【第2部完結】勇者参上!!~究極奥義を取得した俺は来た技全部跳ね返す!究極術式?十字剣?最強魔王?全部まとめてかかってこいや!!~

Bonzaebon

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第3章 第3幕 はぐれ梁山泊極端派【絶望と憎しみと学園モノ……と大戦争!?】

第316話 なんでこんなところに?

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「あ、あれ? ここどこ?」


 俺はいつの間にか知らない場所にいた。知らないとはいえ、何度か来たことのある場所……。現実か夢かわからない場所で、たいていの場合は謎の人物と出くわす事が多い。そういった印象だ。


「来たな、兄弟。遅かったじゃないか。待ち侘びたぜ。」


 目の前に現れたのは、俺を昔から知っている親類みたいに気さくに話しかけてきた男。……あれ? 誰だっけ? 声には聞き覚えがあるし俺を“兄弟”と呼ぶのはあの人しかいなかったはず?


「どちら様でしたっけ?」

「なんだよ忘れたのかよ! 俺だ、俺!」


 前に会ったときはこの人の後ろ姿しか見ていない。黄色というか山吹色を基調とした道着風の服装をあちこちはだけさせたようなワイルドな着こなしをしている。このスタイルは特徴的すぎて忘れたくても忘れられない見た目だ。


「黄色……? あ、黄龍ホァンロン……?」

「正解! でも、気付くのおせーよ!」


 道着の黄色で思い出した。俺らの故郷では“黄色”は“ホァン”と呼ぶ。それで思い出した。ちなみに俺の知り合いにはもう一人、黄色のイメージカラーの人物はいるが、関係あるのだろうか? そもそも黄色は縁起の良い色といわれているので、服装などに取り入れている人は多い。何でも古代の王に縁のある色とも言われてる。だから何とも言えない。たまたま被っただけだろう。


「で、何の用?」

「何の用じゃねえよ! オメエが今、戦ってる相手の本体を探しに行くんだ。手伝ってやる。というか手は出さないが、見物させてもらう。」


 何故か、俺が今、何をしようとしてるか知っているようだ。どこかで見ていたんだろうか? 気配すら感じなかったのに……?


「ええーっ!? せっかく来たんだから手伝ってくれてもいいんじゃないすか、ホァンロン兄さん?」

「馬鹿言え! 俺は後輩の活躍の機会を横取りするほど、横暴じゃねえよ。わざわざ後輩の見せ場を作ってやるのが先輩の使命だ!」


 俺の戦いを観戦に来ただけのようだ。見世物じゃないんだよ? 今、世界の命運を決める史上最大の戦いが行われているというのに! 下手すりゃ、人類が滅ぶところなんだけど!


「彼と私は手を出す権利は無い。現勇者である君が決着を付ける事に意義があるのだ。」


 俺と兄さんが漫才じみたやりとりをする中、第三の人物が姿を現した。全身白ずくめの立派な全身鎧を身に付けた人物。正に聖騎士といった風貌だ。この人も微妙に見覚えがある。たった一度だけ声をかけられた記憶がある。


「私達二人はアドバイスをするだけに留めておかなくてはならない。それ以上関われば歴史への介入と見なされてしまう。」

「あの……? どなた様でしたっけ?」

「オメエも知らねえのかよ!」


 いや、そんなこと言われても記憶が曖昧だから誰かわからない。ホァンロン兄さんと違って、名前すら聞いていないのだから、正体がわかるはずがない。


「これは失礼。訳あって名乗ることが許されていない身なのでね。かつて勇者を務めた事がある男とだけ言っておこう。」


 聖騎士は兜を脱ぎ、お辞儀をした。これで初めて顔を見ることになったが、超が付くほどの美青年だった。女性でもここまで気品と綺麗さを兼ね備えている人はいない。


「元勇者!? でも、勇者王に会った時はいなかったような……?」


 立ち振る舞いだけではなく見た目すら非の付け所のない風貌だった。気さくなニイチャン風のホァンロン兄さんとは正反対の人間だった。でも、兄さんが感じ悪い人間というわけではない。あくまで人としてのタイプが正反対というだけだ。


「私はあの場所に並ぶことを許されていないのだよ。ある罪を犯したからだ。それ故、名乗ることすら許されてはいない。」


 随分と訳ありの人物なようだ。一体過去に何があったのだろう? 罪なんて無縁そうな人に見えるのにな。むしろ、俺の方が色々問題行動を起こしている気がする。


「私の事はここまでにしておこう。君に会ったのは大武会の決勝戦の直前だった。」


 そういえば、額冠を外し、決意を固めた時だった。あの時、白昼夢のような現象に出くわした。その時に現れたのが、この人だった。


「君が勇者の力を借りることなく、自らの力で、自らの試練に立ち向かう姿を見たときに感銘を受けたのだ。……素晴らしい試合だった。斯くも美しい勝利を見たのは初めてだった。そこで更に私は感銘を受けたのだ。先達の身ではあるが、君のことは心から尊敬している。」

「そ、そ、そ、そんなこと言われても照れるからやめて欲しいんですけど?」

「何照れてんだよ! こういうときゃ、もっと胸張ってりゃ良いんだよ!」


 あの試合が色んな人に見られていたっていうのが、最近になってわかってきた。この人やホァンロン兄さんだけじゃない。ジムのヤツも見たと言っていた。時々、町中とか酒場でも声をかけられる。そして毎回、むずがゆい感覚がする。褒められるの慣れてないから。


「敵を倒しに行くのはいいんだけど、俺の体は? 仲間は? ほっとくわけにはいかないような……。」

「それについては心配ない。ここに辿り着いた時点で“勇気の共有Cling Together”が成功したことを意味している。信じがたい話だと思うだろうが、ここにある君の意識とは別に君の本体も同時に現実で戦っている。心配することはない。」

「ある意味、俺が二人いるみたいなことになってない?」

「ある意味、一つは二つ、二つは一つに回帰するものだ。」

「……?」


 イマイチ理解が追いつかない。二つが一つ、一つは二つ? 頭がおかしくなりそうだ。深く考えないようにしよう。


「お前さん達、いつまで小難しい話を続けるつもりだ? 俺はそろそろ飽きてきたぜ。早いとこ、気が狂った賢者さんのところへ行こうぜ?」


 気が狂った……。凄い例え方だな。道を究めた人から見れば学長も拗らせた馬鹿にしか見えないのかもしれない。


「でも、どうやって?」

「おいおい! 前にやり方を教えてやっただろ? アレだよ、アレ!」


 学長は違う次元にいると言っていた。そこへ行く方法は……? 転移魔法とかでないのなら、もしかして、あの技のことを言っているのだろうか? 


「異空跋渉!!」


 手刀を振り、空間に裂け目を作る。そのままそこへ入っていく。二人も付いてくるのが気配でわかる。正解ではあるようだ。でも、コレは兄さんから教わった技じゃないんだけど? ホァンロン兄さんの正体とは一体……?体とは一体……?
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