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第1章 勇者マストダイ!!【勇者なのに……〇〇されました。】
第22話 助けりゃ良いってものではないんですよ?
しおりを挟む「今回は被告人が闇に汚染された人間を匿っていることについてです。」
裁判の二日目がスタートした。前回はカレルの殺害疑惑を問われるないようだったが証拠不十分となり、不問という扱いになった。今回はエルを助けた事の是非を問われることになる。
教団の方針としては、デーモン・コア等で闇に汚染された者、特に魔族化してしまった時点で即刻処分対象となるそうだ。俺がそれに従わなかった事が大いに問題があると教団側は訴えている。今回もシャルルが主導するような形で始まってしまった。
「彼、勇者ロアはイースト・ウッド近郊の砦跡でデーモン・コアの欠片に汚染された女性を助けました。事の発端は騎士団のイグレス卿からの協力要請に応じたことにあります。」
女性……か。裁判の都合だからなんだろうけど、シャルルが実の娘をそんな呼び方にするのは違和感しか感じなかった。彼女の事を認知していないからといって、他人行儀なままで済ませれるものなんだろうか? エルフリーデさんとの関係を頑なに認めようとしないのはどういう理由があるんだろうか?
「砦跡に魔物が巣くっている可能性があるということで騎士団側が対処に向かったということですが、原因は件の女性が立て籠っていた事にあります。」
前の話もそうだったが、話だけを聞いていると懐かしく思う。すごく場違いな感情なのはわかっているが、俺の勇者としての活動はあの場所から始まったといっても過言ではない。
そして、エルと出会った大切な思い出の場所でもあるので色々と特別な思いが俺にはある。その思いがある以上、この公判でも負けるわけにはいかないという自負がある。だが、相手であるシャルルはかなり手強い。今さらこの話を持ち出してくるのだから、俺を糾弾するだけの材料は十分揃えてきているに違いなかった。
「当初はイグレス卿も自らの部隊のみで事に当たる予定であったようですが、偶然、ロア殿が滞在していた事を冒険者ギルドから聞き付け、応援の要請をしたとの事です。」
砦の廃墟の調査ツアーみたいな冒険者のテンプレのような仕事を引き受けた俺は断るわけにもいかず、エド達に付いていくことになった。当時のエドは就任したての俺を懐疑的に見ていたので試す意味もあったのだろう。
後は冒険者ギルド側が提示した特別な”実技試験”も兼ねていたようだ。後から聞かされたんだが、俺が冒険者ライセンス試験に不合格になった事を受け、サヨちゃんがギルド長に掛け合った末に提示された仕事であったようだ。
ヴァル・ムングを倒した程なんだから、不合格になるのはおかしいと猛抗議してくれていたようだ。俺を笑い者にしていた影で、さりげなく裏でギルド長と交渉してくれていたのだ。ホント、サヨちゃんには頭が上がらない。
「件の女性が砦に現れた経緯はドラゴンズ・ヘヴンから隙を見て脱出後の逃避行の末に辿り着いたのが件の砦であったようです。彼女は研究のために彼らに捕らわれていたようです。」
この事件は俺がヴァルのヤツを倒したことが大きく影響しているようだ。ヴァルが倒れたとの報が入り、ドラゴンズ・ヘヴン内では混乱が生じていたらしい。その混乱を利用してエピオンが事を起こして、エルを脱出させたのだそうだ。
これはエル本人から聞いたし、エルの記憶の世界で垣間見たので知っている。恐らくエピオンが介入してきたから、より鮮明にその日の出来事を見ることが出来たんだろう。アイツが外から無理矢理侵入してきたから、アイツ自身の記憶も混入していたのだ。他人の記憶の世界に入る時の副作用的な現象であるらしい。とはいっても対象の人物と共通の思い出とかがないと不可能ではあるらしいが……。
「そして、その5年前にも彼女は問題を起こしているのです。彼女の体内に存在していたコアの欠片が活性化し周囲にアンデッド等の魔物たちを呼び寄せるといった事件を起こしていました。」
彼女が実家から離れる原因ともなった事件だな。デーモン・コアの欠片はエルフリーデさんの体を蝕み続けただけでなく、その子であるエルにも引き継がれてしまったのだ。そして、彼女の成長と共にコアも魔力を取り込みながら再生を続けていたのだという。
「この事件は異端審問会の耳にも入り、即刻処分という対応になったのですが、ドラゴンズ・ヘヴン構成員であるオプティマ・マッドによって阻止されるという結果になりました。そのまま女性の身柄は彼によって拘束され連れ去られることになり、消息不明となっていたのです。拐われるという経緯があったとはいえ、彼女は刑から逃れた罪を負っているという事になります。」
エルは今から6年前(※第一部から第四部までの間に約1年程経過しています。)に異端審問会から処刑されそうになった。そこで運が良かったのか悪かったのか、オプティマによって拐われるような事態に発展してしまったのだという。しかし、その事実が原因で”逃亡罪”まで課せられるようになったのには納得がいかない。
「つまり、ロア殿は二重に罪を負った人間を匿っているのであります。これは勇者としての責務を放棄したとも言っても過言ではないでしょう!」
エルを助けた事が間違っていると……。この件は前の勇者簒奪疑惑とは違って否定することの出来ない話だ。でも俺は間違った事をしたとは思っていない。罪を問われるなら、この場で処刑されても文句は言わない。ここまで守り抜いてきた事に後悔はない。この後はエルを守る事が出来なくなるのが心残りだが……。俺が罪を受け入れる覚悟でいたら、弁護人のあの人がゆっくりと立ち上がる姿が見えた……。
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