【第1部完結】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~

Bonzaebon

文字の大きさ
335 / 401
第5章 完成!究極の超次元殺法!!

第335話 卒業……それぞれの明日へ

しおりを挟む

「冗談だろ?」

「冗談ではない。本気じゃ。」

「なんで!?」

「まあ落ち着け。」


 落ち着けと言われても……。俺はいつになく動揺していた。いつも当然だと思っていたことが……当たり前じゃなくなる。それを目の当たりにしたら、冷静ではいられない。


「まあ……そろそろ頃合いじゃと思ったんじゃ。そなたとエル坊は強くなった。はじめは妾がサポートしてやらねば、戦いは疎か、生きることすら困難な状態じゃったのう。」


 俺は路頭をさまよった末に勇者になったのはいいが、力を引き出せずヴァルに殺されかけた。エルも監禁先から脱出したのはいいけど、体内のデーモン・コアのせいで普通には生きられなかった。サヨちゃんの手助けがなければ今頃死んでいたかもしれない。


「ずっと付いていてやらねばならないと覚悟はしとったんじゃが、もう手助けは必要ないと判断した。そなたらは二人で生きてゆけ。もう、そなたらの間に割って入れるような者は誰もおらん。どんな困難が立ちはだかっても乗り越えていけるじゃろう。それはそなたら自身も実感しておるのじゃないかえ?」


 確かに実感はあった。二人そろって病室で過ごす日々で何度かそう感じたことはあった。でもあくまで感じただけだ。実際に出来るかどうかまではわからない。でもやってみせたい。それだけの意気込みはある。


「そなたらだけの事だけではない。妾自身も磨き直す必要があると感じたからじゃ。」

「別にそんなことしなくても、十分強いじゃないか、サヨちゃんは。」


 サヨちゃんは強い。人間じゃなく、最強種族のドラゴンだ。魔法だって、町を一発で消し炭に変えてしまうぐらいの魔法を使える。それなのに何故?


「そなたらと比べたらな。とはいえ今のそなたらには勝てる気がせんわい。まあ、それは気にしておらん。問題は今の妾では仇敵たる邪竜に敵わぬからじゃ。」

「え? でもあの時は互角だったんじゃ?」

「そなたは見てたわけではなかろう? あやつには手も足も出んかった。命からがら、奇策で逃れたにすぎん。」


 そうだったのか……。自信家のサヨちゃんでさえそう思ったのか。あの邪竜がそこまで強かったとは。さすがにヴァルと結託しているだけのことはある。


「そなたの技を見て名案が閃いたのじゃ。それをヒントに鍛え直すつもりじゃ。次会うときはアッと驚く技を披露して見せよう。」


 俺の剣技がヒント? 魔法と剣じゃ、やり方とか戦法が全然違う。どう応用するんだ? 見当がつかない。


「それに、そろそろ里に行こうと思ってな。移転先にはまだ行っておらぬ故、クエレにも苦労ばかりさせるわけにもいかんしのう。」

「ああ……そういえばそうだったな。」


 ヴァルのせいで隠れ里のありかがバレてしまった。それで移転を進めるという話を思い出した。……クエレさん元気かなあ。


「ウチらは? ウチらは特に進展してないんだけど?」

「そうでヤンス! あっしらは特にゴールインしてないでヤンス!」

「ミヤコ、そなたは大丈夫じゃ。そもそも一人で活動していた身であろう。それに生成・変成の魔術の秘技はこの一ヶ月で授けてやったじゃろうに。それに……似合いの男くらい、そなたならいくらでも探せるであろう。」

「ええ~? まあ、そこまで言われたんなら、納得しちゃおうかな。」


 コイツ自身、俺らと出会う前は一人でダンジョン潜ろうとしてたりするくらいだから、ホントに大丈夫だろう。ていうか、知らん間に魔法を教えてもらっていたのか? 神聖魔法だけじゃなくて、魔術も使えるってこと? 両方使える人は滅多にいないって、サヨちゃんから聞いたけど、ミヤコは“賢者”とか言われる存在なのか? そんな才能があったとは……。


「あっしは? あっしは?」

「そなたは商売の足がかりを掴んだのではないのか? もっと腕を磨くがよい。商売に関しては妾は専門外じゃ。自分で勉強するのじゃ。」

「ええ~、しょんなぁ!?」


 商売? なんか前に言ってた自作のキャラクターを使った商売をするとか言ってたヤツか?俺の知らないところで二人とも色々やってたんだな。


「そういうわけじゃ。そなたらは妾がおらんでも十分やっていける。要するに……卒業じゃ。」

「卒業か……。」


 そう言われると感慨深い物があるな。俺達は強くなった。逞しくなった。肉体的にも、精神的にも。


「じゃあ、お別れだな。また会えるの楽しみにしてそれぞれの道を進もうぜ。」

「ほう、以外とドライなんじゃのう。号泣でもするかと思うておったのに。」

「永遠の別れじゃないんだから。いちいち泣いてても仕方ないだろ。サヨちゃんの考えを聞いて納得できたから、問題ない。」

「言うようになったのう。まあ……だからこそ卒業なんじゃがな。」


 俺達は宿を出て、それぞれの道を歩き始めた。これから、新たなる旅が始まる。果てしない旅が……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...