目指すは師匠の助手です!規格外な戦闘系少女は、魔術師になりたい~大魔術師の弟子ですが、腹黒な兄弟子がいるとか知りませんでした~

百門一新

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本題の仕事と、不機嫌な兄弟子

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「今日行われる儀式は、ここで生まれる聖獣種〝有翼馬〟のためのものなんだ。彼らは木の中で約二十年かけて卵が育つ。危険がないよう成獣になるまで聖獣界で過ごす」
「卵のまま二十年なんだ! すごく長いね」
「貴重な聖獣の中には、もっと長いものもいるよ。ただ、そのすべてが有翼馬と同じく、聖獣界のゲートを通るのが一番目の〝魔力の位〟を上げる行動とも限らない」

 知ってるかな、とユーファの友好的な目が、ユキの返事を持つ。

「人間界で生まれる聖獣種のみの特徴だから、でしょ?」

 聖獣には、成長とは別に魔力の位を上げるという性質を持っている。

 これもまだ研究が進められていることだが、位が上がると格段に魔力の量や質が変わるそうだ。つまり強くなる。

「正解。生き残る確率を上げたいのなら、聖獣界以外で卵を産み、誕生したら聖獣界へとわたらせるほうが安心安全ということだね」

 その役目を担っていたのが聖獣種のドラゴンたちだ。

 彼らはどこかへと消えてしまった。人々は魔物との戦いで協力してくれている希望の光、精霊や聖獣を残してくれたことを感謝し、約束を守ると示して聖獣が必要とする際には手助けをする。

「光の精霊探しなんて骨が折れるから皆嫌がるんだけど、ラスフィールドからの依頼だからと偉い人たちに言われたから、ついでに引き受けたんだよ。僕らの目的は、儀式で聖獣界に送られるまでの護衛さ」
「護衛……?」
「つまりは、警備要員だ」

 ロイがあたりを見やりながら言った。小さな建物が並ぶ通りを見ていく彼の眼差しの感じからしても、これだけ人が少ないのは珍しいと物語っているようにユキには思えた。

「師匠絡みだ。これまで忙しくしていた、今回は参加しようと思ってな」
「ロイがいれば心強いだろうねぇ」
「他にも魔術師が入ってきているの?」

 ユーファの反応にピンときて尋ねてみると、彼は「うん、そう」と言った。

「僕たちを含めて四組はいる。誰が指名を受けているのか、どのくらいのチームが呼ばれているのかは知らないけど」
「曖昧だなぁ……」
「そりゃ、魔術師はそれぞれ派閥やらチームやらあって、慣れ合わないのがほとんどだからねぇ。あとは、ライバル意識かな」
「はぁ、ライバル……」
「ロイはその点、めちゃくちゃ敵を作るタイプ」
「あ、それ、分かる」

 途端にロイが「何が分かるというんだ?」と睨みつけてきた。

「俺は、馴れ合いが嫌いなだけだ。あと、弱い奴は足手まといだ」
「そういうところがだめなんだと思う」

 ユキはきっぱり教えてやったのだが、ロイは聞かなかったことにするつもりらしい。視線をぜうぽぅに戻して話しだす。

「この森には強固な結界魔法がある。聖獣が誤って町に迷い込んでしまわないよう、そして密猟者が神官の許可なく外部から入ることもできないものだ。それが今回、孵化する〝白の有翼馬〟を聖獣界のゲートへと導くために、解かれる。森の守りが薄くなるため、四方に信頼のおける魔術師をそれぞれ配置する」

「何もなければそれでよし。大魔術師が聖獣を帰還させる姿が見られるなんて、滅多にないからね。とくに〝白の有翼馬〟ってレアなんだよ!」

 ユーファはなんとも緊張感がない気がする。

「ん? 何かな?」
「……ねぇ、それってさ、見るのが目的になってない?」
「この聖域に直接乗り込もうとするバカな狩人は、少ない。用心にこしたことはないとう話だ」

 ロイがそう言った。

「条件としては、大魔術師をサポートできるくらいの実力者だ」
「それは……まぁ、分かりやすい」

 だからユキは『お留守番』だったのだろう。

 ロイとユーファがなぜか見てくる。

(だとするとボクって、――すごく貴重な機会を持てたんだ!)

 大魔術師としての師匠の大切な仕事の一つ。そのラスフィールドに、儀式の日に来られるとか、ツイてる。

「……なぜ目が輝いたんだ?」
「え? だって、こんなボクが師匠の仕事の場にいられるとか幸運でしょ?」

 そうだよねと同意を求めて見上げてみたら、ロイが区域でも詰まったみたいな表情をした。

(何考えているのか分からないな、不可解)

 すると今度は、ロイの表情がみるみる不機嫌になっていく。

「…………今、かなり失礼なことを思われた気がする」

 よ分からない男だ。

(依頼とティテールの一件が終わったら、次は師匠が儀式を行う森の警備なのか。嬉しいな)

 間接的にでも、ライファスの助けができるようで、嬉しい。
 彼の大事な仕事の一つを見られる喜びもある。

「ふふっ」
「ユキちゃん、なんだか楽しげだと理由教えてもらえるかな……?」
「終わったら師匠に話そうと思って。有翼馬が聖獣界に帰る光景って、すごいんでしょ? それを見られるんだから、師匠と同じものを見たよって、師匠と話すんだ。きっと素敵な時間になると思うな。そうでしょ?」

 それぞれに意見を求めたら、ユーファとロイが妙な間を置く。

(というか、じっと見られてない?)

 言葉もなくただただ見つめられるのは、居心地が悪い。ユキは次第に警戒心を覚え、じりじりと二人から少し後ろへと離れた。

 ロイがむっとしたように「おい」と言った。

「なんで離れる」
「ボクは『おい』じゃありませーん。だって二人、変なんだもん」
「あー、いや、その、ユキちゃんってほんと師匠様が好きなんだなぁ、と思って?」

 ユーファが困ったような顔で、変な笑みを浮かべる。

 ライファスと離れた状態で動き回るのは初めてだ。ユキは、ロイたちと行動を共にすることに少しばかりの不安が込み上げた。

「好きだし、尊敬してるけど……何か変なの?」
「えっ、いやいやいやっ、拾って育ててくれた親みたいなものだし!? そうっ、育て親と考えれば納得!」
「納得って――」
「ロイや他の弟子入りの子たちと違うからね! ああそうそう、ユキちゃんは有翼馬を見たことは!?」

 無理やり話を振られている気がしたが、確かに、ない。

 基本的に馬の姿をしているモノは、精霊も聖獣も気性が荒い。ライファスは、ユキを危険なところに連れて行ったことはないのだ。

「ううん、見たことない。図鑑の中だけ」
「じゃあ楽しみだね。その前に、これから行くドーラ家のことを一緒に頑張ろうね」

 ユーファが手を差し出す。

 友好的だ。どこかの兄弟子とは大違いである。卒業試験で一緒にいた、仲良くしてくれた同級生を思い出してユキの胸にじーんっときた。

「う、うん、頑張る」

 彼の手を握り返そうとした時、何か黒くて大きなものが間に入って邪魔した。それはロイで、彼は無言のままユーファの頭に拳骨を落としていた。

 ユキはびっくりした。ユーファはかなり痛かったのか、足を止めて、頭を両手で押さえて「ぐおぉぉ」とうめく。

「ちょっとっ、何してんの!」
「なんか、イラッときた」
「理不尽!」
「い、いいんだユキちゃん、だいたいこんな感じだから」

 もしかしたら僕がしゃべりすぎたのかもと、ユーファが頭をさすりながら呟く。

「とっとと行くぞ。まずはドーラ家だ」

 ロイはジャケットの内ポケットからたたまれた紙切れを取り出すと、広げる。一瞬、そこには手書きの地図が添えられているのがユキには見えた。

 あれが、依頼書だろう。魔術学校で見たものと形式が一緒だ。

 頭を撫でながら、ユーファが隣にきた。

「今日はちょっと機嫌が悪いかも。やっぱりさ、自分の師匠に若い子供ができるのは、複雑な思いがあるのかな?」
「そんなことボクに言われても……」

 こそっと答え返しつつも、ユキは自信がなくなって声がもっと小さくなっていく。

 確かに、弟子だと思っていたら育て親みたいに面倒を見ていた。

 予想と違いすぎて戸惑っている可能性も頭に浮かぶ。弟子というよりは養い子みたいだから、同じ弟子仲間と認めたくないのではないだろうか。

(ボクのこと、一度だって師匠の弟子同士だってことは口にしてないもんね)

 弟子同士仲良くするイメージが強い。

 だが、ロイとはそういう関係は望めそうないだろう。

 出会って八年、ライファスが彼のことを口にしなかったのは、自分のもとを卒業してもう師の手を必要としない立派な一人の魔術師だったから。

(……いやいやっ、ボクのほうこそ仲良くする気はないしっ)

 初対面で『アレ』と言われてから薄々感じていたが、やはりロイとは絶対に馬だって合わないだろう。

 ユキは、しんみりとした自分の気持ちを頭から慌てて振り払った。

          ◆◆◆
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