316 / 331
第3章 第3幕 はぐれ梁山泊極端派【絶望と憎しみと学園モノ……と大戦争!?】
第316話 なんでこんなところに?
しおりを挟む「あ、あれ? ここどこ?」
俺はいつの間にか知らない場所にいた。知らないとはいえ、何度か来たことのある場所……。現実か夢かわからない場所で、たいていの場合は謎の人物と出くわす事が多い。そういった印象だ。
「来たな、兄弟。遅かったじゃないか。待ち侘びたぜ。」
目の前に現れたのは、俺を昔から知っている親類みたいに気さくに話しかけてきた男。……あれ? 誰だっけ? 声には聞き覚えがあるし俺を“兄弟”と呼ぶのはあの人しかいなかったはず?
「どちら様でしたっけ?」
「なんだよ忘れたのかよ! 俺だ、俺!」
前に会ったときはこの人の後ろ姿しか見ていない。黄色というか山吹色を基調とした道着風の服装をあちこちはだけさせたようなワイルドな着こなしをしている。このスタイルは特徴的すぎて忘れたくても忘れられない見た目だ。
「黄色……? あ、黄龍……?」
「正解! でも、気付くのおせーよ!」
道着の黄色で思い出した。俺らの故郷では“黄色”は“ホァン”と呼ぶ。それで思い出した。ちなみに俺の知り合いにはもう一人、黄色のイメージカラーの人物はいるが、関係あるのだろうか? そもそも黄色は縁起の良い色といわれているので、服装などに取り入れている人は多い。何でも古代の王に縁のある色とも言われてる。だから何とも言えない。たまたま被っただけだろう。
「で、何の用?」
「何の用じゃねえよ! オメエが今、戦ってる相手の本体を探しに行くんだ。手伝ってやる。というか手は出さないが、見物させてもらう。」
何故か、俺が今、何をしようとしてるか知っているようだ。どこかで見ていたんだろうか? 気配すら感じなかったのに……?
「ええーっ!? せっかく来たんだから手伝ってくれてもいいんじゃないすか、ホァンロン兄さん?」
「馬鹿言え! 俺は後輩の活躍の機会を横取りするほど、横暴じゃねえよ。わざわざ後輩の見せ場を作ってやるのが先輩の使命だ!」
俺の戦いを観戦に来ただけのようだ。見世物じゃないんだよ? 今、世界の命運を決める史上最大の戦いが行われているというのに! 下手すりゃ、人類が滅ぶところなんだけど!
「彼と私は手を出す権利は無い。現勇者である君が決着を付ける事に意義があるのだ。」
俺と兄さんが漫才じみたやりとりをする中、第三の人物が姿を現した。全身白ずくめの立派な全身鎧を身に付けた人物。正に聖騎士といった風貌だ。この人も微妙に見覚えがある。たった一度だけ声をかけられた記憶がある。
「私達二人はアドバイスをするだけに留めておかなくてはならない。それ以上関われば歴史への介入と見なされてしまう。」
「あの……? どなた様でしたっけ?」
「オメエも知らねえのかよ!」
いや、そんなこと言われても記憶が曖昧だから誰かわからない。ホァンロン兄さんと違って、名前すら聞いていないのだから、正体がわかるはずがない。
「これは失礼。訳あって名乗ることが許されていない身なのでね。かつて勇者を務めた事がある男とだけ言っておこう。」
聖騎士は兜を脱ぎ、お辞儀をした。これで初めて顔を見ることになったが、超が付くほどの美青年だった。女性でもここまで気品と綺麗さを兼ね備えている人はいない。
「元勇者!? でも、勇者王に会った時はいなかったような……?」
立ち振る舞いだけではなく見た目すら非の付け所のない風貌だった。気さくなニイチャン風のホァンロン兄さんとは正反対の人間だった。でも、兄さんが感じ悪い人間というわけではない。あくまで人としてのタイプが正反対というだけだ。
「私はあの場所に並ぶことを許されていないのだよ。ある罪を犯したからだ。それ故、名乗ることすら許されてはいない。」
随分と訳ありの人物なようだ。一体過去に何があったのだろう? 罪なんて無縁そうな人に見えるのにな。むしろ、俺の方が色々問題行動を起こしている気がする。
「私の事はここまでにしておこう。君に会ったのは大武会の決勝戦の直前だった。」
そういえば、額冠を外し、決意を固めた時だった。あの時、白昼夢のような現象に出くわした。その時に現れたのが、この人だった。
「君が勇者の力を借りることなく、自らの力で、自らの試練に立ち向かう姿を見たときに感銘を受けたのだ。……素晴らしい試合だった。斯くも美しい勝利を見たのは初めてだった。そこで更に私は感銘を受けたのだ。先達の身ではあるが、君のことは心から尊敬している。」
「そ、そ、そ、そんなこと言われても照れるからやめて欲しいんですけど?」
「何照れてんだよ! こういうときゃ、もっと胸張ってりゃ良いんだよ!」
あの試合が色んな人に見られていたっていうのが、最近になってわかってきた。この人やホァンロン兄さんだけじゃない。ジムのヤツも見たと言っていた。時々、町中とか酒場でも声をかけられる。そして毎回、むずがゆい感覚がする。褒められるの慣れてないから。
「敵を倒しに行くのはいいんだけど、俺の体は? 仲間は? ほっとくわけにはいかないような……。」
「それについては心配ない。ここに辿り着いた時点で“勇気の共有”が成功したことを意味している。信じがたい話だと思うだろうが、ここにある君の意識とは別に君の本体も同時に現実で戦っている。心配することはない。」
「ある意味、俺が二人いるみたいなことになってない?」
「ある意味、一つは二つ、二つは一つに回帰するものだ。」
「……?」
イマイチ理解が追いつかない。二つが一つ、一つは二つ? 頭がおかしくなりそうだ。深く考えないようにしよう。
「お前さん達、いつまで小難しい話を続けるつもりだ? 俺はそろそろ飽きてきたぜ。早いとこ、気が狂った賢者さんのところへ行こうぜ?」
気が狂った……。凄い例え方だな。道を究めた人から見れば学長も拗らせた馬鹿にしか見えないのかもしれない。
「でも、どうやって?」
「おいおい! 前にやり方を教えてやっただろ? アレだよ、アレ!」
学長は違う次元にいると言っていた。そこへ行く方法は……? 転移魔法とかでないのなら、もしかして、あの技のことを言っているのだろうか?
「異空跋渉!!」
手刀を振り、空間に裂け目を作る。そのままそこへ入っていく。二人も付いてくるのが気配でわかる。正解ではあるようだ。でも、コレは兄さんから教わった技じゃないんだけど? ホァンロン兄さんの正体とは一体……?体とは一体……?
0
あなたにおすすめの小説
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
盾の間違った使い方
KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。
まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。
マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。
しかし、当たった次の瞬間。
気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。
周囲は白骨死体だらけ。
慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。
仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。
ここは――
多分、ボス部屋。
しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。
与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる
【異世界ショッピング】。
一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。
魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、
水一滴すら買えない。
ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。
そんな中、盾だけが違った。
傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。
両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。
盾で殴り
盾で守り
腹が減れば・・・盾で焼く。
フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。
ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。
――そんなある日。
聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。
盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。
【AIの使用について】
本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。
主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。
ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる