みんなシネばいい 〜転生したら魔王でした〜

大きな鯨

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西の大陸蹂躙

クズの末路 9 二人の男を比べるフィアンセ

 ライトは客室に入ると、その異様な光景に絶句する。
 ララは息遣いも荒くテオに胸を揉まれながらベッドで悶えていた。
 そして、テオはナイフを持ったララの手を押さえベッドの外から手を伸ばしている。

「なんなんだこれ……」

 ただ、そんな思いはララの姿にかき消される。
 なにも纏っていない、ずっと好きだった女の裸体は、くだらない状況把握を面倒なものへと変えた。

 ライトはララの元へ歩み寄ると、膝をつき語りかけるように話しかける。

「ララ……魔王様から、ララを抱くように言われた。……テオを捨てて、私の物になってくれないか?」

「え?……んっはぁ……魔王様……から?」

「ああ」

「ええ……いいわ……っく……早く……私を……お願い……」

「……」

 変わり果ててしまったかつての聖女は、ライトの心に酷く喪失感を植え付けた。
 しかし、その姿は美しく、抗えないほどに性欲を刺激する。
 ライトはテオの手を退け、ララに覆いかぶさる。
 ララと見つめ合い、ライトは心に渦巻く葛藤に苛まれていた。
 やらなければ、ララが殺されてしまう。
 テオに見せつけてやらなければ、自分も危ない。
 だから、そんな歪んだ行為をする決心は、ライトの優しい心が決めた。

 孤児故に、恵まれた人生ではなかった。
 力をつけ、名誉あるパーティの一員になってからも、扱いはぞんざいだった。
 いつも優しいララからも、時折その生まれのせいで、疎まれるような扱いを受けたこともあった。
 対等ではなかった仲間たち。
 高貴な存在と、その中で働く下人。
 表面上は取り繕っていたが、心の中では蔑まれていたのは理解していた。

 しかし、親のいない孤児にとって、その仲間になれただけでも幸せなこと、恵まれた人生。
 施される身であり、なにも言えない立場だった。
 少しくらいの理不尽など、気にする方がおかしい……。

 しかし、魔王様はこの二人をクズだと言い放ち、同じ孤児上がりだったリッカをいい女だと引き寄せた。
 ララのことは抱かないと言ったのに。
 リッカは抱いてくれるのだと……。

 自分のことも嫌いじゃないと言ってくれた。
 この高貴な二人よりも、自分を選んでくれたのだ。
 
「……なんで殺さなきゃいけなかったんだっけ……」

 ライトは思考する。
 なぜ魔王を殺さなければいけないのか?
 なんのために殺さなきゃいけないのか?
 誰のために?

「王様? 国のため? 国民のため? 自分のため?」

 自分を孤児として蔑んできたやつらのために命を張るのか?
 身分など気にせず、リッカと自分を選んでくれた魔王を殺すのか?
 理解できない神託を盲信して、権力を貪り続ける王や信者のために戦うのか?

 ライトの浅はかな思考は、これからする行為の理由となる。
 魔王様のために、勇者の婚約者を奪う……目の前で。

 ライトは、ララに覆いかぶさった姿勢でテオの方を向き、決意を語る。

「テオ……おまえが私のことを蔑んでいたのは知っている。なにをするにも雑用を押し付け、自分は優雅にしていたな。でも、それでも、私の生まれからすれば、十分幸せな待遇だったはずだ。
 でもな……おまえは私を対等な仲間と思っていると言うだろうが、現実は違う。
 テオ……今まで蔑まれてきた思いの丈を吐き出させてもらう」

 ライトはララへと向き直り、装備を外してベッドの外へ放った。

「ララ……テオとの誓いを破らせてしまったこと、申し訳なく思う。でも、これからは私が君を愛そう。
 君が抱いた私への嫌悪は、テオとの誓いを破ってくれたことで許そう。
 一つになろう……ララ」

 ライトはララに唇を重ねた。
 テオの目の前で、愛を語り、花嫁を奪う。
 舌を絡め、執拗に見せつけた後、ライトは胸へと唇を運ぶ。

「あぁ……ライト……ライトの……当たってる……テオより大きい……」

 瞬間……脳に麻薬が運ばれ、胸が呼吸を忘れるほど締め付けられた。

 その言葉は、ライトの脳に快楽とは違う衝撃的な愉悦を刻んだ。
 横目にテオを見る、無表情にこちらを見つめていた。
 魔王様は五感を共有していると言っていた。
 だから見ていることだろう。
 聞いていることだろう。
 孤児という生まれのせいで、感じることがほとんどなかった愉悦……優越感。
 超えられない壁として、身分の差を諦めていた身に舞い降りた、男として超えられない壁となりえた優越感。

 ライトは唇を離し、ララにもう一度問う。

「テオよりも……大きい?」

 聞こえていた。
 しかし、もう一度聞きたかった……いや、聞かせたかった。

「うん……」

 恥ずかしそうに肯定するララが堪らなく愛おしくなる。
 そして、優越感に包まれたライトは、人権のなかった弱肉強食の世界で、唯一信じられた理。
 テオに男として勝ったという事実が、腑に落ちなかったララの言動を、ライトの迷いを、全て払拭した。
 それは、これから行うことの正義を主張していた。

 だから、ライトの正義は魔王を肯定してしまう。
 クズをクズと言える魔王が羨ましかった。
 勇者ですら赤子のようにいなす強さに恐怖した。
 
 そんな魔王様が自分にくれた褒美。
 死ぬ運命の勇者に復讐する機会を与えられ、好きだったララを救う機会を与えられた。
 ララは自分を選んでくれた、勇者には男として優った。

 ライトの欲望を止めるものはなにもなかった。

「ララ……」

 ライトはララに見せつけるように起き上がり、ベッドを降りて、ララの横に立つ。

「本当に、テオより大きい?」

 ララは体を起こし、まじまじとライトとテオを比べる。

「大きい……ライトの方が大きいわ」

 うっとりとライトの大きさを確かめるようにララは手をかける。

「ラ……ララ……口で慰めてくれないか?」

「私……初めてだから……どうすればいいか」

 目の前がぐらりと歪む。
 意図しない感情が、全身を駆け巡っていた。

 それは、テオにはしていない行為だった。
 ララの初めてを奪う愉悦が……優越感が……ライトの心を激しく蝕んでいった。
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