25 / 54
4-4
ハッとして視線を向けると、騎士たちに促されて一人の貴婦人が進んでくる。
白髪交じりだが背は伸びて美しい。身長もそれなりにあり、作法が身にしみついているのが歩く所作からも感じられる。
彼女がレベッカ伯爵夫人だろう。
「遠いところご苦労」
「ご指名を光栄に思います。ロリスロード伯爵の妻、レベッカ・ロリスロードにございます。ヴァルトクス大公と、大公妃にご挨拶申し上げます」
片方の手でドレスのスカートを優雅に持ち上げる姿勢は、アイリスも見惚れてしまうほど美しい。
(ダンスの決めボースみたいだわ)
すると、姿勢を戻したレベッカ伯爵夫人の目が、早速アイリスに向いた。
「どうぞ、レベッカとお呼びください」
「は、はじめましてレベッカ様っ。私のこともどうぞアイリスと――」
「えっ、いえ、畏れ多くもそのような」
慌てて両手を小さく振ったレベッカ伯爵夫人が、胸に手を添えて深呼吸を挟み、じーっとアイリスを見つめてくる。
「あの……大公妃様は、とてもよいお方なのですね。あまりに美しいことにも驚きました。姿勢もとてもいいです。これでダンスは幼少期以来だというのも、信じられません」
そういえば、とアイリスは思い出す。
昨日からブロンズによる大公妃教育が始まった。まずは基本の姿勢をチェックしてもらうことになったのだが、とてもいいと彼は褒めていた。アイリスも日頃から自分の姿勢がいいことは自覚している。
(たぶん普段から姿勢を崩していたらそうならないはずと、分かる人には分かるのかもしれないわね)
記憶を手繰り寄せる限り『アイリス』は礼儀正しい子だった。
「失礼ですが、知識のほうは?」
レベッカ伯爵夫人が、ダンスの型といった名前をいくつか挙げてくる。
「どれも、全然分かりません……幼い頃に数回だけしか学んだことはなく……」
アイリスが静かに首を横に振ると、彼女だけでなく、ヴァンレックたちも驚きを隠せない様子だった。
「ということはもしや……一度も踊られたことはない?」
「はい、ありません。そもそも家族は、私にはダンスを実際踊ることについては不要だと考えていたようでした」
ぼかして大雑把に伝えた。軽く流そうとぎこちなく笑って答えたのだが、なぜかレベッカ伯爵夫人の顔色が悪くなる。
場に、重い空気が立ちこめるのを感じた。
原因は――ほとんどは隣だろう。
冷気を感じ取ったアイリスは、おそるおそる目を向ける。そこには空を見据えているヴァンレックがいた。
(さっきまで見ていた金色の目が、今はとても怖い感じがするわ)
彼の真顔はよく見てきたが、なんだか怖い感じだ。
ヴァンレックだけじゃない。レベッカ伯爵夫人のような反応を見せたメイドたちも、ブロンズも、納得がいかないと言わんばかりの顔に変化していく。
(ど、どうしよう)
自分のせいで空気が重くなってしまった。
「あ、あの、旦那様」
なんとかしなくちゃと思って声を出したら、彼がハッとしてピリついた雰囲気を消し、アイリスに視線を返してくる。
「なんでもない――アイリス」
向き合ってきたかと思ったら、彼が急にアイリスの手を優しくすくい取った。
「えっ、な、なんでしょうかっ?」
急に名前を呼ばれて動揺した。
「俺は兄上から、嫌というほどダンスを教え込まれたんだ」
唐突な彼の告白に、アイリスは大きな目をぱちくりとする。
「まぁ、なんて素直そうなお反応なの」
と声をもらしたレベッカ伯爵夫人が、素速く自分の口を手で塞いだ。
「国王陛下に、ですか……?」
「そうだ。俺には不要だと、剣と礼儀作法だけでいいと言ったんだが、兄上は『リードできるくらいダンスも習得していて損はない』と告げ、逃げ回る俺を何度も捕まえにきた。それで正解だったのだと今、実感した」
彼の眼差しが急に柔らかくなる。
アイリスは、どきっとした。
「俺がいる。アイリスの練習相手になろう。講師と俺の二人で進めていけば、きっと習得も早い。こう見えてダンスは得意なんだ」
女性を嫌がっていたという噂だから、相手はまさか国王なのだろうか。
想像が浮かんで少し好奇心が沸く。
けれどそれ以上に、アイリスは優しく微笑みかけてくるヴァンレックに、自分の胸が甘く高鳴っているのを感じていた。
「……お、お時間を取ってしまいますのに」
「気にしなくていい。俺がしたくてしている。相手役を、任せてくれ」
「っ」
そんなこと言われたら断れない。
(人嫌いなような恐ろしい大公様も、子育ての協力者にはこんなにも優しく――)
初めての感覚に、全身の血がはやく流れていくのを感じていた。胸がときめいて、相手の瞳の中に自分の心がまっすぐ落ちていくような感覚――。
だが、寸でのところで踏みとどまれた。
(ハッ、だ、だめよっ。彼は獣人族としてもう愛する人を決めている人なわけだし、可愛い子供だっているものっ)
しっかりしないと。そう自分に言い聞かせる。
――アリムの母親がいる。
彼が誕生したのは、美しいけど女性が近寄らないと言われているヴァンレックが、一人の女性と愛し合ったから。
そう考えれば、彼がアイリスのダンスの相手ができるのも不思議ではない。
けれど思うだけで胸はつきりと痛んだ。
「ア、アリムは大丈夫でしょうか」
否定しても惹かれていく予感に、アイリスは慌て視線をそらす。
すると、取られている手をくいっと優しく惹かれ、視線を引き戻された。ヴァンレックが高い位置にある頭を屈め、至近距離からこちらを覗き込んでいて、驚く。
「んなっ――」
「君は、ダンスの『目を合わせる』から始めなければならないな」
彼は自分の顔がいいことを自覚すべきだ。先程怖いと感じた一般的に知られているほうの姿を隠すと、ただただいい人にしか見えない。
いや、ただただ素敵な一人の男性に、だ。
(あ、あぁあぁあ、まずい)
ヴァンレックがきらきら輝いて見える。今、自分は考えも追いつかないくらい動揺しきって、恥ずかしい赤面を晒しているはずだとアイリスは分かった。
「奥様、よかったですわね」
レベッカ伯爵夫人が、そばからふふっと告げてきた。近くで待機しているブロンズも、その向こうにいるメイドたちも。出入り口で警備しているらしい二人の騎士もなんだかアリムを見守るような目を向けている。
「くくっ、君は本当に全部顔に出るんだな。アリムと初めて遊んでいた時と同じだ」
「だ、旦那様っ、意地悪なことを言わないでくだいっ」
赤面のことを言っているのだろうか。
こっちはいっぱいいっぱいなのに、そんな大人の余裕をかましてこないでほしい。魅力的でアイリスの心臓の音はうるさいままだ。
「アリムのことなら問題ない。アイリスのことなら、きっと喜んで協力してくれるだろう。君が心配するというのなら、ここへ来る前に俺がアリムのもと訪ねる――それでどうだ?」
「……悪くない提案ですね」
アイリスがダンスを習うことによって、思いがけずヴァンレックとアリムの接する時間が増える。父と子の時間を作っていく計画だったので、いい条件だ。
「それでは旦那様、もう一つ『無理のない範囲で付き合う』ということも条件に盛り込んでください。旦那様が大丈夫なのか、心配になりますから」
「分かった。無理のない範囲で、相手役を努めよう」
またしても彼の表情が柔らかくなる。
(私はアリムではないのだけれど?)
意識しないよう、アイリスはつい心の中で可愛くない反論をした。
白髪交じりだが背は伸びて美しい。身長もそれなりにあり、作法が身にしみついているのが歩く所作からも感じられる。
彼女がレベッカ伯爵夫人だろう。
「遠いところご苦労」
「ご指名を光栄に思います。ロリスロード伯爵の妻、レベッカ・ロリスロードにございます。ヴァルトクス大公と、大公妃にご挨拶申し上げます」
片方の手でドレスのスカートを優雅に持ち上げる姿勢は、アイリスも見惚れてしまうほど美しい。
(ダンスの決めボースみたいだわ)
すると、姿勢を戻したレベッカ伯爵夫人の目が、早速アイリスに向いた。
「どうぞ、レベッカとお呼びください」
「は、はじめましてレベッカ様っ。私のこともどうぞアイリスと――」
「えっ、いえ、畏れ多くもそのような」
慌てて両手を小さく振ったレベッカ伯爵夫人が、胸に手を添えて深呼吸を挟み、じーっとアイリスを見つめてくる。
「あの……大公妃様は、とてもよいお方なのですね。あまりに美しいことにも驚きました。姿勢もとてもいいです。これでダンスは幼少期以来だというのも、信じられません」
そういえば、とアイリスは思い出す。
昨日からブロンズによる大公妃教育が始まった。まずは基本の姿勢をチェックしてもらうことになったのだが、とてもいいと彼は褒めていた。アイリスも日頃から自分の姿勢がいいことは自覚している。
(たぶん普段から姿勢を崩していたらそうならないはずと、分かる人には分かるのかもしれないわね)
記憶を手繰り寄せる限り『アイリス』は礼儀正しい子だった。
「失礼ですが、知識のほうは?」
レベッカ伯爵夫人が、ダンスの型といった名前をいくつか挙げてくる。
「どれも、全然分かりません……幼い頃に数回だけしか学んだことはなく……」
アイリスが静かに首を横に振ると、彼女だけでなく、ヴァンレックたちも驚きを隠せない様子だった。
「ということはもしや……一度も踊られたことはない?」
「はい、ありません。そもそも家族は、私にはダンスを実際踊ることについては不要だと考えていたようでした」
ぼかして大雑把に伝えた。軽く流そうとぎこちなく笑って答えたのだが、なぜかレベッカ伯爵夫人の顔色が悪くなる。
場に、重い空気が立ちこめるのを感じた。
原因は――ほとんどは隣だろう。
冷気を感じ取ったアイリスは、おそるおそる目を向ける。そこには空を見据えているヴァンレックがいた。
(さっきまで見ていた金色の目が、今はとても怖い感じがするわ)
彼の真顔はよく見てきたが、なんだか怖い感じだ。
ヴァンレックだけじゃない。レベッカ伯爵夫人のような反応を見せたメイドたちも、ブロンズも、納得がいかないと言わんばかりの顔に変化していく。
(ど、どうしよう)
自分のせいで空気が重くなってしまった。
「あ、あの、旦那様」
なんとかしなくちゃと思って声を出したら、彼がハッとしてピリついた雰囲気を消し、アイリスに視線を返してくる。
「なんでもない――アイリス」
向き合ってきたかと思ったら、彼が急にアイリスの手を優しくすくい取った。
「えっ、な、なんでしょうかっ?」
急に名前を呼ばれて動揺した。
「俺は兄上から、嫌というほどダンスを教え込まれたんだ」
唐突な彼の告白に、アイリスは大きな目をぱちくりとする。
「まぁ、なんて素直そうなお反応なの」
と声をもらしたレベッカ伯爵夫人が、素速く自分の口を手で塞いだ。
「国王陛下に、ですか……?」
「そうだ。俺には不要だと、剣と礼儀作法だけでいいと言ったんだが、兄上は『リードできるくらいダンスも習得していて損はない』と告げ、逃げ回る俺を何度も捕まえにきた。それで正解だったのだと今、実感した」
彼の眼差しが急に柔らかくなる。
アイリスは、どきっとした。
「俺がいる。アイリスの練習相手になろう。講師と俺の二人で進めていけば、きっと習得も早い。こう見えてダンスは得意なんだ」
女性を嫌がっていたという噂だから、相手はまさか国王なのだろうか。
想像が浮かんで少し好奇心が沸く。
けれどそれ以上に、アイリスは優しく微笑みかけてくるヴァンレックに、自分の胸が甘く高鳴っているのを感じていた。
「……お、お時間を取ってしまいますのに」
「気にしなくていい。俺がしたくてしている。相手役を、任せてくれ」
「っ」
そんなこと言われたら断れない。
(人嫌いなような恐ろしい大公様も、子育ての協力者にはこんなにも優しく――)
初めての感覚に、全身の血がはやく流れていくのを感じていた。胸がときめいて、相手の瞳の中に自分の心がまっすぐ落ちていくような感覚――。
だが、寸でのところで踏みとどまれた。
(ハッ、だ、だめよっ。彼は獣人族としてもう愛する人を決めている人なわけだし、可愛い子供だっているものっ)
しっかりしないと。そう自分に言い聞かせる。
――アリムの母親がいる。
彼が誕生したのは、美しいけど女性が近寄らないと言われているヴァンレックが、一人の女性と愛し合ったから。
そう考えれば、彼がアイリスのダンスの相手ができるのも不思議ではない。
けれど思うだけで胸はつきりと痛んだ。
「ア、アリムは大丈夫でしょうか」
否定しても惹かれていく予感に、アイリスは慌て視線をそらす。
すると、取られている手をくいっと優しく惹かれ、視線を引き戻された。ヴァンレックが高い位置にある頭を屈め、至近距離からこちらを覗き込んでいて、驚く。
「んなっ――」
「君は、ダンスの『目を合わせる』から始めなければならないな」
彼は自分の顔がいいことを自覚すべきだ。先程怖いと感じた一般的に知られているほうの姿を隠すと、ただただいい人にしか見えない。
いや、ただただ素敵な一人の男性に、だ。
(あ、あぁあぁあ、まずい)
ヴァンレックがきらきら輝いて見える。今、自分は考えも追いつかないくらい動揺しきって、恥ずかしい赤面を晒しているはずだとアイリスは分かった。
「奥様、よかったですわね」
レベッカ伯爵夫人が、そばからふふっと告げてきた。近くで待機しているブロンズも、その向こうにいるメイドたちも。出入り口で警備しているらしい二人の騎士もなんだかアリムを見守るような目を向けている。
「くくっ、君は本当に全部顔に出るんだな。アリムと初めて遊んでいた時と同じだ」
「だ、旦那様っ、意地悪なことを言わないでくだいっ」
赤面のことを言っているのだろうか。
こっちはいっぱいいっぱいなのに、そんな大人の余裕をかましてこないでほしい。魅力的でアイリスの心臓の音はうるさいままだ。
「アリムのことなら問題ない。アイリスのことなら、きっと喜んで協力してくれるだろう。君が心配するというのなら、ここへ来る前に俺がアリムのもと訪ねる――それでどうだ?」
「……悪くない提案ですね」
アイリスがダンスを習うことによって、思いがけずヴァンレックとアリムの接する時間が増える。父と子の時間を作っていく計画だったので、いい条件だ。
「それでは旦那様、もう一つ『無理のない範囲で付き合う』ということも条件に盛り込んでください。旦那様が大丈夫なのか、心配になりますから」
「分かった。無理のない範囲で、相手役を努めよう」
またしても彼の表情が柔らかくなる。
(私はアリムではないのだけれど?)
意識しないよう、アイリスはつい心の中で可愛くない反論をした。
あなたにおすすめの小説
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。
airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。
どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。
2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。
ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。
あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて…
あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
【本編完結】初恋のその先で、私は母になる
妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
第19回恋愛小説大賞にて、奨励賞を受賞いたしました。読者の皆様のおかげです!本当ありがとうございます。
王宮で12年働き、気づけば28歳。
恋も結婚も遠いものだと思っていたオリビアの人生は、憧れの年下公爵と一夜を共にしたことで大きく動き出す。
優しく守ろうとする彼。
けれどオリビアは、誰かに選ばれるだけの人生を終わらせたいと思っていた。
揺れる想いの中で、彼女が選んだのは――
自分の足で立ち、自分の未来を選ぶこと。
これは、一人の女性が恋を通して自分を取り戻し、母として、そして一人の人間として強くなっていく物語。
※表紙画像はAI生成イラストをつかっています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝🌹グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
そう名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
✴️設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
✴️稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした