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第3章 第3幕 はぐれ梁山泊極端派【絶望と憎しみと学園モノ……と大戦争!?】
第281話 試しにやってみればいい
しおりを挟む「滅ぼされる覚悟は出来たか、人間共?」
会合の翌日、俺達は再びタルカスと対峙することになった。双方の人数は意外にも少数に収まっていた。こちらはタニシ・ミヤコを除く俺達勇者一行と侍、学院側からラヴァンらを始めとする実力者のみで編成している。何しろ戦闘経験が少ない学生がほとんどだったので、ある程度戦える者だけにしたかった。
「その割には人数が少ないな? 我らを本気で相手にするつもりはあるのか?」
「人間全てが戦闘向きと思うなよ。そういうのは一部の人間だけだ。お前らは戦闘用の体を用意できるんだろうけど。」
タルカスは情報通り、何種類かの戦闘に特化した新型の個体で揃えられているようだ。大多数を占めていた人間そっくりのゴーレム達は一人もいない。
「その割には弱者や異物を虐げる性質があるように思うが?」
この前は暴走して暴れていたが俺が全てタルカスからの制御を断ち切ったので、おとなしくなった。その後は学院側で保護している。そもそも元の人間と入れ替わっていただけなので、そのまま元の人間と同じように生きてもらうことにしたのだ。
「それは否定しないけど、戦うのは俺達だけで十分だ。」
人間のイヤなところを否定しても意味がない。そういうところがあるからタルカスの様なヤツがいるんだし、俺もそういうのはイヤになるほど見てきている。
「献身的だな。そこまでする価値はあるのか?」
「助けを求める人がいる限り、俺はそういう人達を助けるのさ。それが勇者の役目だ。」
「人間を擁護する限り、お前は私の敵だ。我々、ゴーレムを非難する者がいる限り!」
どちらも誰かのために戦っている。出来ることなら両者は戦わない方がいいはずだ。犠牲者は出ない方がいい。
「なあ、この戦い止められないか?」
「今さら怖じ気づいたか? 勇者とあろう者が勇気をなくすとは見損なったぞ。」
人によっては怖じ気づいたと見なす場合もあるだろう。時によっては戦いを避ける勇気も必要だ。他に立ち向かわないといけない脅威があるなら尚更だ。
「アンタの過去とか聞いたら戦う気なんか持てないよ。戦う勇気よりも、和解を目指す勇気の方が重要だ。」
「フン、だったらわかるだろう? 私の気持ちがわかれば、人間に対しての怒りの強さも!」
やっぱり、怒りの感情は抑えられないのかもしれない。それほどの扱いを受けたのなら仕方ないのかもしれない。
「だったら、その怒りを俺にぶちまけてみないか? それならスッキリするかもしれないぜ?」
「お前は何を言っているか、わかっているのか? 私の感情が抑えられたところで、人間が犯した罪が消えるわけではない。人間共がこの世から消えるわけではないのだぞ?」
冷静に聞いている側からすると、俺の考えは馬鹿げているのかもしれない。でも感情ってのは発散する機会があれば、薄れる可能性はあるかもしれない。少しくらいは。その少しの可能性に賭けてみたい。
「アンタと一騎打ちがしたい。そこで憎しみを俺にぶつけてくれればいい。」
「……私が勝てば人間を遠慮なく葬らせてもらうぞ。予定通り滅ぼすぞ!」
「そうしたいならそうすればいい。でも、俺はアンタを止めてみせる。」
「結局、私を殺すつもりなのではないか。」
「違う。殺さずに止める。」
「世迷い言を言いおって……。やはり人間は愚かだな!」
タルカスは背中から大型の斧を取り出すと、俺に向かって斬り込んできた! まともに受け止めたら簡単に粉砕されてしまいそうな一撃だ。
(ガコォォォン!!!)
「……何!? 私の一撃を受け止めただと!? しかも腕……義手だけで!?」
俺は大斧を素手、義手の部分で受け止めた。質量差はかなりある。タルカスの体格は体当たり、それどころか普通に倒れてきただけでも、押しつぶされてしまいそうな程だ。
「なんか出来ると思ったら、出来てしまったんだ。この学院で経験したことを応用したら、こうなってしまったんだ。」
質量差があっても受け止められたのは、八刃の応用でタルカスのパワーをかき消す様な事をしたからだ。峨嶺辿征の応用で、武術でも似たような事が出来るようになってしまった。
「嘘を言うな! こんな大それた事が急に出来るようになるものか! 今までに習得済みの技を使っただけだろう!」
「そんなこと言われても本当なんだから、しょうがないだろ。こんな感じでアンタの復讐心も解消してみせるさ!」
「ふざけたことを言いおって! こんなおかしな現象が何回も起きると思うな!」
タルカスの怒号と共に部下達が一斉に動き出す。一騎打ちの約束が簡単に破られてしまった。とは言っても、約束に応じたとは言ってないから、違うのかもしれない。
「まかせて! あなたの邪魔はさせないから!」
「一人だけで格好付けるなよ、相棒!」
「そう来なくては拙者がわざわざ助太刀しにきた意味がないでござる。」
「勇者さんならタルカスを止められると信じています!」
みんなタルカスの部下を迎え撃つ体勢は整っているようだ。とはいえ、相手の能力は未知数だ。早めに決着を付けないといけない。双方の被害が出ないように……。
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