【第1部完結】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~

Bonzaebon

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第2部  第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】

第28話 玉葱食わざるもの、生きるべからず!

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「宿屋のオヤジがこんな強いわけあるかよ!」

「ひゃはははは! 強くて悪いかぁ! 食べ物を粗末にしたお前ぇが悪うぃ! ないがしろにされたタマネギの恨みを思ぃしれぇ!」


 宿屋のオジサンが別の恐ろしい何かに変貌してしまっている。ウチの背後にいた時点では普通の人だったのに。顔は凶悪な殺人鬼みたいになってるし、体も筋骨隆々になって体が大きくなった。手に持った包丁も巨大化して剣と同じぐらいの大きさになってる。


「何が恨みだ! 勝手に入れて食わせようとしたのはどこのどいつだ!」

「きしぇぇぇぇぇ! うるさい! タマネギは義務なんだよぉ! 食わざるもの、生きるべからずぅ!」


 言ってることも無茶苦茶だ。何か変な薬でも飲んだみたいな言動。急に何でみんながおかしくなったの? 例のムカツクおばさんに過去へ飛ばされたと思ったら、ワンちゃんが二人になったり、変なお爺ちゃんがいたりで、状況が理解できない。


「そんなにタマネギがお好きなら、同じように切り刻んでやる!」


 あの生意気小僧も相当強い。体格差を物ともしてない。大して大きくないのに、自分の背丈くらいある剣を振り回してる。ヘタしたらウチらのトコのゆーしゃより強いかも? 見ているうちに相手を追い詰めていってる。このままならアイツが勝ちそう!


「これで終わりだ!」


 オジサンがよろめいた隙に、アイツは大きく剣を振りかぶった。このまま決着がつきそう!


「ブシェァァァァッッ!」

「ぐあっ!?」


 追い詰められたおじさんが急に口から何かを吐き出した。それがアイツの顔にかかった。目にも入ったみたいで痛そうにしている。


「ふぁはは、どうだタマネギ・ブレスの味はぁ? よく染みるだろう! 切ってるだけでも目に染みるからなぁ。汁を直接かけてやれば、効果覿面だぜ!」

「……くそっ、ふざけたことを!」


 ダメだ、形勢逆転じゃん! このままだとアイツがやられてしまう。どうにかしないと!


「ちょっと! お爺ちゃん、アイツを助けてあげてよ!」

「うん? 大丈夫じゃよ。あの坊主、まだ奥の手を持っておるはずじゃ。そう簡単には負けんよ。」


 お爺ちゃんと話している間に、オジサンはアイツへと近づいている。アイツはまだ苦しそうにしている。でも……なんだか大げさにしているような印象を受ける。気のせいかな?


「切り刻まれるのはお前の方だったようだな! 刻んでスープの出汁に使ってやるぅ!」


 オジサンは大きな包丁を振り上げ、止めの宣言をした。そして、アイツは苦しそうな仕草を止めている。


「いいや、オレじゃないね。刻まれんのはアンタの方だ。」


 顔を覆っていた左手をオジサンに向けた。すると何か黒い物が伸びてオジサンの体を貫いた。貫いた先が背中から飛び出している。その形はまるで剣だった。


「これで終わりだ!」


 アイツは黒い剣みたいなのを抜いて、右手に持った剣と一緒にオジサンの両肩に振り下ろした。腕が切り落とされた! それだけで終わらなかった。目にも止まらない動きでオジサンの体をバラバラに切り裂く。本当にみじん切りみたいにされてしまった。さすがにこれはグロい! やりすぎなんじゃないの?


「お似合いだぜ。これで大好きなタマネギと同じ姿になった。」


 アイツはスープの器を手に取り、追い打ちをかけるように、中身をさっきまでオジサンだった物にぶちまけた。ヒドい。どんな環境で育ったらこんな事できんの? 好き嫌いが激しいヤツはホントに碌なヤツがいない!


「ひょえええ! グロ注意でヤンス! おそろシッコ!」

「ほうほう。ありゃ、“闇の剣”といったところか? あの坊主も冥府魔道の技を使うようじゃな。ロアの奴の伴侶と同じ身の上のようじゃな。」

「えっ? それって……? エルるんと何か関係あるの?」

「お嬢ちゃんはまだ知らんのじゃろう? あの坊主は血の繋がらぬ弟なのじゃよ。同じく囚われの身であったようじゃぞ。」


 聞いたことない。エルるんに弟がいたなんて? ヤバイ組織に捕まってたって聞いたけど、その時に知り合ったのかな?


「チッ! 今回はハズレだったようだな。蛇の奴はどこへ行ったんだ?」

「儂らは体よく厄介払いをされてしまったというわけじゃ。あくまで狙いはロアとお主の姉なんじゃろうな。」

「何だ、ジジイ。よそ者の分際でオレ達姉弟に関わるな!」

「まあ、そう言うな。手を組んだ方がうまくいくじゃろう? お主一人で敵う相手ではないぞい。」

「アンタなんかに何がわかる!」


 アイツはムキになってる。素直じゃないわね。それよりもエルるんを助けに来たんだろうけど、どうやってここへ入ってきたんだろう? あの時はいなかったはずなのに?
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