みんなシネばいい 〜転生したら魔王でした〜

大きな鯨

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プロローグ

終わりの始まりは、伝説へのプロローグ

「くくくっ……ふふふふふ……あーっはっはっはは!」

 僕は溢れ出る高揚を抑えきれない。

 勇者が寝返り、魔族となった。

 これが欲しかったのだ。

 僕はこの瞬間のためだけに、一人で魔王城に残り、虎視眈々とその時を待ちわびていたのだ。

 我に返り勇者パーティを見れば、突然豹変した僕を驚きの目で伺っていた。

「ど……どうしたってのよ」

 魔女が素っ裸で困惑した物言いをしている。
 ……どうでもいい。
 もう欲しい物は手に入った。

 酔っ払いながら練ったお涙頂戴物語は、とってもいい仕事をしたし、脳筋馬鹿共を騙眩かすのはこの上なく恍惚とした時間だった。
 押しては引いて……なんてことはなく、一方的で駆け引きにすらならなかった。
 茶番を丸々信じ込み、自ら魔族にしてくれと懇願した勇者様。
 笑いが止まらない。

 でも、なぜこんなことをしなければならなかったのか?
 僕のスキル、魔を生み出す者はちょっと厄介で、本人がそう思わなければ発動しないという制約があった。
 無条件に魔族へと引き込めるのであれば楽だったのだが、これはこれで面白くていいと思う。

「くくっ……ひひひひ……あはははは!」

「ひっ……」

 不気味な笑い声に慄き、魔女の顔が引きつる。
 泣き腫らしていた僧侶は、呆然と僕の豹変した姿を眺めていた。
 シーフは、目を瞑って項垂れている。きっと悟ったのだろう。頭のいいやつは……嫌いだ。

「くくく……さてさて、勇者様は魔族になったのだが……君たちはどうする?」

「みんなー魔族は楽しいぞー!」

 僕の後に続いて勇者がおかしな言動でみんなを誘う。

「ゆう……しゃさま?」

 呆然としていた僧侶は、勇者の変わり果てた姿を見て呟いた。

「そうだぞー! 僕が勇者様だぞー!」

「あはははは! 見ろ! これがおまえたちが誇りに思っていた勇者の姿だ! あははははははは!」

 堪らず笑い転げてしまった。

 ちょっと胸糞悪すぎないかって? 何を言ってるのかな? 最初から言っていたはずだけど……僕は人間を皆殺しにする魔王だよ? 
 勇者が魔物を殺すサクセスストーリーがあるなら、魔王が人間を滅ぼしたって良いじゃない?
 伝説になるような魔王っぷりで、異世界チート無双のハーレムエンドってのも悪くないね!
 さあ、ここからずっと僕のターンが始まる。
 伝説の魔王への物語は、ようやくプロローグを終えたのさ。
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