ええい、しぶとい奴め! おとなしく死ねぃ!」
この男は異様にしぶとい。実力とは不似合いなくらいに体力がある。才能ある者でも、ここまで体力を保持している者はいない。第一、ここまで体力を有していても無駄なはずなのだ。何処で何に活用するというのだ? 天は何を意図してこのような者に途方もない体力を与えたというのだ? 宝の持ち腐れも良いところだ!
(……どきゅっ!)
骨の何本か折れているであろう、脇腹に突きを喰らわせた。だが、感触がおかしい。まるで餅でもつついたようなしかない。異様だった。恐ろしいとさえ感じた。
「……。」
相手は無造作な動きで私の肩を掴んだ。何をしようというのだ? このような技とも言えぬ動きなど、簡単に振り払ってくれる!
「むっ、ぐっ!?」
外せない! まるで力は籠もっていないのに、石像のように硬く動かせない。
(……ゴギン!)
「……ぐうっ!?」
そのまま無造作な動きで肩の関節を外された! 技とも言えぬ動きで不覚を取った。何をした? この男は体術の知識など持ち合わせてはいないはず。
「……ぐぬうっ!?」
外された肩を自力で元に戻す。最早、躊躇している場合ではない。最大最強の技で仕留めるのみ!
「離伯月影……闡嘉八掌っ!!!」
生涯でも数えるほどしか使ったことがない。どちらかの奥義で大抵の者は崩れ去った。双方を駆使するほどの相手などわずかに存在するだけだ。このような男に使用するのはある意味で屈辱だ!
「八方から技を繰り出されて対応できる者など、この世に存在せぬ!」
八人となった自身で八掌を構成する技、それぞれを繰り出す。それぞれが一撃必殺の威力を持つ。これを八回分繰り返す。それが我が奥義八掌だ!
「まずは一つ……!? がはっ!?」
あり得ないことが起きた!全ての攻撃が同時に返された。しかも、素手による攻撃で! この男が習得しているはずのない、拳覇の技で!
「まぐれに決まっている! 二つ……!? ぐぬうっ!?」
同じだった。再び返された。それぞれ先程と違う技を違う方向から放ったというのに?
「三つ……!? かはっ!?」
「四つ……!? ぎっっ!?」
「五つ……!? ぐうっ!?」
「六つ……!? げほっ!?」
「七つ……!? ぐふぅっ!?」
「八つ……!? ごばぁっ!?」
全て返された。不覚にも視界が歪み、足に力が入らず、その場に倒れ込んでしまった。奴の使った技はもしや……幻と言われたあの奥義では……? 実在すら疑われていたというのに! だが、それ以外ありえん! 全て柳のごとくしなやかに受け流し、そのしなりで大岩をも打ち砕く……伝承にうたわれるあの技、そのものではないか! 天破奥義……有形無形!
「おおおおーっと!!! どういうことでしょう!! 百本目を目前にして、パイロン選手がついにダウーーンッ!! 我々の声援を受けて勇者様が奇跡の復活を果たしましたぁ!!」
倒れた。そうか、途中で規則が変わったことが裏目に出てしまった。一度とは言え、この私が“敗北”を許してしまった。私は“死”んでしまったのだ!
「私に“死”を与えた屈辱、その身で償って貰うぞ!」
私はもう一つの禁じ手、悪鬼羅刹の技を以て、目の前の男を滅する決意をした。一度死んだ身だ。例え外法を用いてでも、勝利を掴む! 両手をそれぞれ上段と下段に据え、闘気を全身に集中させる。
「禁じ手、虚空……、」
「駄目だ! 宗家、その技は使ってはいけない!この場全ての人を巻き込むつもりですか!」
技を知る槍覇が制止しようとしている。だが、聞く耳など持たぬ。幻の技には同じく幻の技を以て制す! この技は自らの闘気を波動として放ち、敵を文字通り滅する技だ。あまりの威力故、周囲を巻き込む大技だ。地形さえ変えてしまうほどの威力があるのだ! ここまで追い詰められた。使わぬ訳にはいかぬのだ!
「……滅光ぉっ!!!!!!」
(ズオオオオオオォォォォォッ!!!!!!)
闘技場は闘気が放つ光に埋め尽くされていった。
0
あなたにおすすめの小説
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる