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第1章 勇者マストダイ!!【勇者なのに……〇〇されました。】
第9話 ヘイゼルちゃんをプロデュース?
しおりを挟む「あの娘を勇者にねぇ? 勇者に仕立て上げようったって、あの娘はほぼ魔法使いじゃないか? 剣とか武術が使えるわけでもないんだろう?」
魔術師の家系だから基本的にエルと同じで魔術師の素養しかなさそうだったんだが? エルは父親が元勇者だから武術の才能もあったけど、あの娘はそういうわけではないはず。
ナドラ叔母さんの旦那さんのことは知らないがどうせ魔術師に決まっている。あの性格じゃ戦士とか騎士とかとはわかり合えそうな性格じゃないしな。例え義手が使えたとしても、勇者となるには少々厳しいのではと思う。
「フン、そんなものどうにでもならぁ。心正しき正義の戦士ってお膳立てがありゃあ、誰でも勇者になれるだろうよ。」
「なんかそれ勇者を舐めてない?」
「ハッ! お前が言えることかよ。お前も随分と偏った技能持ちだそうじゃないか? 魔法の才能がミソっカスだそうじゃないか、ああん?」
「うっ!? 耳が痛い!」
魔法の才能ゼロな俺には耳が痛い事実だった! 歴代の勇者は大抵は戦士とか騎士だったようだが、中には多少は魔法の素養があったそうだ。先々代のシャルルは魔法を使いこなしていたと聞く。そこまでの腕じゃなくとも、多少というのが重要らしく、額冠の力でブーストされるので補助的な意味合いで使いこなせるようになるようだ。特に回復魔法を使えるようになる勇者は多かったようだ。
俺はそれすら使えない無能なのである。多少火起こし程度の火炎魔法しか使えない。だがそれも峨嶺辿征みたいに魔法無効化・妨害手段を取得するのに繋がったし、限定的に勇気の共有で使えるようにはなった。
「勇者ってのは才能とか能力ってのは二の次だと思うぜ。勇者に必要なのはカリスマ性だ。」
「あの娘にカリスマ性なんてあるか? お嬢様育ちで多少かわいいという程度でしかないと思うが……?」
「カリスマ性ってヤツをお膳立てするには何が必要だと思う? 然るべきバックグランドストーリーってのがあれば成立するものなのさ。」
「何それ? なんか演劇の脚本とか、小説みたいじゃないか?」
「民衆ってのは花のある英雄を求めているもんさ。美しいストーリーや悲劇的な過去、壮絶な宿命ってものに惹かれるもんよ。」
勇者の過去背景が民衆の共感を呼ぶとかそういう話か。シャルルは名門家系の出身だったそうだし、カレルはその弟子で、牛の魔王に滅ぼされた町の唯一の生き残りだったという過去がある。
俺もそれなりに過去はあるが落ちこぼれだったので格好が付かない。しかも異国の話なのでこの国の人々にとっては「知らんがな!」って事になるのだろう。だからあんまり人々もピンときていないので”繋ぎの勇者”だと思われているんだろうな。
「あの嬢ちゃんの従姉が魔族に墜ち、それを討ったとあれば、民衆の興味を引けるだろうよ。しかも、魔王になりかけていたと知られれば、更に嬢ちゃんの評価も上がるだろうよ。だが、お前がその機会を奪ったとも言えるだろうな。」
「やめろよ。その前にドラゴンズ・ヘヴンも一枚噛んでるからな。魔王化しかけたのもそいつらのせいだし。なんで俺らのせいになるんだよ!」
「お前は知らないんだろう? 少なくとも法王庁の人間に取っちゃあ、お前に、何処の馬の骨とも知れない通りすがりの勇者に手柄を横取りされたんだからな。自覚はしておけよ。お前へのヘイトの原因はそこにある。」
俺が勇者としての仕事を全うに果たしたのに非難されるなんておかしいよ! どんだけ自分の勢力から勇者を輩出したいんだ? 自分の都合で勇者さえも動かすようになったその先に何を求めているのだろう? もしかして世界を手中に収めるとか、世界征服すら企んでいるんじゃなかろうな? ここまで来たら、やってることが魔王達と大して変わりがないじゃないか。
「あの嬢ちゃんの従姉を利用できなくなった以上、そのターゲットがお前に切り替わったと言っても過言ではない。法王が”不適格”と判断した以上、お前を勇者の座から引きずり下ろすための大義名分が確立されたようなもんだ。観念するんだな。法王庁を敵に回して生きていたヤツなんてこの世にはいないんだ。俺の昔の上司がそうだったようにな。」
「お前の上司が? どんな人だったんだ。」
「俺の口から語るような事はしない。知りたきゃ、仲間を頼りに俺の過去を聞いてみるこったな。ただ一つ言えるのは……お前も会ったことがある男ってことだな。」
誰のこと? この男の上司っていうのは何者なのか? しかも敵に回して生きてる者はいないって言ってるのに矛盾してないか? ますます謎めいてきたな。生きて帰った時にファルやエドに聞いてみるしかない。でも、待てよ? 生きて帰る事って出来るのか? 帰れたとしても俺は別人みたいになっているはずでは?
「仲間に聞いてみろって、おかしいこと言ってないか? 生きて帰れる保証はないっていうのに?」
「ハッ! 勘の悪い奴だな。それくらい察したらどうだ。皆まで言わずともそれの意味することはわかることだろう?」
「まさか、お前……?」
ブレンダンは詳しいことを何も言わず、ただただ不適に笑うだけだった。人格すら洗い流され洗脳される可能性がある上に、場合によっては命の保証すらないところに送られるっているのに……何か策があるんだろうか? 内部の人間だから何かしら脱出の手段を知っているのかもしれない。
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