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プロローグ
宗教戦争勃発!? 異世界の聖職者は、思考停止したクズでした!
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「これは……」
「卑劣な……」
「やば……」
「クソ!」
「悪魔め……」
思い思いの悲痛な叫びは、僕の耳に幸せを運ぶ。
そんなに褒められるとは思わず、とても誇らしかった。
「私は殺されたくはないんだよ。だから、手を打っておいたのさ。
おまえたちが私を殺そうと動けば……わかるかな?」
勇者パーティの全員が映像に見入っていたものだから、気づかれないように、静かに、粛々と、得意の魔法を練り上げていくことができた。
これで、僕は死ぬことはないだろうし、彼らの命も手中に収めた。あとは、できるだけ時間をかけて弄ぶだけ。
待ちきれない僕は、勇者たちに早く行動を起こして欲しかった。
「貴様……こんなことが許されるとでも思っているのか!!」
勇者は悲痛な叫びを上げた。
「最低……」
魔女は……なんか女の子っぽいな。
「神よ……」
クソは……なんか泣いていた。
「絶対に許さん! 悪魔め」
戦士さん、僕は魔王です。
「このような非道……許されるわけがない」
シーフさんは普通だね。
僕はまじまじとみんなを見つめ、この催し物の趣旨を伝えることにした。
どうもみんな、激情に駆られて動き出すというような気配がないからね。
「これでわかったかな? 私を殺そうとするなら、君たちが出てきた西の大陸に毒の霧を放ち、一人残らず頭を潰してあげよう!」
玉座に肘をつき、不敵な笑みを浮かべて彼らを眺めていた。
映像には、王都の上空を黒く染め上げるほどの魔物の群れが映し出されている。
もちろん、そんなことはしない……なんてお約束はない。魔王だから。
「そんなことをしても、王国の騎士達も、屈強な冒険者達も倒れることはないぞ!」
なぜか勇ましく戦士がちょづいた。じゃあ、そうしよう。
「じゃあ、毒霧巻いても大丈夫なのだな。よし、そこで良く見ていろ」
僕映像を切り替え、魔物達に指示を出し、西の大陸にある一つの村に向けて毒霧を撒いた。
「な! 何をしているんだ!! 今すぐ辞めさせろ!!」
「おまえが大丈夫だって言うから、ちょっと試してみたかっただけなのに……嘘つかないでくれますか?」
「村には力を持たない村人が大勢いるんだぞ!! 嘘などついてはいない! 冒険者であれば問題ないと言ったのだ!!」
この馬鹿戦士はまたもやフラグを立ててしまった。
次は、冒険者が集う中央都市、アインケルンに決定だ。
「そうだったのか! それはすまなかった。では、次はアインケルンだな!」
映像が移り変わり、今度はアインケルン上空を映し出した。
「待て! ダメだ! やめてくれ!」
「ああ……ごめん。もう指示出しちゃった。そこでゆっくり見ててくれ。
今度は上空だけじゃなく、冒険者がちゃんと生き残るのか地上も確認するから」
忠実なガーゴイル達は、主人の指示に迷うことはない。人を殺す毒霧を撒き散らす行為をためらうことなく遂行してゆく。
アインケルン上空を、どす黒い紫の霧で覆い、降り注ぐようにゆっくりと霧は下降していった。
「あああああ!! なぜだ! なぜこのようなことを!」
「おまえが大丈夫って言ったからだろ……」
「私は!……私はそんなつもり……」
戦士が今にも崩れようかという時、映像には奇妙な光景が映し出されていた。
「ん? なんだこれ」
毒の霧は、アインケルンの建物の少し上あたりから下降することはなかった。
街全体が何かに守られているかのように霧を防いでいた。
「このスキルは! アインケルンの大魔道師、フェリアーラ様!」
目を輝かせて映像に反応したのは、今まで女の子ちっくだった魔女。何かを拗らせたように甘くとろけるような声を出し、偉大な魔法に魅入っている。
「ほー。んじゃまあ、五分おきに毒霧を少しづづ垂れ流すとしよう」
魔物達は吐き続けていた毒霧を一旦取りやめ、上空を旋回し始めた。
五分おきにに毒霧を発生させることにしたのは、街を守るバリアみたいなのが、いつか切れるんじゃないかなーと考えていたからだ。
それとは別のことだが、僕は魔王っぽい話し方をするのに飽きてしまっていて、気づかないうちに普段の話し方に戻ってしまっていた。
「ふん! いくらやっても無駄よ。 あれは結界なんだから。半永久的にあの街を守っているんだから!」
なぜこうも馬鹿ばかりなのだろうか?
こっちがまだ理解していない自陣の切り札を、魔女はあっさりとバラしてしまった。
「そうなんだ。じゃあ戦士さんの言うとおりだって証明されたね」
「……」
馬鹿も少しは学習したらしい。
下手なこと言わないよう口をつぐんだみたいだ。
「よし! どうやらやっと交渉できそうな雰囲気になったね。勇者さん、もう一度聞くけど、僕を殺そうなんてまだ考えているのかな?
あーそうそう、考えなしの感情論を吐いた瞬間、女僧侶を殺すから」
勇者と女僧侶は僕を睨みつけると、お互い示し合わせたように顔を向け合い見つめあった。
連携技でも出すのだろうか?
「勇者様、使命に背く行為は許されません。私たちは、魔王を倒す……そのために——」
「——僕が許す!」
聞くに堪えないクソ理論を大声で一蹴する。
やっぱりクソがしゃしゃり出てきた、もういい加減うざいのでクソ理論を遮ってやった。
「勇者くん達は、まったく過去の出来事を知らないだろうから、僕は今まで寛容だったんだけど、これじゃあ交渉もフェアじゃないよね!
だからさ、この戦いの発端を見てみたくないかい?
その映像を見て、自分の考えを述べて貰えると嬉しいな!
あー、でもでも、映像を見たらもう対等だからさ、言葉には気をつけなよ? 容赦しないから」
「な……何を見せるっていうの。この戦いは、神が定めた使命なのよ!」
「聞いてなかったのか? おまえ、いい加減にしろよ? さっきから僕を殺せとしか言ってないよね? なんで神託とかいうなんの根拠も正義も正当性のかけらもないものに縋って悪の所業を肯定するの?」
クソは僕の言葉が理解できなかったみたいで、反論に詰まっていた。
仕方ない。こいつにも慈悲が必要らしい。
「おい、クソ僧侶。黙ってないで僕の質問に答えろ。そのまま黙っているなら十秒後に足をへし折る」
僕の慈悲は厳しい。しかし、殺されてもおかしくないことばかりのたまっていた罰にしては軽いと思うけれども。
「……神の御心のままに」
「……それは足を折ってくれってこと? それとも、僕の質問に対する返答?」
「これが、私の信じる道です。どう言われようと、神は私たちを見守ってくださっています。
その神の神託に背く行為は……聖職者として、許されない行為な——」
「——僕が許す!」
「なっ……」
またしても遮られてしまったクソのクソ理論。
しかし、今度は勇者じゃなくて、クソに対して言ってあげた。
そんな神に仕えなくても、僕に仕えればいいんだ。そうだろう?
「なにを……」
「もうおまえ、目を覚ましたら? 思考停止した人間なんて、知的生物として恥だよ?」
「な……なんてことを!」
「じゃあ、神の神託とか御託はいいから、おまえの考えを述べろよ!!
ああ、あと、言葉には気をつけろよ、いい加減容赦する気もないから」
周りからの反論は来ない。
戦士がしたミスを恐れてのことか、なんとなく神ってクズじゃねって少しでも感じているのかはわからないが。
「私は……神を……っ!!!」
クソは突然、言葉もなく崩れ落ちた。
クソの異変に気づいた勇者がクソに駆け寄る。
「ララ!! 貴様……ララに何をした!!」
勇者は僕を睨みつけ叫ぶ……勇者っぽく味方を案じて。
「うるさい。僕はちゃんと説明しておいたはずだ。
勇者くんはちゃんと答えなかったそいつを叱るべきじゃないのか?」
「ララは聖職者なんだ! 神に背く行為なんてできるわけないだろ!」
「なんで? そいつは神じゃないただの人間だろ? 自分で考えて発言するなんて、子供でもできるようなことなのに……立派な勇者パーティの一員ができないなんてことがあるわけないじゃん。
なんでそんな嘘をつくの?
正義の味方なんだろ?
なんで君達はそんなに嘘にまみれているの?
できないなんて言って、僕を騙そうとするなんて、それが勇者の務めなの?
いい大人が自分の頭で考えることができないなんてことがあるわけないよね? 恥ずかしいと思わないの?
せっかく話し合おうとしている僕が馬鹿みたいじゃないか……。
だからさ……だからさぁ! そんな簡単に嘘をつくなよ!!!」
「卑劣な……」
「やば……」
「クソ!」
「悪魔め……」
思い思いの悲痛な叫びは、僕の耳に幸せを運ぶ。
そんなに褒められるとは思わず、とても誇らしかった。
「私は殺されたくはないんだよ。だから、手を打っておいたのさ。
おまえたちが私を殺そうと動けば……わかるかな?」
勇者パーティの全員が映像に見入っていたものだから、気づかれないように、静かに、粛々と、得意の魔法を練り上げていくことができた。
これで、僕は死ぬことはないだろうし、彼らの命も手中に収めた。あとは、できるだけ時間をかけて弄ぶだけ。
待ちきれない僕は、勇者たちに早く行動を起こして欲しかった。
「貴様……こんなことが許されるとでも思っているのか!!」
勇者は悲痛な叫びを上げた。
「最低……」
魔女は……なんか女の子っぽいな。
「神よ……」
クソは……なんか泣いていた。
「絶対に許さん! 悪魔め」
戦士さん、僕は魔王です。
「このような非道……許されるわけがない」
シーフさんは普通だね。
僕はまじまじとみんなを見つめ、この催し物の趣旨を伝えることにした。
どうもみんな、激情に駆られて動き出すというような気配がないからね。
「これでわかったかな? 私を殺そうとするなら、君たちが出てきた西の大陸に毒の霧を放ち、一人残らず頭を潰してあげよう!」
玉座に肘をつき、不敵な笑みを浮かべて彼らを眺めていた。
映像には、王都の上空を黒く染め上げるほどの魔物の群れが映し出されている。
もちろん、そんなことはしない……なんてお約束はない。魔王だから。
「そんなことをしても、王国の騎士達も、屈強な冒険者達も倒れることはないぞ!」
なぜか勇ましく戦士がちょづいた。じゃあ、そうしよう。
「じゃあ、毒霧巻いても大丈夫なのだな。よし、そこで良く見ていろ」
僕映像を切り替え、魔物達に指示を出し、西の大陸にある一つの村に向けて毒霧を撒いた。
「な! 何をしているんだ!! 今すぐ辞めさせろ!!」
「おまえが大丈夫だって言うから、ちょっと試してみたかっただけなのに……嘘つかないでくれますか?」
「村には力を持たない村人が大勢いるんだぞ!! 嘘などついてはいない! 冒険者であれば問題ないと言ったのだ!!」
この馬鹿戦士はまたもやフラグを立ててしまった。
次は、冒険者が集う中央都市、アインケルンに決定だ。
「そうだったのか! それはすまなかった。では、次はアインケルンだな!」
映像が移り変わり、今度はアインケルン上空を映し出した。
「待て! ダメだ! やめてくれ!」
「ああ……ごめん。もう指示出しちゃった。そこでゆっくり見ててくれ。
今度は上空だけじゃなく、冒険者がちゃんと生き残るのか地上も確認するから」
忠実なガーゴイル達は、主人の指示に迷うことはない。人を殺す毒霧を撒き散らす行為をためらうことなく遂行してゆく。
アインケルン上空を、どす黒い紫の霧で覆い、降り注ぐようにゆっくりと霧は下降していった。
「あああああ!! なぜだ! なぜこのようなことを!」
「おまえが大丈夫って言ったからだろ……」
「私は!……私はそんなつもり……」
戦士が今にも崩れようかという時、映像には奇妙な光景が映し出されていた。
「ん? なんだこれ」
毒の霧は、アインケルンの建物の少し上あたりから下降することはなかった。
街全体が何かに守られているかのように霧を防いでいた。
「このスキルは! アインケルンの大魔道師、フェリアーラ様!」
目を輝かせて映像に反応したのは、今まで女の子ちっくだった魔女。何かを拗らせたように甘くとろけるような声を出し、偉大な魔法に魅入っている。
「ほー。んじゃまあ、五分おきに毒霧を少しづづ垂れ流すとしよう」
魔物達は吐き続けていた毒霧を一旦取りやめ、上空を旋回し始めた。
五分おきにに毒霧を発生させることにしたのは、街を守るバリアみたいなのが、いつか切れるんじゃないかなーと考えていたからだ。
それとは別のことだが、僕は魔王っぽい話し方をするのに飽きてしまっていて、気づかないうちに普段の話し方に戻ってしまっていた。
「ふん! いくらやっても無駄よ。 あれは結界なんだから。半永久的にあの街を守っているんだから!」
なぜこうも馬鹿ばかりなのだろうか?
こっちがまだ理解していない自陣の切り札を、魔女はあっさりとバラしてしまった。
「そうなんだ。じゃあ戦士さんの言うとおりだって証明されたね」
「……」
馬鹿も少しは学習したらしい。
下手なこと言わないよう口をつぐんだみたいだ。
「よし! どうやらやっと交渉できそうな雰囲気になったね。勇者さん、もう一度聞くけど、僕を殺そうなんてまだ考えているのかな?
あーそうそう、考えなしの感情論を吐いた瞬間、女僧侶を殺すから」
勇者と女僧侶は僕を睨みつけると、お互い示し合わせたように顔を向け合い見つめあった。
連携技でも出すのだろうか?
「勇者様、使命に背く行為は許されません。私たちは、魔王を倒す……そのために——」
「——僕が許す!」
聞くに堪えないクソ理論を大声で一蹴する。
やっぱりクソがしゃしゃり出てきた、もういい加減うざいのでクソ理論を遮ってやった。
「勇者くん達は、まったく過去の出来事を知らないだろうから、僕は今まで寛容だったんだけど、これじゃあ交渉もフェアじゃないよね!
だからさ、この戦いの発端を見てみたくないかい?
その映像を見て、自分の考えを述べて貰えると嬉しいな!
あー、でもでも、映像を見たらもう対等だからさ、言葉には気をつけなよ? 容赦しないから」
「な……何を見せるっていうの。この戦いは、神が定めた使命なのよ!」
「聞いてなかったのか? おまえ、いい加減にしろよ? さっきから僕を殺せとしか言ってないよね? なんで神託とかいうなんの根拠も正義も正当性のかけらもないものに縋って悪の所業を肯定するの?」
クソは僕の言葉が理解できなかったみたいで、反論に詰まっていた。
仕方ない。こいつにも慈悲が必要らしい。
「おい、クソ僧侶。黙ってないで僕の質問に答えろ。そのまま黙っているなら十秒後に足をへし折る」
僕の慈悲は厳しい。しかし、殺されてもおかしくないことばかりのたまっていた罰にしては軽いと思うけれども。
「……神の御心のままに」
「……それは足を折ってくれってこと? それとも、僕の質問に対する返答?」
「これが、私の信じる道です。どう言われようと、神は私たちを見守ってくださっています。
その神の神託に背く行為は……聖職者として、許されない行為な——」
「——僕が許す!」
「なっ……」
またしても遮られてしまったクソのクソ理論。
しかし、今度は勇者じゃなくて、クソに対して言ってあげた。
そんな神に仕えなくても、僕に仕えればいいんだ。そうだろう?
「なにを……」
「もうおまえ、目を覚ましたら? 思考停止した人間なんて、知的生物として恥だよ?」
「な……なんてことを!」
「じゃあ、神の神託とか御託はいいから、おまえの考えを述べろよ!!
ああ、あと、言葉には気をつけろよ、いい加減容赦する気もないから」
周りからの反論は来ない。
戦士がしたミスを恐れてのことか、なんとなく神ってクズじゃねって少しでも感じているのかはわからないが。
「私は……神を……っ!!!」
クソは突然、言葉もなく崩れ落ちた。
クソの異変に気づいた勇者がクソに駆け寄る。
「ララ!! 貴様……ララに何をした!!」
勇者は僕を睨みつけ叫ぶ……勇者っぽく味方を案じて。
「うるさい。僕はちゃんと説明しておいたはずだ。
勇者くんはちゃんと答えなかったそいつを叱るべきじゃないのか?」
「ララは聖職者なんだ! 神に背く行為なんてできるわけないだろ!」
「なんで? そいつは神じゃないただの人間だろ? 自分で考えて発言するなんて、子供でもできるようなことなのに……立派な勇者パーティの一員ができないなんてことがあるわけないじゃん。
なんでそんな嘘をつくの?
正義の味方なんだろ?
なんで君達はそんなに嘘にまみれているの?
できないなんて言って、僕を騙そうとするなんて、それが勇者の務めなの?
いい大人が自分の頭で考えることができないなんてことがあるわけないよね? 恥ずかしいと思わないの?
せっかく話し合おうとしている僕が馬鹿みたいじゃないか……。
だからさ……だからさぁ! そんな簡単に嘘をつくなよ!!!」
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