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第3章 第3幕 はぐれ梁山泊極端派【絶望と憎しみと学園モノ……と大戦争!?】
第301話 鞘の方が重要です。
しおりを挟む「信じられん……!? ただの破片だったのに……!?」
目の前であり得ないことが起こった。馬鹿女が儀式を始めて、光で何も見えなくなった。しばらくの間続いて、光が弱まると一振りの剣が現れた。鎧じゃない。剣が現れた! 柄の中央部にはガノス・コアが配置されており、何故か切っ先を下にして地面に直立している。
「オイ! 話が違うじゃないか! 鎧を直すんじゃなかったのかよ!」
確か剣も合成するとか何とか言ってた様な気もするが、どう見ても剣しかない。大振りな大剣に、普通は付かない鞘が付いている。剣はこの世に大小存在するが、大型の物になればなるほど鞘なんて物は用意されない。第一、抜くのが困難になるからだ。
「でも、コレ、鎧にもなるから!」
「お前、オレを舐めてるのか! 剣はともかく、こんなデカい剣に鞘なんて余計な物付けやがって!」
「お前、って言・う・な!!」
「そんなことはどうでもいい!」
何をどう言おうと鞘は鞘だ。あれを分解して鎧として使えるというのかもしれないが、その様には見えない。鞘にしては余計な飾りが多いし、剣と比べても手の込んだ作りになっている。無駄なことをしやがって!
「おおっ!? ちょうどいい試し切りの相手がやってきたぞ! 早速やっちまいな!」
「うるさい! お前は引っ込んでろ!」
ゴリラ野郎はオプティマのフレッシュ・ゴーレムが押さえ込んでるが、タルカスのゴーレム共が周囲に集まってきていた。馬鹿と揉めている場合じゃない。試し切りでも何でも良いから蹴散らす必要がある。使い心地が悪ければそのまま返品してやろう。
「……!? こ、これは!?」
自立している剣を手に取ると不思議な感覚が全身に伝わった。まるで壊れる前の、デーモン・アーマーを身に付けたときの感覚がある。あの、もう一人分の神経が体に張り付いた様な感覚。デーモン・コア特有の感触があった。
「……!」
(ジャキッ!!)
ゴーレム共が筒状のデバイスを一斉にこちらに向け、構えている。あれは破壊の術式を放射する武器だったはず!
《相手の放射に合わせて剣を一閃させろ。》
誰かの声がオレの頭の中に響いた。聞いたことのない声だが、直感的にコレはガノスの物だと思った。オレが次に取るべき行動を示唆してきたのだ。
(ヴォォォォン!!!)
ゴーレムが一斉に術式を放った。オレはガノスの指示通り、術式を弾き落とす感覚でなぎ払った。
(バシュゥゥゥゥン!!!)
術式は何事もなかったかのようにかき消えた。普通ならこちらが消されるはずだが、剣を一閃しただけで消滅した。
《これが失われた闇魔術“リジェクション”だ。剣の巫女のリミッター解除により使用可能となった。》
あれは闇魔術だったのか? しかもリミッター解除? 剣の巫女? 聞き覚えのないキーワードの連発に頭が混乱するばかりだった。
「“黒射”って叫べ!」
「なんでそんなことをしないといけないんだ!」
《“ブラック・イジェキュレイション”でも良い。さすれば、我が汝の鎧となろう。》
ガノスまで馬鹿女と同じ様な指示を出してきた。前はここまでオレに干渉してこなかったクセに随分とおしゃべりになったもんだ。ここはおとなしく従ってやる。
「“ブラック・イジェキュレイション”!!」
叫んだ瞬間、剣がフワッと軽くなった。見てみれば鞘が消失し、刀身が露出している。抜刀するには合い言葉が必要だったのか。その間に全身にわたって何かが纏わり付く感触がした。鎧が勝手に装備されている!
「見たか! これが新機能だぞ! 剣と鎧を融合させたマルチプル・ウェポンだ! 格好いいだろ! ウチに感謝しな!」
「勝手に改造しやがって……。持ち主の意向は全く無視かよ!」
鞘が鎧に変形した。形状は以前の物よりは良くなっている。あくまで自分で見れる範囲だけは。それ以上に体との一体感が凄い。自分の体の一部のように感じられる。元のアレは邪竜レギンのデザイン案を元にオプティマが作成した物だが、それよりはマシなデザインになっている。あくまでほんの少しだが。少しだけな。
「もういい。お前ら、全員、八つ当たりの相手にしてやるから覚悟しろ!」
ゴーレム達はすでに次の放射の準備に入っているようだが、もう遅い。オレは軽くなぎ倒す感じで剣をなぎ払った。
(バギャォォォォン!!!)
甲高い金属音を上げながら、ゴーレム達は腰の部分から真っ二つになった。その様な姿になっても、腰から下はまだ作動していて、ゆっくりと後ずさりをしていた。とっくに手遅れだというのに。
「アあアっ!? 鎧が元に戻っテいる!? 私が自爆サせタというノに!」
「ああん? なんでぇ? 鎧が復活してやがる? まあいい。クッセェのばっかり相手にしてられねえしな!」
(ボガァァァァァン!!!!)
「あアーッ!? ネオ・トマホークさンがぁ!?」
ゴリラ野郎はフレッシュ・ゴーレムを一蹴すると、舌なめずりしながらこちらに向かってきた。これで晴れて第二ラウンドの開始という訳だな。さっきの借りをキッチリ返してやる!
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