317 / 331
第3章 第3幕 はぐれ梁山泊極端派【絶望と憎しみと学園モノ……と大戦争!?】
第317話 思い返せば……、
しおりを挟む「凄いな、これが“魔王の復活”か!」
俺の体は次第に回復していった。千切られた四肢は血管や神経から先につながっていったため、最初の方は激痛が再発した。そこから痛みが緩和されていき、骨も再生していった。義手まで元通りだ。もはや体の一部と化しているな。
「本当に他人の能力を再現しやがった! とんでもねえぞ、これは。」
俺に「お前なら出来る」と励ましていたファルでさえ驚いている。信じてなかったワケではないんだろうけど、発現の早さについて驚いてるんだろう。不器用な俺がアッサリと他人の能力を使っている。コレには自分もビックリしている。
「“勇気の共有”……。ひょっとしたら私達はすでにその恩恵を授かっていたのかも。」
「どういうことだ?」
エルは俺の再生を見守っている最中、何かに気付いた様な素振りを見せていた。それは今話そうとしている事に関係あるのかもしれない。
「私は先生から技を教わり、流派梁山泊の奥義を身に付けるまでに至りました。自分でも驚くぐらい武術のセンスがあったからなのかな、と最初は思っていました。」
「ああ。確かに最近始めたにしては上達が早かったみたいだな。アンタの事情を聞いた時は驚いたぜ。俺もアッサリ追い抜かれるんじゃねえかと焦ったぐらいだ。」
「でも、今、気付きました。この現象は彼から力を借りていたから出来たんだって、思えてきたんです。」
俺は特に何も教えたりとかしてない。狐面、レンファさんからしか教わってなかったはず。俺の戦っている姿を見て、という可能性もあるが、俺とエルの戦闘スタイルはあまりにも違う。月とスッポンくらい違う。もちろんスッポンは俺の方だけどな。
「私だけじゃないです。ファルさんもそうなんじゃないですか? 勇者の奥義を修得しましたよね? もしかしたら剣技もそうなのかもしれませんよ。」
「俺が? コイツの影響で? 冗談はよしてくれよ。こんな馬鹿の影響なんか……。」
ファルは照れくさそうに俺とエルから顔を逸らした。エルはシャイニング・イレイザーのことを言ってるんだろうけど、剣技はどうなんだろうか? 俺と共通点が全くといっていいほど、ない。
「彼自身の能力だけじゃなくて、額冠の歴代の勇者達から授かった可能性はあると思います。勇者はそういう力を使えると、サヨさんが言ってました。」
俺は以前、剣豪勇者ムーザや先代のカレルの力を借りたことがある。無意識的に他の人達の力も借りているかもしれない。特にヴァルとの対決の時はそうだったと思う。あの後は数日、意識が戻らなかったしな。
「みんな、少なからず影響は受けていると思います。サヨさんやイグレスさんもそういう話はしてましたから。今回はそれを本格的に機能拡大して使っているんだと思います。」
「拙者もその意見に賛同しよう。拙者自身も今、傷の修復に使った。皆の力を享受出来る様になった証拠がここにある。」
「侍!?」
侍は俺やエルと同様に傷だらけになっていたはずだが、それが一切消えている! 侍自身は回復魔法の類いは一切使えないはずなのに。俺と同様に“魔王の復活”を使った結果なのだろう。
「使いこなすの早くない?」
「そうでござろうか? 我が身の回復を一心に願っただけでござるよ。」
相変わらず手の早いヤツだ。なかなか侮れん、恐ろしい男よ! 敵に回したくはない男だが、たまに戦いを挑んでくるから困ったものだ。
「これからどうする? あの戦いに参戦する余地は俺らにはないぜ?」
ファルは学長とヴァルの戦いぶりを見ながら言う。竜騎兵と嵐が決戦を繰り広げている。加勢はしたいが、下手に手を出すと巻き込まれかねない。ヴァルだって手出しされるのは嫌う性格だしな。
「英雄殿に任せておれば良い。お主は本体を見つける方法を模索するのだ。」
「……実はもう、本体の居場所へと向かっているんだ。」
「……は!?」
「どういうこと?」
あれ? 俺、今なんて言った? おかしいこと言った? ん? まあ、おかしい事を言ったような気がするが、自然と無意識的にそんな言葉が頭に浮かんできたのだ。しかも、嘘ではないという実感もある。ナニコレ?
「……わからない。でも、実感としてはあるんだ。もう一人の俺が学長のいる次元に向かっているのが。俺以外に付き添い人が二人いる……? 誰かはわからないけど。」
「何言ってんだ、お前……?」
「不思議と私もそんな予感がします。彼からそんなイメージが伝わってくるんです。」
「それも“勇気の共有”の影響か?」
「ええ……多分。」
不思議な感覚だった。ここではないどこかで俺が行動している。学長の本体の居場所へ向かっている。それは間違いないようだった。そしてそれは現実にも影響が現れた。
「……!? き、貴様!? 私の本体の居場所が何故わかった! そこにいるというのに何故だ!」
学長は突然動揺し始めた。確かに今……本体を見つけた様な気がする。もう一人の自分が辿り着いた。
「学長殿、貴公の命運は尽きたようだな。後は時間の問題。滅びゆく姿をじっくりと観察させてもらおう。」
「まだ終わっていない! 負けるわけにはいかんのだよ!」
王手に手がかかったのは間違いない。ここからどうやって学長を倒すのだろう? 後はもう一人の俺に命運を託すしかない。
0
あなたにおすすめの小説
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる